トランプ大統領のコロナ対策への評価

新型コロナウイルス問題の対応をめぐって、トランプ米大統領への支持が急上昇している。

まずABC放送が市場調査会社イプソスと共同で今月18日と19日に行った世論調査で、トランプ大統領の新型コロナウイルス問題への対応に「支持」が55%「不支持」が43%だった。一週間前の調査よりも「支持」が12ポイント増加し、「不支持」が11ポイント減った。

(出典:ABC放送とイプソスの合同世論調査)
(出典:ABC放送とイプソスの合同世論調査)
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通常大統領の政策を尋ねる世論調査では、共和党と民主党支持者の支持率が固定的に現れるが、今回共和党支持者の92%が「支持」したのは当然として、民主党支持者の間でも「支持』が30%と一週間前に比べて倍増したのが目に付く。

(出典:ABC放送とイプソスの合同世論調査)
(出典:ABC放送とイプソスの合同世論調査)

またニュースサイトのアクシオスと調査会社ハリスの調査も、トランプ大統領の新型コロナウイルス対応について先週より5ポイント増の56%が「支持」している。

さらに世論調査で定評のあるボストンのエマーソン大学の調査でも、49%対41%でトランプ大統領の対応を「支持」している。

コロナ対策の記者会見が好感

これらは新型ウイルス問題が発生する前のトランプ大統領の支持率を大幅に上回るものだが、それは今月9日からホワイトハウスで行なわれている「コロナウイルス特別委員会」の記者会見を好感してのことという見方がある。

連日行われているトランプ大統領による記者会見
連日行われているトランプ大統領による記者会見

この会見は毎日行われ、22日の日曜日も午後6時から7時半までみっちり行われた。トランプ大統領も出席するだけでなく、自ら司会者役を買って出て専門家の意見を引き出し記者たちの疑問に答えようという積極的な姿勢が見られ、いつものような民主党やマスコミに対する露骨な批判も控えめだ。

「彼(トランプ大統領)は国民が必要としている指導者だ。少なくとも今危機と不安に苛まれる時に、国民が必要とし求め切望する指導者の資質を示した」

18日の記者会見を受けて、CNNの主任政治記者のダナ・バッシュさんは放送内でこう言った。CNNは「反トランプ」をいわば「売り物」にしており、バッシュさんも普段はトランプ大統領を手厳しく批判していたので、保守派のメディアも驚いたのか大きく伝えた。

また反トランプではCNNと競っているMSNBC放送の朝のニュースのキャスターのジョー・スカボロー氏も、17日の放送でこう言っている。

「我々はトランプ大統領を批判し続けてきたが、今は大統領がコロナウイルスとの戦いに成功するために支援しなければならない」

トランプ大統領は変わったのか

新型コロナウイルス問題でトランプ大統領が変わったのか、あるいは同大統領を見る目が変わったのかだが、かつてビル・クリントン大統領の選挙参謀をした政治評論家のディック・モリス氏は前者だと言う。

「彼(トランプ大統領)はもはや批判する者や政敵を攻撃する古代ローマの剣闘士ではない。困難な課題に対処する組織をまとめる有能なマネージャーの側面を初めて見せた。また彼は民間企業の指導者を招き入れてウイルス対策の薬品の開発に取り掛かった。他人と協調して仕事を進めるようになったー大きな変化だー」(ニュースサイト「ザ・ウエスタン・ジャーナル」より)

新型コロナウイルスは、トランプ大統領の再選の大きな障害になると言われていたが、逆に追い風になるのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。