【ニュースのその後】ヒアリ問題は収束してない!正しく怖がるために知るべきこと

カテゴリ:国内

  • ヒアリは現在定住しておらず『侵入初期』状態
  • 暖かくなればヒアリがまた日本で見つかる可能性は非常に高い
  • 定着すれば経済損失も大きく、一人一人の意識改革が必要だ

約1年前は大騒動“ヒアリパニック”

『ヒアリ』。

刺されると火傷を受けたような痛みがあることから、漢字で火蟻、英名では“Fire ant”と名付けられている。

世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれているこの『ヒアリ』が、去年5月に初めて国内で発見されて以降、日本中で“殺人アリ”と騒がれ、発見された埠頭の近くの公園などからは、当時人の姿が見られなくなった。

日本でこれまでに見つかったのは、12都府県の港湾部やコンテナ内に限られていて、全26事例で数千匹が見つかっているが、全て駆除されている。

環境省によると、これまでの調査で発見され輸入元が確認されている中では、ほとんどが中国からのコンテナだったということだ。
そのため、中国やヒアリがすでに定着している地域と、定期的なコンテナ航路がある68の港湾全てをモニタリングしている。

その結果、ヒアリが去年12月以降発見されていないことなどから、現時点では日本国内に定住しておらず、『侵入初期』状態としている。

ヒアリってどんなアリ?

そもそもヒアリとは、どんなアリなのだろうか。

提供:環境省

【ヒアリ】
・体長は 2.5mm~6.0mmほどの小さな赤茶色のアリ。
・南米原産だが、北米、中国、オーストラリアなどで定着している。
・土で大きなアリ塚(大きなものは5~60cm)を作り、集団で生活。
・攻撃性が強く、棒などで塚をつつくと、集団で一気に出てきて襲いかかる。



そして最大の特徴は彼らが持つ“毒”だ。
刺されると、毒によって非常に激しい痛みを感じ、水疱状に腫れる。毒に対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を引き起こす場合もあり、定住してしまっている北米だけでも被害は年間1500件近く起こっているという。そして中には死亡事案もある。


環境省によると、小さいため他のアリと見分けるのは難しいが、肉眼でわかる特徴もある。
その特徴は…
・ 赤っぽくツヤツヤしている。腹部(おしり)の色は暗め。
・ 働きアリの大きさは 2.5mm-6.0mm。色々な大きさのアリが混じっている。
 (→ 違う種類:黒いアリ、2.5mm 以下の小さなアリ、6.0mm 以上の大きなアリ)
だということだ。

環境省は、ヒアリが暖かくなると活動が活発になると言われていることから、これからまたヒアリが発見される可能性もあると考えていて、「ヒアリが発見されるのは港湾周辺が多いため、港湾で働いている方や、荷物を取り扱う方には十分注意をしてほしい」としている。

ヒアリの蟻塚(提供:環境省)

ヒアリは暖かくなるとまた出てくる?

ヒアリは暖かくなるとまた姿を表してしまうのだろうか。

そこで、アリの生態に詳しい沖縄科学技術大学院大学・吉村正志研究員に話を聞いた。

ーー環境省のヒアリの調査では最近は一匹も見つかっておらず、ヒアリに関しては収束したと考えていい?

そんなことは全くありません。今見つかっていないのは時期的なものも大きいです。
コンテナや、その港湾などから見つかっているということは、輸入元で活発なときにはまた発見されるでしょう。
ヒアリは温度帯として20度〜25度になると活発になってくるので、近いうちに発見される可能性は極めて高いです。

ーーとなると、実は見つかっていないだけで、すでに内陸部にヒアリがいる可能性は?

野生定着している可能性はゼロではありません。
しかし去年あれだけヒアリが入ってきても、港湾だったり、最悪内陸でも倉庫です。
管理区域外の野生定着は見つかっていません。
それは世界的にも貴重な、水際対策が成功している事例でもあります。

しかし一方で、見つかっていないということは、モニタリングを緩めたりしてしまう危険を孕んでいますよね。
状況的には去年夏にたくさんヒアリが見つかった状況は、物流が急減するなどしていませんし、改善されたわけではありません。
気をつけないといけないのは風化してしまうこと、それが一番危険です。

ーーなぜヒアリは去年一気に発見された?

理由の1つとしては、全港湾での一斉調査をしたのが初めてだったから、というのがあるでしょう。
5月に神戸でヒアリが見つかって、そこから色々な港湾を調べたら一気に見つかってしまったという理由。

そしてもう1つは、国外の物流の現状があると思います。
中国が世界物流の中心になってきている中、中国本土でヒアリが爆発的に増えているという話もあります。
また、その中国での、コンテナの不足があり、古いコンテナの使い回しが増えてきているとのことです。
経済的な要因やヒアリの分布が重なって、ヒアリが日本に入ってくる確率が上がってきているんでしょう。

ーー急激に暖かくなってきた花見シーズンの今、港湾以外で一般の人にヒアリの被害が出る可能性はある?

今はほぼないと言っていいでしょう。
去年1年でヒアリの被害は、福岡市で港湾作業員が刺された一件のみです。
港湾地域外で被害に合うことは、宝くじにあたるより難しいと言えるかもしれません。

ーー今後ヒアリに対して、どう気をつければ良い?

現時点では水際の対策の強化モニタリングを続けることが大切です。
これはリスクマネジメントなので、去夏のようなパニックが起こらないように、野生の定着をしてしまった時にどうするのかについて、民間も行政もできることをやっていかなくてはなりません。

社会に経済損失を与えるヒアリ

ヒアリが好む配電盤

そしてこの『ヒアリ』、外来種ということでセアカゴケグモなどと比較し、毒の強さはどうなのかなどと、人体への直接的な影響ばかり考えてしまうが、恐れるべきはそこだけではないと吉村研究員は言う。

「ヒアリはアリなので、将来的に万が一日本中に定着した場合、様々な場所へ移動し繁殖を進め、被害に合う人の絶対数が多くなります。
それに対して行政が社会体制や医療体制を引くコストが膨大になります。ピクニックや花見ができなくなる、それは社会的なコストを要求しますよね。
食物を食い荒らす性質から農業被害もバカにならないですし、ヒアリを調べるために物流コストが上がります。
定着してしまっている海外では、電気系統に入り破壊する被害も出ています。
刺されてショックというような単純なものではなく、社会に経済損失を与えてしまうんです」

吉村研究員がいる沖縄では、観光が大きな産業だ。
ここにヒアリが定着してしまうと、観光ブランドとしては大ダメージを受けてしまう。

そのため、水際対策に大きな予算が組まれているが、本当にヒアリ入った時に起こるロスと比較すると微々たるものだという。


実際に定着が進んでいるアメリカの食品医薬品局によると、ヒアリの駆除対策や被害への対策のために、毎年6000億円近くのコストがかかっているという調査結果が出ている。

神戸市・ヒアリ等対策マニュアル

国内で最初にヒアリが発見された神戸市では先月、ヒアリの侵入や定着を水際で防止する全国初のマニュアルを作成し公表し、台湾の空港などで活躍するヒアリ探査犬が熊本でデモンストレーションを行うなど、水際対策は環境省のモニタリング以外にもおこなわれている。


吉村研究員は「正しく怖がるべきだ」と強調する。

「外来種の問題は、究極的には人間の問題です。
一人一人の問題なので、いかにみなさんが自分の周りの自然、生き物に目を向けて、普段との微妙な変化を感じ取れるか。それが一番実は大きな防除や監視につながります。
行政や研究者ができることには限界があるからです。
全国津々浦々全ての場所でモニタリングすることは非常に難しく、そこに一般の方が参加できるのか、監視をしていけるのか、社会的な防除ができるかが一つの分かれ目になります。
過剰反応をせずに冷静に反応し、これをいい機会として、皆さんの足元の自然を感じとったり、考えるきっかけになって欲しいです」

提供:環境省

ヒアリのようなアリを見つけたら、自分で駆除せず、ヒアリ相談ダイアルか都道府県の環境部局に連絡を。

ヒアリ相談ダイアル
(0570-46-0110 平日9時〜17時まで)

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