逃走した受刑者は“トップ・エリート” 塀のない刑務所っていったい何?

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  • 実は意外に多い?“受刑者の逃走 ”
  • 全国に4カ所しかない“塀のない刑務所”
  • 逃走したのは模範囚中の模範囚

意外に多い?“受刑者の逃走”

愛媛県今治市にある刑務所の施設から受刑者の男が逃走しています。

しばしばニュースで耳にする”受刑者の脱走”、日本ではどれくらいの頻度で発生しているのでしょうか。

法務省によると、平成に入って全国の刑務所や拘置所などの刑事施設から受刑者が逃走したのは今回29件目。
1年に1度くらいの頻度といえるかもしれません。

全国に4か所しかない“塀のない刑務所”とは?

今回、事件があった松山刑務所大井造船作業場だけに限ると、逃走は1961年の開設以来、今回の事件を含めて17件。
これは他の刑事施設と比べても突出して多いと言えます。
なぜこれほどにまで、この施設では逃走事件が多いのでしょうか。


刑務所や拘置所といった刑事施設といえば、高い壁やフェンス、窓に張り巡らされた鉄格子などをイメージする方が多いのではないでしょうか。
しかし、この大井造船作業場は全国に4カ所しかない「開放的施設」の1つで、生活態度などが良好な受刑者が、より社会に近い形で生活を送ることを目的に作られていて、大きな壁やフェンスなど、受刑者と一般社会を物理的に遮るものがありません。
受刑者が生活している寮も一般的な寮で、言ってしまえば逃走可能な環境なのです。

模範囚中の模範囚だったのに

もちろん多くの受刑者が「開放的施設」で生活できるわけではありません。
法務省によると、全国約5万人の受刑者のうち、開放的施設に入れるのはわずか数十人です。その要件は、

①釈放後の保護の状況が良好であること。
②高齢その他の理由により就業することが困難なものと認められないこと。
③生活態度が良好な状態が継続し、かつ、継続する見込みがあること。
④過去に逃走や自殺を企てたことがないこと。
⑤施設近隣の居遊歴や土地勘などを考慮し、当該施設において開放的処遇を実施する上での特段の支障がないこと。


そして、松山刑務所に入るには、さらに以下のような要件があります。

①年齢がおおむね45歳以下で身体状況に欠陥がなく、重労働・危険作業に耐えられる者
②IQ相当値がおおむね80以上で、性格に偏りがなく、開放的処遇の共同生活が可能と見込まれる者
③移送された時点において、残刑期がおおむね1年6か月以上の者で、早期の仮釈放が見込める者
④暴力団等の反社会性集団に所属しておらず、著しい入れ墨がない者
⑤保護関係の調整の見込みがある者
⑥原則として、凶悪犯、性犯、放火犯及び覚せい剤常習者ではない者
⑦構外作業場への出業意欲があり、作業場付近の地理に通じていない者

さらに、大井造船作業場に移るには、上記の要件をクリアしたうえで、作業場入寮のための訓練を受け、以下の基準を満たさなければなりません。

①訓練中の行状、作業態度及び身体状況が良好であること。
②環境調整が整い、かつ、仮釈放の見込みがあること。
③仮釈放を考慮した上での作業場の入寮機関が最短おおむね6か月、最長おおむね2年となること。
④作業場への入寮を希望すること。
⑤原則として、作業場付近で生活をしたことがある者、付近が帰住予定地である者及び地縁やいわゆる土地勘のある者ではないこと。


大井造船作業場に入っているのは現在20人。大変厳しい基準で選ばれた、模範囚中の模範囚であることがわかります。
しかし、これだけ厳しく選ばれても、逃げる受刑者は出てくるわけです。

今回逃走している平尾龍磨容疑者は、窃盗などの罪で懲役刑を受け、わずか20人の優良な受刑者の1人として、あと2年弱で刑期を終えるはずでした。
身柄が確保されれば、また刑事裁判をやり直すことになります。

逃走の再発防止にむけて

刑事施設をすべて閉鎖的なものにすれば逃走を防ぐことはできるかもしれません。
しかし、真に更生し社会復帰を望んでいる受刑者にとっては、外界と大きく遮断された施設が好ましいとは言えません。

法務省は、警備システムの再検討や受刑者の心情把握に努めたいと説明していますが、地域住民の理解の元で運営されている施設ゆえ対策が急がれます。


(フジテレビ報道局社会部・司法担当 松木麻)

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