トランプの輸入制限発言で世界の貿易が落ち込む 【対談】

マネックス証券広木隆チーフ・ストラテジスト×鈴木款フジテレビ解説委員対談

カテゴリ:ワールド

  • 順調な世界経済が腰折れすることを恐れ日本のマーケットも反応か
  • 輸入制限の発表は中間選挙を意識したパフォーマンス
  • 高関税や保護貿易主義は「自国通貨高」を招く

誇大妄想で世界の貿易が落ち込む

鈴木
トランプ大統領が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を表明してから市場は反応してますが、為替にも影響がありそうですね。

広木:
大統領になる前から方針は打ち出していたわけだから、わかってはいたこと。それこそNAFTA(北米自由貿易協定)から見直すとか、TPPから離脱したりとか。

ただ、今回は唐突に輸入制限で関税をかけるとして、マーケットはびっくりした部分はありますが、詳細が明らかになっていないところもあるので、マーケットは冷静になっていいんじゃないでしょうか。

鈴木:
鉄鋼・アルミニウムということになると、影響ありそうなのは中国とカナダですよね。むしろ日本としては、そんなに影響がないにも関わらず株価にも反応しちゃうんですね。

広木:
ちょっと誇大妄想というか、悪いシナリオが拡張されている部分があるんです。

結局どこにつながっているかというと世界の貿易力が落ちこむことなんです。世界の貿易力が落ち込むと、世界経済が好調に推移しているのが腰折れてしまうという懸念に繋がっているわけです。

でも、それはもっと先のシナリオですから。

広木:
もう早くもユンケルEU委員長からは報復措置という話が出ています。

それに対してまたトランプ大統領が間の悪いことを言っていますが、ユンケル委員長が一枚上手ですね。

具体的に、ハーレー・ダビットソンやリーバイスなど企業名を出していますから。企業名を出されると、企業はやっぱり困るわけですよ。

そういうところの企業は地元選出の議員がいますから「それはちょっと待て」という話になってきます。

トランプ大統領は暴走的に、ある意味ボーンと言っちゃいましたけども、それをサポートするいわゆる保護貿易主義的な陣営の人が政権の中にいるわけで、自由貿易を標榜している人たちもまた逆にいるわけです。

当然一つのことって、結局誰かにとっていいことだけど、また別の誰かにとっては不利益だということになるんです。

特に鉄鋼なんて、すでに企業から「やめてくれ」っていう言葉が上がってます。ビール会社とかね。

それに対して「そんなにコストが上がらないんだよ」とロス長官は言っているみたいですけど、やはり企業にとってみれば鉄やアルミというのはコスト増なので、当然そういう企業はロビー活動を通じて、議員だとか政治に対して反対の圧力をかけてきます。

今後もどんどん保護貿易主義のほうに突き進んでいくということにはならないんですよ。

中間選挙を意識したパフォーマンスだ

鈴木:
今年中間選挙がありますよね。

トランプの支持層というのはいわゆるラストベルト、鉄鋼ですとかアルミなどが盛んな地域の人が多い。

でも企業の経営者がわかっていても、労働者は「トランプさん、よくやってくれた」ということになりかねないですよね。

広木:
そうですね。

あきらかにパフォーマンスですよね。
中間選挙を意識したパフォーマンスです。
ただ難しいところは、中間選挙って大統領がやるわけじゃないじゃないですか。

議員さんですよね。

そうすると議員さんによってはそこでも損得勘定があるので必ずしもトランプ大統領の支持層であるラストベルトの労働者の動きをよくすることが、中間選挙の入れ替えの対象になる議員さんの損得につながるとは限らないわけですよね。

鈴木:
そういった意味では、今回発動を仮にしないとしてもアナウンス効果としてはバッチリだったということですね。

広木:
そういうことなんですよ。

今回の鉄鋼・アルミの関税問題というものの本質が、選挙を意識したトランプ大統領のパフォーマンスであれば「トランプ大統領が俺たちのために闘ってくれているんだ」という支持層にアピールができた。

もし、本当に経済が悪くなっちゃったらトランプ大統領も何のためにやっているのかがわからないですから。


高関税と保護貿易主義が招くのは「自国通貨高」

鈴木:
もう一つ、自国通貨安への誘導との考え方が出てくると思うんですけど、ドル円のマーケットはそういうのを意識しながら反応したのでしょうか。

為替の今後の見通しはどんな風に考えていますか。

広木:
経済の理論からいうと、高関税とか保護貿易主義というのは「自国通貨高」になるんです。

シンプルに考えて、海外から入ってくるものに高関税をかけると、その分が高くなるから、そんな高いものを買わないで国内の産業のものを買おうとする。

これが保護貿易主義なわけだけれども、全部が国内産に代替できるものと、できないものがありますよね。

そうなると輸入コスト高になり、インフレになり金利があがる。その高金利でドル高になる。

結局自国経済がダメになるケースもあるんです。

理屈で言えば保護貿易主義が強まれば、むしろドル高に行くはずなんですけれども、為替のマーケットはまずは連想というか直観的に円高ドル安で反応してるというところはありますね。