北の狙いは抱きつき作戦?南北会談で透けて見えた思惑

カテゴリ:ワールド

  • 南北首脳会談を安部首相もトランプ大統領も評価
  • 北の目的は経済的利益と米の軍事行動の回避
  • 抱きつき作戦でトランプ大統領が倦むのを待つ時間稼ぎか?

具体的な約束は“無し”との見方

「金委員長はたいした約束をしなかった。」
“Kim didn’t promise very much.”

南北首脳会談の共同発表後間もなく筆者に届いたアメリカ政府関係者の評価である。

ごく初期の反応なので、今後、文政権からの詳しい報告が入れば評価が変わる可能性はある。
しかし、金正恩委員長は、非核化に向けて前向きな姿勢は示したものの、具体的な約束は何もしなかったと現時点では認識しているようだ。


それでも、もちろん、前向きな姿勢を見せたことは良いことである。決裂よりはずっと良い。

安倍総理もこの点は歓迎しているし、トランプ大統領もツイートで「朝鮮戦争は終わる」「朝鮮半島で起きていることを誇りに思うべき」とひとまず高評価のようである。

北朝鮮の目的は何か?

しかし、日本政府のある専門家は「しばらく現在の緊張緩和ムードは続くでしょう。しかし、北朝鮮はちゃぶ台返しの名人なので、見返りが期待したほど得られなかったり、交渉ばかりが長引いて痺れを切らしたりすれば、いつ態度を変えても不思議ではありません。それも必ず他人のせいにして」とやはり極めてクールに受け止めている。

何度も書いたが、北朝鮮が、非核化に向けての具体的な措置とスケジュール表に同意した上で、約束を履行し、さらに抜き打ち査察を受け入れない限り、彼らが非核化に本気になったと判断するわけにはいかないのである。

要するに、今日の南北首脳会談を見る限り、彼らは本当に態度を変える用意があると信じるに足る十分な理由はなく、その場しのぎの平和攻勢を仕掛けてきていると疑うしかないのである。

その彼らの目的は何か?
一つは経済的利益。平和の見返りである。

そして、もう一つはアメリカによる軍事行動の回避、であろう。

いわゆる”鼻血作戦”を策定・流布するなどして”恫喝外交”を繰り広げるトランプ政権の意図を測りかね、このままでは武力行使あり得べしと金正恩委員長は判断したのだろうと想像する。
しかし、南北が平和構築のために動き出せば、たとえ核・ミサイル計画を完全に破棄せずとも、アメリカは簡単に手を出せないと踏んでいるのではないかと思われる。

去年秋の事だが、ワシントンの大学で開催されたシンポジウムで、CIAの北朝鮮担当者が、「アメリカの軍事行動の恐れありと信じない限り、中国は北朝鮮に本気で圧力を掛けようとしない」旨発言していた。
そして、今回、北朝鮮も、トランプ政権の軍事力行使を本気で心配したからこそ、南北融和路線を打ち出し、言わば韓国に抱きつく作戦に出たのだと見ることができるのである。

実際、会談で金正恩委員長が「同じ血を受け継ぐ民族だ」等と殊更に強調したのは、その本音の表れとみることができるし、”戦争の回避”は韓国政府の願いとも完全に一致する。

米朝首脳会談はどうなるか?

さて、次は米朝である。

そもそも本当に開催の運びとなるか現時点では予断できないし、開催されても、具体的措置・スケジュールでどこまで合意できるかまだ全く不透明である。

アメリカの軍事行動を避けたいのは他の誰よりもまず金正恩委員長のはずなのだから、そう簡単にトランプ大統領に椅子を蹴らせることはないと思われる。
しかし、トランプ氏はとにかく性急に物事を決めたがる。
そして、大統領の後には超強硬派・ボルトン補佐官が控えている。

ボルトン補佐官

非核化に向けての具体的な行程表、その履行、抜き打ち査察などによる検証の詳細を取り決めるのは大変細かく骨の折れる作業で時間も掛かる。

これに痺れを切らしてトランプ大統領が短兵急な行動に出るような事態になるのは兎に角まずい。日本にも火の粉が飛んでくる。

他方、痺れを切らしたトランプ大統領が、北の抱きつき作戦の結果、打つ手にも窮し、朝鮮半島問題から目を背けるようになるのも非常に困る。
核・ミサイル開発の凍結さえ維持すればアメリカ本土への脅威が完成することはないので、それだけで投げ出してしまう恐れ無しとは断言できないのである。

もしかすると、金正恩政権は、抱きつき作戦で時間稼ぎを図ることで、トランプ大統領が倦むのを待つのかもしれないと、今日の南北首脳会談を見て心配になってくるのである。

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