方向性が見えて少し安心
この記事の画像(5枚)新型コロナ肺炎の特徴が少しずつ明らかになってきた。感染力が強いのかと思っていたのだが、実は健康な若者は発症しても軽症であることが多く、そのために知らぬうちに感染を拡大してしまっていた、ということがわかった。もう一つSARSなどに比べ致死率は低いと言われていたが、インフルと違って治療薬がないため高齢者は重篤化することが多い、ということ。
つまり若者を中心に濃厚接触を避けることと、病人や高齢者にはうつさないこと、この2つが大事なようだ。
で、対応策として、日本政府が小中学校の休校や大規模イベント自粛などを打ち出し、少なくとも方向性が見えてきたことで、いろいろ不安に思っていた僕はこのコロナ肺炎騒動が始まって以来初めて少し落ち着いた。株価がようやく下げ止まったのもその「安心感」ではないか。
小中学校は休校で、幼稚園、保育園、学童クラブは継続、という政府方針についての評価は分かれるだろう。国会では「保育所が学校より感染リスクが低い疫学的根拠は?」などと頓珍漢な質問をした議員がいたが、別にリスクは小学校も保育園も同じだ。むしろ保育園の方が濃厚接触しているので高いかもしれない。
だから保育園なども全部休みにすればリスクは最も低くなる。でもそうすると共稼ぎやひとり親が働けなくなり相当な混乱を招く。だから政府は小学校と保育園の間で線を引いたのだ。リスクはゼロにはできない、でもなるべく低くしたい、ということだ。
同じように「小中学校を休校にしても親が満員電車で通勤したら意味がない」と言う人がいるが、満員電車を禁止することはさらに混乱を巻き起こすし、たぶんできない。 だからイベントの自粛などにとどまっている。
クラスター封じ込めはやる意味がある
政府の専門家会議の副座長である尾身茂氏によると、2009年の新型インフルで日本だけがケタ違いに致死率が低かった。これは感染症の歴史で例がないことで、なぜそれができたかというと、当時の橋下大阪知事と井戸兵庫知事が批判を恐れず学校を強制的に休校にしたことが最も効果的だったということだ。
だからクラスターを封じ込めるという、安倍政権の作戦は、少なくともやってみる価値はあると思う。それを「効果がないからやめろ」と声高に叫んでいる人たちはもしこれをやらずに感染が拡大したら責任を取ってくれるのだろうか。
国民の不安をあおっているのは誰だ?
国会では「なぜPCR検査ができないのか」「なぜマスクがないのか」と政府を責める質問が相次いだが、検査で陽性とわかっても症状が軽ければ家で寝てればいい。むしろ軽症者が病院に殺到する方が危ない。マスクが売ってなければ自分で作ればいい。そんなにキーキーいう話ではないのに国会議員が騒ぐと結果的に国民の不安をあおることになると思う。
新型コロナウイルスは怖いが、乗り越えられるものだと思う。むしろたとえ善意であれ、あるいは一生懸命であれ、大騒ぎして人々を扇動し、間違った方向に向かわせるような言動こそウイルスよりはるかに怖いのではないだろうか。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【表紙デザイン:さいとうひさし】