40年前の願いが叶った。ユミカツラが国宝の迎賓館で初のファッションショーを開催できた理由

迎賓館113年の歴史で初

カテゴリ:暮らし

  • 迎賓館でのファッションイベントは今回が初めて
  • 日本半分、ヨーロッパ半分。作品と会場が驚くほどマッチ
  • 実は40年前から迎賓館でファッションショーを開催したかった

世界中で盛り上がりを見せている平昌オリンピック。

たくさんの日本人選手が活躍する中、金メダリストとなった羽生結弦選手の演技にひときわ大きな歓声を上げる女性がいた。

ブライダルファッションの巨匠・ユミカツラインターナショナル代表の桂由美さんだ。

桂由美さん

桂さんも足をケガしたばかりということで、ひときわ感動も大きく、涙したという。

「足が痛いからわかるの。痛かったでしょうね。仕事にかける思いは一緒」

インタビューが行なわれた場所は国宝の迎賓館赤坂離宮。この話をしている途中、菅義偉官房長官が挨拶に訪れたため、途中で打ち切られた。2月20日、菅官房長官だけでなく、ゲストやメディアは世界中から集まっていた。その理由は、迎賓館でユミカツラインターナショナル主催の「日本初のファッションショー」が開かれたからだ。

迎賓館赤坂離宮

1909年、日露戦争の5年後に建設された歴史ある迎賓館で、ファッションショーが開催されるのは、これが初めてのこと。

ただ、桂さん自身は、40年ほど前から迎賓館で開催したいとずっと夢に描いていたという。それは世界中でファッションショーを開いてきた桂さんならではの感覚だった。

「パリでは、古いホテルも区役所も、素敵な内装をしていました。でも、日本が一つも入っていなかったんです。全部ヨーロッパでした。ここ迎賓館は、日本とフランスがマッチしています。それが私たちの最後の姿でもあります」迎賓館とは、世界各国の国王や大統領、国賓などを迎え入れる場所。去年、トランプ大統領が来日した際にメディアでよく取り上げられたので印象に残っている人も多いと思うが、外装も内装も欧風建築となっている。

しかし、中に入って装飾品などをよく見てみると、日本刀や兜、鎧や家紋など日本古来のものが多くデザインされている。

和と洋が融合されていて、欧米には存在しない珍しい建物なのだ。

シャンデリアにの一部にも家紋がデザインされている

桂さんは、ブライダルファッションを始め、和洋折衷をテーマとしたデザインを国内外に発信している。今回のファッションショーのタイトルも『BEYOND EAST&WEST(東と西を超える)』。まさに桂さんが行なうファッションショーには最適な場所と言える。

なお、この歴史的価値の高い建物を一般の人も見ることができるようにと、現在は通年で一般公開されている。しかし、ここは国宝。建物保護のため、簡単には入ることはできない。

入館時は、空港の手荷物検査のようにゲートを通って、セキュリティチェックを行う。

館内の床保護のため、ハイヒールや硬質底の靴はNG。さらに、靴カバーが配布され、それを着用してようやく入館することができた。

用意された靴カバー

また、撮影エリア外(随時異なる)で携帯電話を露出して携行することも禁止されている。

このファッションショーが、いかに特別かがわかる。

「ファッションショー」と聞くと、広い会場で、ランウェイは客席よりも高い位置にあり、大きいモニターやカラフルな照明といった印象がある。

今回の会場は迎賓館の一室。そこには大きなモニターも無ければ、カラフルな照明もない。ランウェイと客席も同じ高さに位置し、とても近い。

迎賓館の内装は、和柄やヨーロッパの壁画、シャンデリア、日本刀。ショーのために会場を煌びやかに飾り付けることはなく、作品そのものが会場に溶け込んでいた。まさに桂さんが手がける和洋折衷の衣装とマッチしていたのだ。

「会場と作品がマッチして初めて、見た方も日本を感じられる」と桂さんは語る。

まさに圧巻。40年も前からこの場所で開催したいと願っていたという言葉も納得できる。迎賓館の別府充彦館長も、この場所でファッションショーが開かれたことについて、こう述べた。

「迎賓館は、西洋の方を迎え入れたり舞踏会ができるようにと、建築されました。ですが、実はここで舞踏会が開かれたことはありません。

建物は和と洋の両方の要素が入っていますが、全体としては統一性のあるように作られています。そういった意味で、桂先生に選んでいただけたのかなぁと思っています」

ポップで洋風な音楽や和楽器などの和風な音楽が流れ、ファッションショーが始まった。

「ドレス」の中には、江戸時代に活躍した尾形光琳から始まり、伊藤若冲、俵屋宗達、鈴木其一と続き、今年からは新たに葛飾北斎の絵画、モネの睡蓮、ゴッホのバラなどが取り入れられている。

モネの「睡蓮」を西陣織で表現したオフショルダーのミニドレス
「北斎漫画」より相撲をアップリケした黒とピンクのバイカラー・シルクサテンドレス
伊藤若冲の「鳥獣花木図」の屏風絵柄をダイナミックに描いたロングドレス
鈴木喜一の「百合と渓流図」を手描き友禅で表した着物風ドレス

こんなにも日仏文化を一着で表現したドレスは見たことがない。

桂さんが目指す"日本半分ヨーロッパ半分"という言葉の通り、客席には訪日外国人の姿もあった。

様々なドレスが目の前を通り過ぎる中、彼女たちが特に注目していたのは、やはり着物がベースとなった作品や、富士山が描かれた作品だった。

和装が目立つ作品に対して歓喜している姿を見ると、日本の着物の素晴らしさを改めて感じられる。

桂さん自身も、パリで発表した際には、富士山のドレスが好評だったと語っていた。

手描き友禅に刺繍を加えた「富嶽三十六景 凱風快晴」のボリュームドレス

ファッションショーは4つのシーンに分けられ、披露したドレスの数は計60着。

ちなみに、桂さんが着用している衣装は、ゴッホの作品があしらわれていて、ショーの作品の残り生地で作ったものだという。

こちらの作品の残り生地を使用

会場を訪れた女優・藤原紀香さんは「和洋の融合を見事に表現した数々のドレスが本当に美しかった。また、迎賓館で行われた意義を感じ、より一層 感動しました」とコメント。

また、俳優の片岡愛之助さんも「初めて寄せていただいた迎賓館も和洋が融合した建物なので、パワーとヒントをたくさん頂きました」と、"迎賓館のファッションショー"に心を打たれた様子だった。

日本の伝統技術や文化を洋装に取り入れるユミカツラ。

同じく、西洋建築の中に日本の粋を結集させた迎賓館。

世界に誇れる日本の文化を発信する取り組みは、他の分野にも広がっていきそうだ。