日常生活の些細なことでイライラ。そのイライラが解消できず、ついには家族や同僚にキレてしまい、自己嫌悪…。そんな経験は、誰しもあるはず。できることなら、スタート地点のイライラを早々に解消したい。

そこで、心理カウンセラーの大嶋信頼さんにイライラの正体と解消法を教えてもらった。

イライラの正体は“ストレスホルモン”のエラー

「人間はストレスがかかると、グルココルチコイドというストレスホルモンが分泌され、ムカッときます。これが『怒り』です」

本来は、瞬間的にグルココルチコイドの分泌量が増え、時間とともに減っていくため、怒りの感情は後を引かないそう。ただし、過剰に分泌されてしまうと、怒りが長引いてしまうこともあるという。

「中には、ストレスがかかった瞬間はグルココルチコイドが分泌せず、時間が経ってから分泌量が増え、そのまま減りにくくなる人もいます。長引く怒りが『イライラ』につながるのです」

過剰分泌のケースも時間差のケースも、イライラしてしまうのは、適切に感情を排出できていない証拠とのこと。大嶋さんは「感覚を正常に戻し、適切にグルココルチコイドが出れば、怒ること自体が減ります」と話す。

心理カウンセラー・大嶋信頼さん
心理カウンセラー・大嶋信頼さん
この記事の画像(4枚)

イライラの原因は、自分自身の感情以外にも考えられるものがあるそう。

「人間には『ミラーニューロン』という神経細胞があり、他者の脳の状態を真似するという性質があります。近くにイライラしている人がいると、過去の似たような経験の記憶が引きずり出され、自分もイライラしてしまうのです」

そして満員電車など、日常的にイライラしている人が多い環境にいると、イライラが溜まって感覚がマヒし、グルココルチコイドが正常に働きにくくなるとのこと。つまり、イライラしないためには、イライラしている人が多い環境を避けることが重要といえそうだ。

「行きたくないランチをパス」がイライラ解消のカギ

具体的に、イライラを解消する術も聞いた。まずは、自分自身の効率が悪く、仕事がうまく進まずにイライラしてしまう場合。

「自分のパフォーマンスを十分に発揮できないのは、ストレスフルな環境に身を置き、感覚がマヒしている可能性が高いです。苦痛な仕事や不快な人間関係でストレスがかかり、イライラして仕事の効率が下がることで、さらなるストレスがかかって自分を責めるという悪循環に陥りやすいのです」

大嶋さんが教えてくれたイライラ解消法は、「不快なことはしない」。

「苦痛な業務を変えることはできなくても、不快な人との会話を避けることはできますよね。ランチタイムに同僚に誘われて、食べたくないものを食べに行くことも、ストレスの原因になりやすいのです。無理しているのであれば、時に断ることも大切」

食べ物はストレスに大きく影響するため、人に気を遣わずに好きなものを食べるだけでも、イライラの抑制につながるのだという。

イライラの種類を測るには「好きな人」を思い浮かべて

続いては、コンビニなどで長蛇の列ができ、なかなか進まない時に感じてしまうようなイライラ。

「周りに多くの人がいる場合は、誰かのイライラを受け取ってしまっている可能性があります。自分自身のイライラかどうか確かめるには、尊敬する人や好きな人を思い浮かべてみましょう。イライラが消えたら、周りの人のイライラをもらっていたということです」

人間は、人の感情をもらっていたことに気づくと、その感情を自動的に排除できるのだとか。つまり、「このイライラは人のものだ」と思うだけで、イライラは解消される。

「好きな人を思い浮かべてもイライラが消えない場合は、今の状況に焦ってしまっていると考えられます。正常な感覚を取り戻すため、呼吸を意識しましょう。頭の中で、自分のペースで『吸って、吐いて』と言うだけでも落ち着きますよ」

「人が話すことは全部ウソだと思いましょう」

家族や上司、部下など、身近な人の言動に対してイライラしてしまう時は、どのように対処するといいだろうか。

「他者にイライラする人の傾向として、相手の些細なウソに反応していることが多いです。相手が真実を言っているかどうかの検証を始めて、その言動が許せなくなり、その矛盾にイライラしてしまうのです」

例えば、夫婦ゲンカをして、「私だって忙しい」と主張する妻が、昼間は寝転がってテレビを見ている事実を知っていると、夫はイライラしてしまうだろう。まさにウソが原因だ。

「真実を突き止めようとすると、相手はウソを重ねるので、余計にイライラが募ります。だから、人が話すことは全部ウソだと思いましょう。『人は1日に200回ウソをつく』といわれています。ウソか本当か検証せず、ウソだと思うと、気がラクになるはずです」

最初は思うように解消できないかもしれないが、少し意識や環境を変えるだけで、イライラとおさらばできる。イライラから逃れることができれば、感覚が正常に戻り、怒りそのものが減っていく好循環を生み出せるだろう。


大嶋信頼
株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニック他に勤務する傍ら東京都精神医学総合研究所の研修生として依存症に関する対応を学ぶ。著書に、『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる本』『ちいさなことにイライラしなくなる本』など多数。

インサイト・カウンセリング: https://insight-counseling.com/

取材・文=有竹亮介(verb)

【関連記事】
怒りっぽい人ほど「孤独」? 怒りを抑制するには“気づき”が必要

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。