金正恩を動かす女たち……北マダム3人の知られざる素顔

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  • 金与正氏……正恩氏の右腕にして実の妹。実質ナンバー2で対話攻勢の仕掛け人。
  • 李雪主夫人……電撃訪中で外交デビュー。内助の功で正恩氏のイメージ戦略支える
  • 玄松月氏……モランボン楽団団長で、正恩流“音楽プロパガンダ”の中核を担う。

対話攻勢の仕掛け人……金与正氏

平昌五輪での“微笑み外交”で、3代に渡り北朝鮮を統治してきた金一族の一員として初めて韓国を訪問し大きな注目を集めた金与正氏。まさに金正恩・朝鮮労働党委員長の名代としての韓国訪問だった。

与正氏は幼少期、兄の正哲・正恩氏と共にスイス・ベルンに留学した。FNNが入手した映像では、与正氏は学業の傍らバレエにも打ち込み、発表会ではアンサンブルの一員としてジゼルを踊ったこともあった。
子供の頃は「人見知りで、知らない人が近づくとワーッと泣き出した」(藤本健二氏)という。

スイスから帰国してから約10年後の2011年12月。金正日総書記の葬儀で正恩氏に寄り添う与正氏の姿が初めてカメラに映し出された。
「金与正同志」の名前が初めてメディアで報じられたのは、2014年3月、金正恩氏に同行し最高人民会議の代議員選挙に投票した際だった。
その後、与正氏は正恩氏の視察にしばしば同行し、正恩氏を補佐。
同年11月に党中央委員会副部長、16年には中央委員会委員、17年には中央委員会政治局員候補と異例のスピード出世を遂げた。

2017年11月、北朝鮮はアメリカ本土に到達可能とされる新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星15型の発射実験に成功したと発表した。
正恩氏は「核武力完成の歴史的大業」を果たしたと語った。
一方で、国際社会の制裁圧力がさらに強まり、北朝鮮の経済的苦境は深まっていった。

アメリカに対抗する核武力を手にするという目的を達成したことを受け、正恩氏はこれまでの強行戦略を練り直す必要性が生じた。
この際、韓国との対話に舵を切るよう進言したのが、与正氏と見られている。
与正氏が正恩氏の右腕として存在感を増していく過程は、映像からも裏付けられる。

火星15型発射から1か月後の党細胞委員長大会で与正氏は、初めて党幹部が座るひな檀に着席し、宴会では党中央委員会副委員長の座るテーブルに着いた。

新年の辞で平昌五輪への参加に意欲を示した正恩氏は、開会式に与正氏を派遣。
平壌へ戻った際は、空港に赤じゅうたんが敷かれ、軍の幹部が出迎えた。
これも、正恩氏に次ぐ実質ナンバー2であることを物語るものだ。

また、韓国の特使が平壌を訪れ正恩氏と会談した際には、正恩氏の隣に与正氏の姿があった。今や「正恩氏が内外の問題に最も虚心坦懐に議論できる人物」(韓国世宗研究所・鄭成長氏)であり、正恩氏の政策決定に影響力を発揮していると言える。

イメージアップ戦略を支える美貌のファーストレディ……李雪主氏

世界をあっと言わせた正恩氏の電撃訪中。
同行した李雪主夫人は習近平夫妻とにこやかに交流し、外交デビューを果たした。
北朝鮮のファーストレディが外交舞台に登場したのは、過去にほとんど例がない。

金総書記の場合、妻子の存在を含めプライベートは一切明かさなかった。
正恩氏の手法は対照的だ。後継者に就任した直後から、雪主氏と共にコンサートを鑑賞したり、遊園地や保育園など民生関係の視察に夫人を同行させた。
夫人と共に庶民と触れ合う姿を公開し、親しみやすい指導者像をアピールした。
雪主氏も庶民の出身で、かつて美女応援団の一員として韓国を訪問した際の映像が残されている。
正恩氏のイメージアップに大いに寄与したのが雪主夫人だったのだ。

そんな雪主夫人に今年、新たな役割が加わった。
2月8日の朝鮮人民軍創建70年の軍事パレード、そこには正恩氏と共にレッドカーペッドを歩み、ひな壇でパレードを観覧する雪主氏の姿があった。

北朝鮮メディアは雪主氏をこれまでの夫人「李雪主同志」ではなく、「李雪主女史」と紹介。これは韓国の大統領夫人と同様の呼称だ。
この呼称には、北朝鮮が夫人の存在を内外に示すというメッセージが込められていた。

国際社会に向けてもファーストレディとして雪主氏を登場させることで、閉鎖的・怖い国と見られがちな北朝鮮のイメージアップを図る。

雪主氏に課せられた使命は重い。

正恩流“音楽プロパガンダ”の旗手……玄松月氏

平昌五輪の際に140人規模の三池淵管弦楽団を率いて訪韓し一躍時の人となったのが、玄松月氏だ。毛皮のマフラーにシャネル風のバッグ、洗練されたファッションと堂々とした立ち居振る舞いはどこに行っても注目を集めた。

40~41歳とみられる玄氏は、北朝鮮の音楽大学を卒業し有名楽団に入団。
1999年に歌った「駿馬処女」が大ヒット。艶やかな歌声と美貌で花形歌手となった。

しかし、13年に北朝鮮の音楽界をポルノ映画鑑賞スキャンダルが直撃。処刑者には玄氏も含まれていると一部で伝えられた。

玄氏の健在ぶりが確認されたのは翌年。しかも、軍服姿で登場した。
「敬愛する元帥様のために芸術創作創造の炎をより一層激しく燃え上がらせたい」
全国芸術人大会で正恩氏を讃え忠誠を誓う演説をした。

玄氏は正恩氏が肝いりで創設した女性音楽グループ・モランボン楽団の団長となっていたのだ。モランボン楽団は音楽による体制プロパガンダの実行部隊。玄氏は正恩氏の“音楽政治”の中核を担う人物なのだ。

(鴨下ひろみ・フジテレビ報道センター室長)

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