“ダメ出し”の仕方に秘訣あり イマドキの新入社員の伸ばし方

カテゴリ:ビジネス

  • イマドキの新人・若手の3つの性質
  • 新人育成は時代に合っているかが重要 
  • 『こんなこともわからないの?』は逆効果

今月初め、さまざまな企業で入社式が行われ、多くの新入社員が新しい一歩を踏み出した。一方で、新入社員を迎え入れる先輩たちはしっかりとした心構えができているだろうか。

先日、産労総合研究所が「2018年度(平成30年度)新入社員のタイプ」は、「SNSを駆使するチームパシュートタイプ」と発表。少数の仲間同士でSNSを活用し、綿密な情報交換で協力関係を構築し、内定というゴールをめざしたという点が挙げられている。

今の若者が何を考えているのか分からず、困惑する先輩たちも多いだろう。どう新人と接していけばいいのだろうか。

人材育成や研修を行うリクルートマネジメントソリューションズ・企画開発部主任研究員の桑原正義さんに聞いた。

新人若手の3つの性質

リクルートマネジメントソリューションズ・企画開発部主任研究員の桑原正義さん

まずは今の新人について桑原さんは、「仲間意識」「自分の成長」「貢献」という3つの性質があるという。

「今の新入社員や若手は『仲間意識』が強い傾向があります。まさに“チームパシュート”。一人で頑張るよりもみんなで何かをやる環境で力を発揮します。次に『自分の成長』。お金や地位や名誉よりは自分の成長を大事にしています。3つ目は『貢献』。世の中や社会に貢献していきたい思いが強く、総合すると、意味や価値を重視する傾向にあります」

「意味や価値の重視」とは、世の中に対して役に立ちたいという思いや、自分の「やりがい」を重視しているということ。社会をよくしたいという思いが強く、それは育ってきた環境も影響していると桑原さんは分析する。

「子供のころから大企業の倒産や不祥事、大震災や世界情勢の大変革など、不安定な社会を目の当たりにしてきた新入社員や若手は、これまでのやり方や価値観の限界を少なからず感じています。上司世代からは、一人では何もできなくて弱いとみられがちですが、これからは個人戦ではなくお互いに学びあい、価値を創造していくチーム戦の時代です。

ですからパシュートになっているのはとてもいいことで、若者の変化を、劣っていると見るのではなく進化していると捉える見方が重要だと思います。彼らの方が未来を見据えて、新しい時代におけるより良い生き方を追求している可能性があるのです」

20世紀の新人は個人戦だった

では、新入社員・若手の先輩にあたる今の30代~40代はどんな新入社員だったのか。入社して10年以上が経つが、就職活動をしている時期は、現在の売り手市場とは違い、リーマンショックなどいわゆる「氷河期」だ。

「就職活動が思うようにいかない人も多く、厳しい環境で新人時代を過ごしたので自分の力で踏ん張れる世代です。とはいえ、2005年ごろからは先ほど挙げたような新入社員の特徴を持つ人も増えてきました。

その意味で、30代は今の新人や若手の気持ちもわかるし、上司世代の気持ちもわかるという貴重な世代。20代は40代の言動が理解できず、その逆もそうなので、30代には両者の橋渡し役が期待されます。

40代以上の人たちが新入社員だった当時は、いかに自分で頑張るかが大切で、『24時間戦えますか?』といったフレーズがあったように、組織に貢献するために頑張り、多少の不条理や我慢をする中で成長し成果も出せた。今ではなかなか見られないですが、だからと言って、この働き方が悪かったとは言えません。

しかし、時代にフィットしているか?が重要になります。今の若者は、ガツガツ生きなくても、やりがいのあることを大事にして、力を合わせてやっていくほうがやる気も出るし価値も出せるという考え方になってきています」

イマドキの新入社員を伸ばすための接し方

今は一つの企業に年代ごとに違う考えを持つ人たちが混在している多様性の時代だ。新入社員や若手たちと積極的に関わってくのは今の30代~40代。若者の気持ちも理解はしているが、時にはその言動に首をかしげることも出てくるだろう。そんな時はどう接していけばいいのだろうか。

「一番大切なのは、それが効果的であるかどうかです。自分の経験や基準を押し付けるような教え方ではなく、今教えていることがあなた(新人)の成長に実際につながっているかどうかを問い、理解してもらうことが重要です。

例えば、『仲間意識』が強いといいましたが、営業でもパシュートの良さを生かせばいいと思うのです。個人で数値目標を競わせる方法よりも、3人程度のチーム戦にして力を合わせて取り組ませてみたら、3人分+αの業績が出たみたいな例が出てきています」

だが、教える方も新人に対して十分に指導したい気持ちはありつつ、自分の仕事で精いっぱい。頭ではわかっていても「なぜ、こんなこともできないの?」と思ってしまうこともあるだろう。

「実際に新人を指導する社員をトレーニングすると、頭では新人像を理解しますが、いざ職場で実践する立場になったときに行動に移せないという障壁がありがちです。その壁を取っ払うおすすめの方法は2つ。

一つは新人の育成が自分にとっても成長する機会になると感じてもらうこと。そして、企業側へのお願いとして『新人育成をしてください』と教育係を押し付けるのはやめること

桑原さんは新人育成について「考え方を変えると、これからの時代のリーダー力を鍛える絶好の機会」という。

人をモチベートし動かす力をつけたり、自分と異なるタイプのメンバーの能力をどう引き出していくかを考える経験は、育成に限らずビジネスパーソンとしての幅も能力も両方高められる絶好の機会。そして人事には、「現場に『新人育成をしてください』とは言わないようにしましょう」と伝えているそうだ。

その言い方だと、任された社員にとっては負担感を感じてしまい、意義が感じにくいため実践につながりにくいからだ。

さらに、新人育成を一人に押し付けるのではなく「職場ぐるみ」の育成をすることでより良い方向に向かっていくという。

「育成担当者にはいろんな人を『巻き込んで』と言っています。新人と周りの人たちにどう接点を持ってもらうかが大切です。マンツーマンの教育は相性もありますし、仕事を教えてもらう人、相談などの話ができる人、など一人に偏らない方がいい。

仕事を学ぶ人、相談できる人を見つける機会を設けるため、新人と社内の先輩たちの「(1対1での)さしランチ」を勧めています。たわいない会話をいろいろな先輩とすることで、社内の人間関係も自然と築くことにつながります」

新人に「ただのダメ出し」はNG

また、新人を育成していく中で、「ただのダメ出し」はNGだと桑原さんは指摘する。

「否定やダメ出しには慣れていません。上司世代は注意や指摘で育ってきましたが、その感覚で良かれと思ってダメ出しをすると、自分自身を否定されたと思うなど、意図した効果が得にくくなっています。『こんなこともわからないの?』といった言葉は特に逆効果だと思います」

ついつい言ってしまいそうになるが、どう”ダメ出し”をすればいいのか。

「何のために言われているのかを理解できることが大事です。『自分で考えなさい』と突き放すような形だと、新人は何がダメだったのかわからないまま「はい、分かりました」と表面理解で流れていってしまいます。

教える側の先輩は、「上手くいかないことはしょうがない。そこから学び次に生かすことが大事」というスタンスで関わり、『大事なことはなんだっけ?』『次どうしていこうか』と一緒に振り返ると、若者たちも自分の何がダメだったのかを素直に振り返り、深い気づきにつながっていきます」

「”一人前”という山のゴールは今も昔も変わっていないが、時代ごとにどう登っていくかその方法が変わっている。新人も変化が必要だが、受け入れ側も進化が必要」と桑原さんは言う。

多くの先輩社会人が直面している新人教育。「なぜ、新人のことを理解しなければ」と思うこともあるだろう。

「生きてきた時代が違うから仕方がない」と先輩たちの考えを押し付けるのではなく、お互いに歩み寄ることが新人育成の第一歩なのかもしれない。


■桑原正義さん
リクルートマネジメントソリューションズ企画開発部主任研究員。1992年に人事測定研究所(現・リクルートマネジメントソリューションズ)に入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て、2015年より現職