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日本時間3月12日未明、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスについて、世界的な流行を示す「パンデミック」に相当すると発表した。イタリアでは移動制限措置が全国に拡大するなど欧米にも感染が広がり、アメリカはヨーロッパからの入国を制限するに至った。WHOの宣言が遅すぎるとの見方もある中、有事における医療体制のあり方がより重要となる。
「プライムニュース」の今回の放送では、日本医師会会長の横倉義武氏と前外務大臣の佐藤正久氏をお迎えし、国内の状況や今後取るべき対応について掘り下げた。

緊急事態宣言を出すべきか?

 
 
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長野美郷キャスター:
改正新型インフルエンザ等特別措置法が成立し、緊急事態宣言が可能になりました。総理大臣が緊急事態宣言を出すと実施期間と区域が指定され、都道府県知事は「感染症のまん延防止」「医療体制確保」「国民生活安定」についての指示を出せるようになります。現時点ではただちに緊急事態宣言を出す状況にないということですが、いかがでしょうか。

佐藤正久 前外務副大臣:
私は二つの観点から事態宣言を早めに出すことが必要だと考えます
ひとつは、イベント休止や休校などの措置に法的裏付けを持たせること。今はあくまで要請に基づいて行っていますが、これは流行が落ち着いたあと訴訟リスクになる。知事やイベント主催者が訴えられかねない。法的裏付けのもとに国が賠償するシステムを作らなければ、封じ込めの威力が弱くなってしまう。
もうひとつは、地方自治体に裁量権を与えること。地方によって医療レベルや感染状況が違うから、それぞれの状況に合わせて、人権に配慮しながら封じ込めるために必要。

横倉義武 日本医師会 会長
横倉義武 日本医師会 会長

横倉義武 日本医師会 会長:
医療の立場のみから考えれば、今すぐには緊急事態宣言の必要はないと思う。しかし、10ある課題のうちのひとつ、ふたつに有効であるなら、例えばマスクや医療機材の不足に対して知事が命令をできるといった意義があるならば、あり得ると思う。

医療現場でもマスクなど物資の不足が深刻

 
 

長野美郷キャスター:
先月27日、日本医師会は安倍総理に対し要望書を提出しました。5項目に分けられますが、このうち2番目の医療現場における消毒薬やマスクの確保と配備について、現在の状況はいかがですか。

横倉義武 日本医師会 会長:
まだ不足しています。マスクについては政府も一生懸命施策を行っていますが、フェイスガードやガウンといったものも非常に不足しており、困っています。

佐藤正久 前外務副大臣:
サージカルマスクと別に高性能マスクというものがあるが、全般が足りない。特にこのような高性能マスクはほとんど中国が作っています。これがなければ医療現場の医師は怖いと思います。

佐藤正久 前外務副大臣
佐藤正久 前外務副大臣

反町理キャスター:
市販されている普通のマスクは、エチケット的な意味合いが大きく、自分の咳の飛沫を止めるだけという部分がありますが、高性能マスクは入ってくるものも止めるわけですね。すると医師が検査のために検体を採るといった際にも、このマスクがなければいけませんね。これが足りていない?

横倉義武 日本医師会 会長:
全然ありません。本当に政府にどうにかしてほしいところです。

佐藤正久 前外務副大臣:
国内ではなかなか作っておらず、中国からも入ってこないのが現状です。

検査拡大でも「医療崩壊の回避」が重要

 
 

長野美郷キャスター:
3月6日からPCR検査の保険適用が始まりました。現在検査が可能なのは、地方衛生研究所、民間検査期間、PCR検査が可能な医療機関、一部の保健所。医師が直接検査を指示することが可能になりました。
一方、3月6日以前には医師が必要と判断しても検査が行われない事例が相次ぎました。日本医師会が実態調査を行い、12日正午までにこのような不適切事例が170件報告されています。

 
 

佐藤正久 前外務副大臣:
反省すべき点としては、保健所の帰国者・接触者相談センターが24時間体制ではなかったこと。すると例えば、金曜日に肺炎らしき人が病院を受診しようとして、時間がないという理由で月曜日に検査をして、火曜日に陽性が判明する。この間に院内感染が広がるということが起こる。最初の相談センターのところがネックになっている。
あとは、検査対象とするかどうかについての「縛り」。湖北省・浙江省縛り、濃厚接触者縛り、37.5度の発熱縛り、発熱後の4日縛りというものがあり、なかなか医師の判断で動くことができなかった。そこで今回はできるだけ民間に流すため、一般医療機関から帰国者・接触者外来を通さず直接民間の検査可能な医療機関に患者を受け渡すことも準備している。

反町理キャスター:
PCR検査のキャパシティを上げろという声がある。精度の問題もあるが、優先順位の問題として、また医療対応の限界を考えたとき、この数をなにがなんでも上げるということが良いことなのか。検査を受けたい人が受けられるという安心感と、本当に検査が必要な重症者だけに対応することで限界線を超えない持続可能性を担保すること、どっちを取るかという問題については。

 
 

横倉義武 日本医師会 会長:
持続可能性をまず大事にしながら、同時に安心感をどう与えるか。若い人は8割についてはほぼ無症状、もしくは風邪症状だけです。年齢と持病の有無によって、重症化する可能性のある方については予想がついています。妊娠している方も含め、そうした方を重点的に検査していく。

佐藤正久 前外務副大臣:
医療現場が扱うのは新型コロナウイルスだけではなく、他の患者がほとんどです。コロナウイルスによる肺炎より重篤な患者も多く受診しますし、持続可能性を優先するのは当然。重症者に焦点を当てていき、医療現場を崩壊させないようにしなければ。

かかりつけ医が重要な「防波堤」に

反町理キャスター:
最初に電話で相談を受けることになるかかりつけ医や一般の医療機関は非常に重要な防波堤となりますね。

横倉義武 日本医師会 会長:
そうです。

佐藤正久 前外務副大臣:
最初のかかりつけ医と一般病院に国の資源を投入しなければ。自衛隊と同じで、第一線の現場に戦力を集中しなければどんどん消耗します。第一線の地域医療に人・モノを集めるのが大事。

 
 

反町理キャスター:
かかりつけ医と一般病院における目利きで以降の負担量が変わってきて、全体のキャパシティを保てるかという点につながると。

佐藤正久 前外務副大臣:
これは本当にオペレーションの問題です。

(BSフジlive「プライムニュース」3月12日放送)