CM界のホープ・森ガキ侑大監督が挑んだ初の長編映画

初の長編映画は「家族」と「生と死」をテーマにした『おじいちゃん、死んじゃったって。』

カテゴリ:話題

  •  90分間の起伏の付け方がCMと全然違う
  • 家族も死も生活の一部。映画にすることでより多くの人に共感を得られる
  • キャスティングはプレッシャーがあった

ソフトバンクの「白戸家」シリーズやグラブルなど数々のヒットCMを飛ばし、今や引っ張りだこの若きホープ、森ガキ侑大(もりがきゆきひろ)監督。

監督が挑んだ初の長編映画は、「家族」と「生と死」をテーマにした『おじいちゃん、死んじゃったって。』だった(キネカ大森(東京)、MOVIX柏の葉(千葉)、 チネ・ラヴィータ(宮城)ほか全国公開中)。

監督に鈴木款解説委員がロングインタビューした。

撮影中はつらいの一言でした。

ーーCMディレクター出身の映画監督はあまりいませんね?

市川準さんとか中島哲也さん、何人かはいますが多くはないですね。ただ、世界的に見ると結構多いので、今回自分も挑戦してみようかなと思いました。

ーー初めて映画を撮影してみて、CMとの違いを感じましたか?

尺の起伏というか、90分間の起伏の付け方はCMとは全然違いましたね。

CMは15秒にギュッと詰め込んだり、五・七・五・七・七のようなフォーマットがあるのですが、フォーマットが90分というのは初めてだったので、苦戦したということはありました。

ーースタッフは映画とCM両方からですか? カルチャーショックはありましたか?

映画が半分でCMが半分でしたが、お互いカルチャーショックはあったと言ってました。映画の人たちは、CMの人たちのスピードが速いというのと、こだわるポイント、ライティングの仕方とかが全然違うなと。

映画の現場はふつう喧嘩がよく起こるそうですが、今回は喧嘩が少なくて、映画からきた助監督は「不思議なチーム編成だったな。こういうやり方もあるんだな」と言っていました。

ーーCM側の人は何か言っていましたか?


15秒のCMなら、スタジオで1シーンだったら1日で終わりますし、ロケもので2~3分のウェッブCMでも3日間とか。しかも毎日夜には終わって寝て、朝からやるサイクルです。今回のロケは2週間くらいでしたが、ぎゅうぎゅうのスケジュールで、みんなへとへとになりました。

共同生活がずっと続くので、違う領域にいるなあと感じていましたね。自分は、スタッフが疲れて士気が下がるのをどう盛り上げていくのかとか考えていました。撮影中はつらいの一言でしたね。歳を取ってできるもんじゃないなと。結構体力がいりましたね。

初映画で家族や死をテーマにした理由は?

この映画の舞台は、とある夏の地方都市。主人公の春野吉子(岸井ゆきの)は、彼氏とのセックス中に鳴り続ける電話をとると、祖父の訃報だった。

そして、祖父の死をきっかけに久しぶりに集まった家族たちが織りなす、ちょっと滑稽で愛おしい物語。全編に流れるのは「家族」「生と死」という重いテーマだが、森ガキ監督は吉子の目を通してユーモラスでみずみずしく描いている

ーー「おじいちゃん、死んじゃったって。」ですが、なぜ初映画に家族や死をテーマに選んだのですか?

私は今、34歳ですが娘がいて家族があって、親戚の葬儀も経験していて。家族のあり方とか、死ぬまでどんな生き方をするのか?死って何なのか?ということは、普遍的で誰もが逃げられないなと感じています。家族も死も生活の一部ですから、これを映画にすると、より多くの人に共感を得られるのではないかと思いました。

ーー映画では、とにかく光石研さんや岩松了さんといった役者さんが面白かったです。監督にとってキャスティングのキモは誰でしたか?

岸井さん、光石さん、水野(美紀)さん、岩松さん、全員キモなんですけど(笑)。誰か一人と言えば岸井さんと思っていて。アンサンブルというか足し算引き算で微妙な配役になっていて、事務所に毎日のように電話して、土下座でお願いしました。

ーーとある地方都市が舞台ですが、ロケ地に熊本県人吉市を選んだのはどんな理由ですか?

吉子は田舎のコンプレックスがある設定なので、関東近郊だと新幹線で1時間で東京行けちゃうので、コンプレックスが生まれないじゃないですか。東京から離れた場所がなんとなくいいのかなと思っていました。

熊本にした理由は、(プロデューサーの)芥川さんのつながりもあったのですが、人吉市に行ったとき風景もよかったし、人も暖かくて協力的だったので決めました。

ーー映画はまず脚本があって、これを撮りたいなと。

そうですね。自分でも脚本を書くんですけど、今回は山﨑(佐保子)さんの脚本に出会って、感情移入して読み終わった途端に家族に会いたくなって。これを映像化するとそういう気持ちになってくれる人が大勢いるんじゃないかと思って、これを撮りたいなと。

ーー脚本を読んだとき、キャスティング案が浮かびましたか?

読んだときは漠然としていてそんなことはなかったですが、読み返すうちにこの人がいいなと。たとえば光石さん、そして光石さんだったら岩松さん、みたいな。また、岸井さんは小さいので、彼氏が180センチくらいのイケメンだとホントに付き合っているのかわからない感じがありますよね。キャスティングは一人がダメだとパズルを一からやり直さなければいけないところがあって、緊張したというか、プレッシャーはありましたね。ーー生と死をテーマにした日本映画だと、「お葬式」とか「おくりびと」がありますが、モチーフにしましたか?

「おくりびと」よりも「お葬式」かもしれないです。伊丹監督は好きで、絶対これは伊丹さんの映画と比べられるなと思ったんですね。題材がお葬式ですし。そういうハードルはあったんですけど、伊丹さんの映画には泣き笑いがあるので、そこは共通して描きたいなと思いました。

統率力はCM業界で養いました

ーー好きな映画は?

邦画も洋画も好きで、邦画なら小津安二郎監督の「東京物語」だったり、洋画なら「ベティ・ブルー」とか、グザヴィエ・ドラン監督の「私はロランス」。ほかにも「ショーシャンクの空」とか「グリーンマイル」とか。

小津さんの「東京物語」は、若い時は良さがわからなかったけど、子どもができて齢を取っていくとだんだんわかるようになってきて。

ーーライバルとして意識する監督はいますか?

すごいなと思ったのは二宮健さんです。26歳ですが初の長編映画で、高橋一生さんや桜井ユキさんが出演する「リミット・オブ・スリーピングビューティ」という映画があるんですが、何倍もとがっていて、挑戦的で、お会いすると映画界を変えたいというパワーがあって。

海外ではグザヴィエ・ドラン監督。若い人に影響を与えていて、繊細でいいものつくっています。一時期、映画監督を目指している人はみんないいねと言っていましたね。

ほかには、同い年の「セッション」や「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督もすごいです。

ーーCM業界を経験してから映画に入ってよかったなと思ったことはありますか?

自分の組をまとめあげなければいけないじゃないですか。統率力はCM業界で養いましたね。また、絵作りの部分で、CMは映画に比べて短い尺でリッチにできるので、筋肉、瞬発力は鍛えられました。また、役者さんとの向き合い方も、勉強になりましたね。

ーー映画監督を目指す若い人たちにメッセージはありますか?

あきらめずにいろんなことをやるのがいいのかなと。死に物狂いでやるしかないのかなと。

ーー最後に、次に撮りたい映画は?

何個かありまして、いろいろなお話を頂くようになったので、いま選んでいます。おこがましいですが。

2つを同時にやりたいなと思っていて、原作物を大手とやってみたいという気持ちもありますし、オリジナルもやりたいなとも。いまやりたいのは青春ものですね。

ーーありがとうございました。監督の次回作も楽しみにしています。


◆映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』公式サイトはこちら。

http://ojiichan-movie.com