新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために始まった小中高校の臨時休校で、突然学校に行けなくなった子どもたちは今なにを思うのか。
18歳までの子どもの相談を受け付けている「チャイルドライン」では、休校に関する相談が目立つようになったという。
「チャイルドライン」は、全国39都道府県68団体が活動し、子どもたちの悩みを電話やチャットで受け付けている。2018年度の電話着信数は18万6千件で、1日平均505件に対応しているという。
公式サイトには「かかえている思いを誰かに話すことで、少しでも楽になるよう、気持ちを受けとめます。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えていきます。」と書かれている。
新型コロナや休校で子どもたちの相談はどう変わったのか?どんな内容の相談があるのか?
専務理事の高橋弘恵さんに聞いてみた。
一斉休校の直後から相談があった
――休校に関する相談は増えている?
今現在、一斉休校の要請が出てから直近までの相談内容をまとめているところです。
具体的な件数や相談内容の詳細が分かるのはこれからですが、休校に関する相談の電話はかかってきています。
中には一斉休校の要請があった翌日ぐらいに電話してきた子もいます。休校に関する相談のピークは3月頭ぐらいでしょうか。自分たちがこの先どうなるか明確に示されずに休校が始まったので、特に最初の一週間は不安が大きかったのだろうと思います。
学年末のこの時期は、いつもであれば進路の相談や、進級進学で友達や先輩と分かれるなどの不安からくる相談が目立つのですが、今年はさらに休校が重なったので余計に不安になっているのでしょう。
または卒業式や修了式など、きちんとした区切りがないまま休学になったところもあるので、自分の所属が分からなくなるような不安もあったのではないでしょうか。
――休校の相談が多い年齢は?
詳しいことが分かるのはこれからですが、あらゆる年齢の子どもから電話が来ていると思います。
――どんな相談が寄せられている?
「友達に会えなくなって寂しい」とか、「暇だ」とか、「先生に遭えなくなった」、「卒業式がなくなっちゃった」など様々ですが、それらに怒り、悲しみ、不安を感じているようです。
あとトイレットペーパーがなくなった時期は、買い占めについて怒っている子どももいました。
自分たち子どもは我慢して学校を休んでいるのに、大人は勝手な行動をしていると見えたようです。
――休校ではなく、新型コロナに関する相談は?
自分が感染するのではないかという相談はないようです。
新型コロナがどうなっていくのかが不安などの電話はあります。
――勉強が遅れないか相談する子どもはいる?
「学校の勉強が得意で好きだったのに、それがなくなってさみしい」とか、「親から勉強しなさいと怒られる」という内容はありましたが、勉強する気にならないのではないでしょうか。夏休みの宿題は最終的に先生が確認するものですが、今回の休校の勉強の中には、先生の確認がされないケースもあると思うので、やらなければいけない感じが低いのだと思います。
「震災」の相談より今の「休校」の相談が目立つ理由は…
――これまで特定の相談が急に増えたことはある?例えば震災時はどうだった?
東日本大震災のときは、震災にまつわる相談はあまりなかったんです。私たちは、子どもたちみんな話したいのではないかと思って待っていたんですが、今回と比べたら格段に少ないです。
チャイルドラインは全国39都道府県で68団体が活動をしていますが、今回はどの団体も電話を受ける度に1本2本は休校に関する相談があるような状況です。
――子どもが、震災より休校を敏感に捉えた理由は?
なぜ休校という措置が取られ、なぜ自分たちがこんな状況になっているのかがよく分かってないのではないでしょうか。
大人がちゃんと説明せず勝手に押し付けて、子どもたちはお願いもされていません。自分たちが協力して休まなきゃいけないという状況になってないわけです。
震災の時は、みんなが困っているから自分たちもやらなくちゃいけないという事が、とっても見えやすかったので、子どもたちもボランティアをしたり自主的に動いたのでしょう。自分だけが悲しいとかつらいとか言ってられない、というところが大人と対等だったのだ思います。
今回は全然対等ではなく押し付けられているので、それが怒り、悲しみ、不満などになっているのでしょう。
――今 子どもたちに伝えたいことは?
不安になる思いをさせてしまったけれど、子どもたちに協力してもらって感染拡大を止めようということだと思うので「協力してくれてありがとう」と言いたいですね。
テレビでも、子どもに犠牲になってもらったという意見を聞きましたが、犠牲になってもらうなら「もうしわけない」と言わなくちゃいけないと思います。大人が、経済を止めないために子どもを使うのではなく、社会の一員として協力してくださいと説明するべきだったと私は思います。
保護者のみなさんは、休校で子どもの勉強が送れないか気が気でないだろうが、子どもから勉強に関する相談はあまりないそうだ。
高橋さんによると、今年度末のテストがなくなったことに関する相談はさらに少ないという。
20日、萩生田文科相は、春休み前までの休校の要請を延長しない方針を表明した。突然の一斉休校で子どもが理不尽に感じている悩みが解消するように、新学期を皆で迎えられるようになってほしい。
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