新型コロナウイルスの感染予防対策が様々行われ、全国の小学校では卒業式の取りやめや縮小などが相次ぎ、寂しい思いをしている卒業生もいるだろう。
こうした中、岡山県赤磐市内にある4つの小学校の卒業生には思いがけないプレゼントが贈られた。
それはタイムカプセル。少しでも思い出作りに役立ててほしいというものだ。
タイムカプセルを贈ったのは、同市内でエアータンクなどの圧力容器を製造する社員数80人の富士鋼業株式会社。
タイムカプセルは直径25cm×高さ30cmの鉄製で、重さは10キロ弱。思い出の品物を入れたら底にあるフタを絞めてネジで止める仕組みになっており、4つの小学校に合計5つのタイムカプセルを寄贈した。
エアータンクとタイムカプセルは、まったく違うように思えるがなぜ作ることになったのか?
しかも、作ることが決まったのは卒業式の直前で、通常の作業工程では間に合わないはずだったという。担当者に詳しく聞いてみた。
作ることになったのは卒業式の1週間ほど前
――なぜタイムカプセルを作ったの?
当社は去年の夏あたりから若手社員を中心にした社内活性化プロジェクトを立ち上げており、タイムカプセルはそこで出た新商品アイディアの一つです。社内で試作品のタイムカプセルを作製していたところ、卒業シーズンにある市議会議員から小学校の卒業式向けのタイムカプセルを作ってみてはどうかと声をかけられました。
今年度の小学校の卒業式は新型コロナウイルスの影響で、在校生や保護者、来賓の出席を見合わせるなど規模を縮小することが分かり、そんな最後に「良い思い出」を作ってもらうため、タイムカプセルを寄贈することを決めました。
――作ることになったのはいつ?
市議会議員から声をかけられたのは3月19日に行う卒業式の1週間ほど前でした。当初は、卒業式には間に合わないと考え、寄贈はその後になってもいいとしていたのですが、途中から何とか間に合わせる方向に切り替えました。
――作るのに普通はどのぐらいかかる?
本来であれば、材料の調達が最も時間がかかるところで、数週間を要します。
――どうやって間に合わせた?
今回は材料を調達するのではなく、会社にあった既存の材料を流用することで製造期間を大幅に短縮しました。
ある小学校では「成人した自分への手紙」を入れた
――どんなところにこだわった?
試作品にはなかったネームプレートを取り付けました。
小学校の名前や「令和元年度 卒業記念」という文字をレーザー加工で刻んでいます。
――タイムカプセルには何を入れていつ開ける?
全ての学校に聞いたわけではありませんが、ある小学校では成人した“未来の自分へ”の手紙を入れて、20歳になる年に開けるそうです。
――今回タイムカプセルを作った感想は?
一部の学校では卒業生にタイムカプセルを手渡すことができ、“未来の自分へ”の手紙を入れるところにも立ち会わせていただきました。
子どもたちも保護者の方もみんな笑顔になってほしいと思っていたので、みなさんのいい思い出になればうれしいです。
子どものころタイムカプセルを埋めたことは覚えていても、そのカプセルを誰がどんな思いで作ったのかは知らないのではないだろうか。
今回のタイムカプセルは中身の品物と共に、富士鋼業の社員たちが「こんな状況だからこそ思い出作りを」と込めた思いも、きっと引き継がれていくだろう。
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