金正恩委員長が相互確証破壊(MAD)を成立させ得る事は無い

核による抑止力について頭の体操をしてみる<フジテレビ二関吉郎解説委員>

カテゴリ:ワールド

  • "核戦争をすれば双方とも完全に破壊される。よって核戦争はできない" それがMADの理論。
  • 米国とMADが成立するのはロシアだけ。北朝鮮と成立の可能性は無い。 
  • 北朝鮮は米国と対等の核保有国になることはできない

"核戦争なら双方が確実に破滅する"MAD

テーマにあるMADは、“Muturally  Assured Destruction”の頭文字である。

訳せば“相互確証破壊”。簡単に言えば、“核戦争をすれば双方とも完全に破壊されてしまう。よって、核戦争はできない。”という理論である。

“激高した”とか“異常をきたした”といった人間の状態を表す単語ではない。
核開発を進める北朝鮮の金正恩委員長は21日、「米国に実際の核の威嚇を加えられる戦略国家に急浮上した」と主張し、北朝鮮の外務省は22日「米国の悲惨な終末を早めるために核抑止力をさらに強く握り締める」と強調している。

米朝でMAD成立の可能性なし 成立は米露のみ

だが、彼らがアメリカと核の均衡を成し遂げ、MAD・相互確証破壊を成立させる可能性は無い。

今年10月のデータだが、アメリカ国務省の発表によれば、核兵器の運搬手段である戦略ミサイルのICBMとSLBM、それに戦略爆撃機の合計は、配備済みのもので、アメリカは660、ロシアは501。これらの運搬手段に搭載可能な配備済みの核弾頭の数は、アメリカが1393発、ロシアが1561発。
その恐ろしさと馬鹿馬鹿しさについて語るのは本稿の趣旨と異なるので脇に置くが、アメリカやロシアが保有する核戦力は、質・量ともに桁違いである。核を使い始めたら確実に双方が破滅するというMAD・相互確証破壊が、理論上、成立しているのは、実は、米露の間だけなのである。

軍事力の増強著しい中国でさえも、まだ米露のレベルには達しておらず、MAD・相互確証破壊は成立させられていないと言われている。

北朝鮮は米国と対等の核保有国になれない

北朝鮮は、核爆弾と弾道ミサイルの開発成功・実戦配備まで、もう少しと思われる段階に来ている。だが、再突入技術は不確かで、彼らが脅すようにアメリカ本土に打撃を与えられるかどうか、不明である。

単なる頭の体操に過ぎないが、さらに言えば、万万が一、彼らの核兵器が1個、アメリカ本土のある場所に到達し、爆発したとしても、アメリカ全土が壊滅することは無い。

反対に北朝鮮はアメリカの反撃を受けて国全体が壊滅する。国土の大きさも全く違うのである。つまり、北朝鮮がアメリカと核の均衡を成し遂げ、対等の核保有国になることはできないのである。
しかし、彼らの核は北朝鮮に対する全面侵攻を思いとどまらせる抑止の効果は発揮する。

自国内に侵攻してきた外国軍に対して使用することは可能であろうし、すぐ隣の韓国には届く可能性が高い。日本だって危ない。安心してはいられない。繰り返すが、本稿は頭の体操である。

だが、韓国や日本に駐留するアメリカ軍の戦力と核の傘が無ければ、おちおち眠っていられなくなることに異論を挟む人はあまり居ないだろう。

もしアメリカが居なくなれば

また、相手は代わるが、この地域からアメリカが居なくなれば、中国は台湾を武力で飲み込みに掛かるだろう。そして、尖閣はもとより、沖縄が危なくなってきても不思議ではない。

 実際に、アメリカさんに居なくなってもらってみなければ、どうなるかわからないという声も出てくるかもしれない。だが、それを本当に試してみる勇気は無いはずである。
アメリカの軍事力と核の傘は、我々にとって、死活的に重要なのだと思う。そして、これら全てを自分達で取って代わることは現実的ではない。

だが、同時に、自分の身はできるだけ自分の手で守る努力と気概も不可欠である。国際社会は綺麗事だけでは済まされないのである。

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