トランプ“暴露本”の日本語訳版が発売 ワシントンを「興奮」させた内容【木村太郎】

【木村太郎のNon Fake News#30】政権の内幕を暴いただけではなかった

カテゴリ:話題

  • “暴露本”はワシントンを興奮させ、関係者を危険な目に合わせた
  • 1ページ平均3回はバノン氏が引用され、氏には不本意な証言ばかり
  • その結果、バノン氏は放逐され、政権のあり方が変わった

ワシントンを興奮のるつぼに陥れた『炎と怒り』

「『炎と怒り』は2018年の最もホットな本である」

2018年が始まってまもない1月9日、ワシントン・ポスト紙はこの本をこう評価する記事を掲載した。

ここで使った「ホット」という形容詞は「熱い」という意味が転じて「興奮させる」とか「危険」という意味にも使われるが、この本は間違いなくワシントンを「興奮」のるつぼに陥れ、関係者を「危険」な目に合わせることになった。

著者のマイケル・ウォルフ氏はUSAトゥデー紙などにコラムを執筆するジャーナリストで、トランプ氏が選挙運動中の2016年夏からトランプ氏に密着取材を許され、その後ホワイトハウスも自由に出入りして関係者約200人にインタビューをして今回の本をまとめた。

大統領選で勝てると思っていなかったトランプ陣営

本は大統領選投開票日の一昨年12月8日の記述に始まる。

トランプ選対のケリーアン・コンウェイ本部長は選挙に勝てるとは思わず、次はテレビの解説者の仕事をしようかと考えている。

トランプ候補自身もメラニア夫人には「勝てないよ」と保証していたが、午後8時過ぎにトランプ氏の勝利が決まると夫人は涙したという。それは喜びの涙ではなかったとウォルフ氏は観察している。

勝てると思っていなかったトランプ陣営だったので政権を築くのにもドタバタが続くわけで、その混乱を吐露するトランプ大統領周辺の人々の証言が刺激的で生々しく「ホット」なのだ。

1ページ平均3回引用されるバノン氏

もう一つの「ホット」つまり「危険」なことになったのは、トランプ大統領の側近中の側近と言われたスティーブ・バノン首席戦略官だった。

この本でバノン氏の名前は908回登場する。本は英語版で328ページあるので、1ページ平均3回はバノン氏が引用されていることになるのだが、それはバノン氏にとって不本意な証言ばかりなのだ。

例えばトランプ大統領の息子のドナルド・ジュニア氏がロシア側と接触したとされることについて「反逆行為で非国民的だ」と非難したり、娘のイバンカさんを「レンガのように愚か」と言ったとされる。

バノン氏は本が発売された直後にトランプ大統領に謝罪したが、大統領は許さずバノン氏はホワイトハウスから最終的に放逐されることになった。

トランプ政権のあり方まで変えるきっかけになった

バノン氏はトランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策の推進役だったと言われ、この後ホワイトハウスでは娘のイバンカさんや娘婿のクシュナー上級顧問ら「国際派」の意向が強く働くようになったとも言われる。

それは、大統領が「環太平洋連携協定(TPP)への復帰もあり得る」と言ったことや、国内政策でも若年不法移民救済措置(DACA)で妥協的な姿勢を示したことに現れていると考えられる。

また最近でもマイアミの高校での銃乱射事件を受けて、大統領が銃規制に前向きな発言をしたのも保守派を代表するバノン氏が健在ならばあり得なかったことだ。

つまり「炎と怒り」は単にトランプ政権の内幕を暴いただけでなく、トランプ政権のあり方まで変えるきっかけになったとも言えるわけで、今後の米国のあり方を推測する上でも一読の価値があるだろう。

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