国家的プロパガンダを再稼働…ロシアの逆襲にご用心

過去の栄光に囚われた国の悪行 フジテレビ二関吉郎解説委員

カテゴリ:ワールド

  • “ヒラリーは悪魔”を制作したロシアのエージェントを起訴
  • 国家的プロパガンダ・マシーンを再稼働させたロシア
  • 「プーチンの統治は過去のプライドを取り戻す為にある」

“ヒラリーは悪魔”を制作したロシアのエージェントを起訴

悪魔 「私が勝つならヒラリーが勝つ!」

イエス 「私の力でそうはさせない!」

ヒラリーは悪魔である。彼女の犯した罪や嘘は彼女がいかに邪悪か証明している。

2016年10月にSNS上に掲載された政治広告の一つである。
トランプ候補が勝利したアメリカ大統領選挙投票日の半月ほど前のことになる。

そして、公表された起訴状によれば、このとんでもない内容の広告を制作・投稿したのはロシアのエージェントだという。

ピョンチャンの五輪期間中にやぼな話をすることになるのは承知だが、いわゆる“ロシア疑惑”を捜査しているアメリカのマラー特別検察官が16日、2016年の大統領選挙にSNSなどを使って違法に干渉したとして、ロシア国籍の13人と企業3社を起訴したと発表した。

ロシア側はでっち上げと否定している。
しかし、証拠を持ち合わせている訳では無いが、筆者の偽らざる感想はまたぞろ彼らの悪い癖が明るみに出たかというものである。

アメリカ合衆国下院情報問題常設特別調査委員会HPより

国家的プロパガンダ・マシーンを再稼働させたロシア

舞台は変わるが、去年の5月1日、当時、ロンドンに駐在していた筆者は、メーデーの集会の取材でトラファルガー広場に赴いた。

個人的に少し驚いたのは参加者が想像したより少なかったことと冷戦時代さながらの赤い旗の数々。特にスターリンやゲバラの顔をプリントした旗が多かったのには唖然としたのだが、もう一つ驚いたことがあった。

それは取材中の私の横で同じ集会を観察していた中年男性2人組がロシア語で会話をしていたことである。

私にはロシア語の内容は全く判らない。しかし、それがロシア語であることはわかる。

また、カメラ類やリュック等を持たず手ぶらでメーデーの集会をずっと見ていた中年男性2人組が普通の観光客だとは思わない。筆者と同業のジャーナリストでも無いことは匂いで判る。

だから何なのだと問われれば、それだけのことなのだが、このロシア人中年男性2人組の話を既知の外交官にしたところ「まだ彼らは同じことをやっているのですね。」という反応であった。
そう、東西冷戦時代の昔、ソビエトの頃からロシアは、東欧の衛星国や西側各国で、ディスインフォメーションを含むプロパガンダ活動に国家的に取り組んでいたのである。

ソビエトの崩壊後、ロシアのこうした活動は暫く鳴りを潜めていたように思えなくも無いが、要するに、先祖返りをして、またぞろ、プロパガンダ・マシーンを動かしたということなのだろうと想像する。

それが今回明るみに出たのである。

昔との違いはSNSの存在で、彼らはこれを駆使して、アメリカの大統領選挙のキャンペーンに直接介入したということになる。

不正介入の詳細は長くなるので割愛するが、ロシア側は、実に熱心に細かくやっている。まさに、SNSがそれを可能にしたのである。それも超割安に。

マニアックになるが、ディテールに興味のある方は起訴状に目を通されることをお勧めする。

「プーチンの統治は過去のプライドを取り戻す為にある」

この関連で欧米の記事を検索していたところ、英紙・ガーディアンの元モスクワ特派員が書いた原稿が目に留まった。この元特派員によれば“プーチンの統治はソビエトの崩壊で失われた過去のプライドを取り戻す為にある”のだという。

さもありなん、と思う。

ロシア人の大国意識と力への信奉ぶりには辟易させられたことが、個人的な経験でも何度かある。
彼らはとにかく勝ちたいのである。そしてその為には、時に手段を選ばない。

さて、ここでちょっと考えてみたい。
ロシアのエージェントがこのような介入をした、或は、しているのはアメリカ相手だけではない。イギリス政府も自国の選挙に似たような介入をしたとしてロシアを非難している。

では、日本には?
まだ、無いとしても将来は?

もう一つ加えたい。
このような介入を企てるのはロシアだけ?

そんなはずはない。

自由と民主主義を信奉する我々は、当然ながら、言論の自由も尊重する。
表裏一体だからである。

だが、SNS上などに氾濫する情報は玉石混交なばかりでなく、悪意に満ちたフェイク・ニュースやディスインフォメーションもしばしば紛れている。

これらを吟味し、真偽を見極める能力を磨くことは我々自身の将来にとっても極めて重要であるということを、今回の起訴を受けて、改めて実感した次第である。