AIを使って「歩きスマホ」事故をゼロに。肘と膝の角度で識別率は85%

ホームでの事故防止へ 早稲田大学が開発

  • 米が開発したAI「OpenPose」を活用、姿勢から「歩きスマホ」の認識に成功
  • 見分けのポイントは「肘と膝の角度」
  • この技術で「歩きスマホ」事故ゼロを目指す

ディープラーニングで『歩きスマホ』識別率85%

移動中もついついやってしまう『歩きスマホ』。

地図やSNSなどをいつでも見られる利便性は、一方で危険性へと代わり、社会問題となっている。

特に駅での『歩きスマホ』は、ホームから転落する死亡事故や、ぶつかった人が電車に衝突するなどの事故を引き起こし、鉄道会社や携帯会社が危険性を呼びかけている。

スマホを操作しながら歩く渡辺教授

そんな中、早稲田大学基幹理工学部の渡辺裕教授らが、『歩きスマホ』をしている人を監視カメラの映像から検出できる技術を開発した。

『歩きスマホ』をしている人物の姿勢の認識に、米カーネギーメロン大学が発表した「OpenPose」という人工知能(AI)を活用。
その「OpenPose」は、映像中の人物の骨格を深層学習(ディープラーニング)で見分けるという。

渡辺教授らは、歩行者の「歩きスマホ」と「通常の歩行」「立ち止まってのスマホ操作」をさまざまな角度から撮影した約1000枚の画像から、頭や首、肩、肘など体の14カ所の姿勢情報をAIに学習させた。

その結果、スマホを手にしながら歩く人と、普通に歩いている人との違いを85%という高い確率で分類することに成功した。

この技術を駅での「歩きスマホ」事故の防止につなげたいと言う、渡辺教授。

開発に至った理由とその苦労を聞いた。

見分けのポイントは「肘と膝の角度」

ーーなぜ「歩きスマホ認識技術」を開発しようと思ったか?

もともと、総務省が管轄する情報通信研究機構(NICT)で、ビッグデータを活用して日本の社会問題を解決するプロジェクトに参加していました。
首都圏に住んでいると、人身事故が日常的に起きていることが実感されて、なんとかできないかと思ったことがきっかけです。

電車は危険を知らせるアラートを受け、急ブレーキをかけても空走距離が600mと、すぐに停止することができません。
事故を防ぐには、遠くからでも線路内に人の姿がないかを認識するシステムが必要です。
そして、現在起きている人身事故の原因となる危険な行為は、やはり「歩きスマホ」ではないかと思いました。

ーー開発の苦労はどんなところにあったか?

人物が「歩きスマホ」をしている姿勢のどこを基準にするか、ポイントを探るのが大変でした。
初めは座標を用いてみましたが、動くとバラバラになってうまくいきませんでしたが、頭や首などの角度だと一定なので、基準として採用しました。

ーーAIは人物のどの部分から「歩きスマホ」を判断している?

見分けのポイントは「肘と膝の角度」です。これには3段階の判断基準があります。
まず、「スマホを使用しているかどうか」では肘に注目します。さらに、膝から下の動きで「歩いているかどうか」を判断します。
しかし、肘の角度だけでは、飲み物などを持っている場合を誤認する可能性があります。
このため、「手に持っている物がスマホか否か」のオブジェクト認識を行い、「スマホを使用している姿勢で、歩いていて、持っている物がスマホ」であれば、「歩きスマホ」となります。

この3段階の判断基準を経ることで、立ち止まってスマートフォンの操作する人も誤検出されないという。

研究室の学生たちが協力して、さまざまな角度から歩行中と立ち止まっている時の人物の画像を撮影し、AIに学ばせた結果、『歩きスマホ』だけを見つけられるようになったのだ。

『歩きスマホ』を検出してどう知らせる?

歩きスマホをしている人物を検出した後、どう注意をうながすのだろうか。

渡辺教授はこの点について「自動的にアラートを出すとしたら、スマホ画面にレーザーポインターを照射して操作できないようにしたり、指向性の狭い音で警告をすることは技術的には可能です。一方で、それが社会的に容認されることなのかという大きな問題があります」と、課題を挙げた。

また、認識率についても、現在の85%では十分でなく、さらにデータを採取して精度を上げる必要があり、実際に駅で利用されるには、まだ時間が必要だという。

「歩きスマホ」と認識されると、赤い四角枠が表示される

このAIは同時に複数の人物が動いていても、それぞれの動きを追うことができるため、スポーツでの動作解析にも活用されているという。

渡辺教授はツール・ド・フランスのレース映像を分析し、チームごとに同じ色のユニフォームを着て密着して競り合う中から、どの選手が誰なのか、その骨格と動きで見分ける研究も行っているそうだ。

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