逆効果も?「オフィスでBGM」企業が増加中

仕事を邪魔しないBGMの選び方

カテゴリ:暮らし

  • 主観的にはやる気が上がると感じる人は多い
  • オフィスでは良い影響があるとは限らない
  • シーン別おすすめBGMの特徴

2018年1月29日、東京メトロ日比谷線では、一部列車内でBGMの試験運用を開始した。

BGMは、ドビュッシーの「月の光」、ショパンの「ノクターン」、メンデルスゾーンの「春の歌」のクラシック音楽3曲と、「朝空を開いて」「そよぐ緑」「陽を浴びて」というヒーリング音楽。

SNSを中心に話題となり、「走行中はあまり聞こえない」「癒される」と様々な声が聞かれるが、最近ではオフィスにBGMを取り入れる企業も増えているとか。

「職場の環境改善の一環」とされるオフィスへのBGM導入。

モーツァルトの曲を聴くと頭がよくなるという「モーツァルト効果」など、耳にすることもあるが、はたしてBGMは仕事に何か影響を与えるのだろうか?

武蔵野音楽大学講師で音楽心理学に詳しい、佐藤典子さんに話を聞いた。

BGMによる心理的影響はある?

率直に、BGMによって「やる気が上がる・下がる」などの心理的影響があるものか、聞いてみたところ、佐藤さんは「心理的な影響をどのように測定するかによって異なりますが…」と前置きしつつも、以下のように話す。

「音楽を聴くことで、主観的には『やる気が上がる』と感じる人が多いことは確かなようです。ただ、どのような音楽を聴いてそう感じるかは、その人の音楽の好みの問題も絡み、複雑だと思われます」(佐藤さん、以下同)

「主観的に」という条件はあるが、BGMが何らかの心理的影響を与えるということはあるようだ。

ただし、「オフィス」では、必ずしも良い影響があるとは限らないらしい。

「オフィスでの使用ということを考えると、何らかの仕事を行う場であるため、その仕事内容によっては、音楽を聴くことが邪魔に感じられる可能性があります。

たとえば、比較的単調な作業を長時間行う場合には、音楽を聴きながら行うことで作業効率が上がるという報告もありますが、文章を書くなどのいわゆる“頭を使う作業”を行っている際には、聞こえてくる音楽に注意のリソースが使われてしまうと、邪魔に感じられる可能性もあります。音量を小さくする、あまり複雑すぎない音楽を流すなど、ある程度対応はできるかもしれませんが…」

シーン別!おすすめのBGMの特徴

多少の条件はあるものの、BGMによる心理的効果は期待できそう。そこで、シーン別におすすめのBGMの特徴を教えてもらった。


【集中力を高めたい】
…二台のピアノのためのソナタ ニ長調(K.448) 第一楽章/モーツァルト


「『集中力』をどう考えるかによりますが、『単調な作業を飽きずに、作業量や内容を低下させずにやり続けられる』とする場合、覚醒水準をある程度高められるよう、行う作業のテンポに合わせる、複雑すぎない(音の高低・長短の変化が激しすぎない)旋律、邪魔にならない程度の音量の音楽が望ましいと思われます」


【リラックスしたい】
…タイスの瞑想曲/マスネ


「リラックスしたいのであれば、心身共に沈静化する方向への変化が求められているので、テンポはゆっくりめで、旋律の特徴としては刺激が強すぎない穏やかなもの、音量も大きくなりすぎない音楽が一般的に良いと言えると思います」

【やる気をアップさせたい】
…愛の喜び/クライスラー


「『集中力』同様に、『やる気』をどう理解するか難しいところですが、とりあえず『感情を高揚させる』とするなら、上記の『リラックスしたい』場合よりは、テンポを速め、旋律の特徴としてはもう少し刺激があるもので、音量ももう少し上げることになるかと思われます。ただし、あまり速めすぎたり上げすぎたりしては、仕事の邪魔になるなどの逆効果も考えられますので、中庸を目指すと良いかもしれません」

いずれの場合も、音量に関しては、外部の雑音が聞こえないようにしたいのであれば、そのような音を打ち消す効果(マスキング効果)が期待できる、ある程度以上の音量は必要とのこと。また、旋律が複雑になると、作業に必要な認知のリソースがBGMに奪われてしまうため、注意が必要だ。

佐藤さんの話を聞いて、BGMの効果は多少期待できるが、個人によるところが大きいということがわかった。

「職場の環境改善」とはいうものの、進めている作業は違うし、その時の気持ちもそれぞれ違う。

そのため、オフィスでBGMを導入しても万人に効果が期待できるかというと話はまた別のようだ。

オフィス全体ではなく、個人でBGMを聴きながら作業をすれば効果があるかも!?

取材・文=明日陽樹/考務店
取材協力=佐藤典子