造船から畜産まで 結果も出す“塀のない刑務所”

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逃走が多い理由 法務省「わからない」

愛媛県今治市の刑務所施設から受刑者が逃走した事件。
逃走中の容疑者は様々な場所に痕跡を残しながらも、まだ身柄確保には至っていない。

全国には、今回逃走事件が起きた松山刑務所大井造船作業場のほかに、網走刑務所の二見ケ岡農場、市原刑務所、広島刑務所の有井作業場の計3か所の「開放的施設」がある。

しかし、平成に入ってからの逃走件数をみると、これら3か所ではゼロなのに対し、大井造船作業場では6件と突出している。

開放的施設に入れるのは全国約5万人の受刑者のうち、わずか数十人。
(その要件がいかに厳しいかはこちらの記事に詳しく書いています)

警備体制や生活リズムも4か所で大きな違いはなく、大井造船作業場からの逃走者が多い理由について、法務省は「わからない」としている。

入所する受刑者の特性によるものなのか、労働内容や施設の環境などの外的要因によるものなのか、今後の検討課題になりそうだ。

仮釈放率が比較的高い「開放的施設」

そんな大井造船作業場だが、「開放的施設」としての成果は挙がっているのだろうか。

法務省によると、大井造船作業場では1961年の開設から2011年までに3547人の受刑者が就業し、そのうちおよそ7割の2517人が仮釈放されている。

仮釈放は本人の生活態度や再犯のおそれなどを総合的に判断し行われるが、そもそも模範的な受刑者が入所していることを考慮しても、この仮釈放率は高いといえる。

また、再犯率も一般の刑務所に比べて低く抑えられているという。

造船から畜産まで

全国に4か所ある「開放的施設」にはそれぞれ特性がある。

今回事件が起きた松山刑務所の大井造船作業場では、何千トンも積載する貨物船を作っている。
受刑者はグループに分かれ貨物船の部品を作り、出来上がった船は民間会社に売り渡される。

また、網走刑務所の二見ヶ岡農場での主な作業は畜産だ。
主に和牛を育てていて、一般的な農家と同じように朝早くから餌やりや排せつ物の処理など、牛の世話をしているのだ。

和牛を育て最終的に出荷まで見送ることで、食育や情操教育になり、精神の安定につながるとされている。

塀のない刑務所 意義と課題

今回の事件について上川法相は10日の記者会見で謝罪する一方、「開放的施設」の意義についても強調した。

「開放的施設」の目的は受刑者の自覚を促し、職員との信頼関係を築き、自治活動を認めることで健全な社会復帰を促すこととされている。

しかし、相次ぐ逃走事件を防ぐためには、警備体制や施設の見直しも課題となりそうだ。

あと2年弱で出所できたのに

逃走中の容疑者は、本来であれば“優良模範囚”としてあと2年弱で刑期を終えるところだった。
しかし、今回逃走したことで、少なくとも逃走罪で懲役1年以下が加算される。

また、車を盗んで逃走に使ったほか、逃げ込んだとされる島では、空き巣や車上荒らしが数件起きている。

この容疑者の犯行として立件されれば、建造物侵入罪や窃盗罪が加わり、すべて合わせると数年の懲役刑になる可能性があるのだ。

さらに、その懲役は、“塀のある刑務所”で行われることは間違いなく、今回の逃走の代償はあまりにも大きいと言わざるを得ない。


【フジテレビ 社会部(司法担当) 松木麻】

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