「県民投票はどういうものなのか感じてほしい」
沖縄県の県民投票の実施に向け、署名を呼びかける街頭活動の様子をとらえた写真を撮影したのは、投票の実現を願い奔走した25歳の若者だった。
栄町市場の一角、「ひめゆりピースホール」で写真展の準備を進めるのは、普久原朝日さん(25)。
写真家・普久原朝日さん:
本当に、いろんなことがあった1年だったなって思いますね
普久原さんは、県民投票の実施に向け奔走した日々を写真で記録してきた。そして2月、当時の活動を記録した写真の展示会を開く。
写真家・普久原朝日さん:
県民投票というのはどういうものなのかというのを、写真を展示して見に来る人たちに感じて欲しいなという思いがあって
“「辺野古」県民投票の会”の活動を記録
2019年、基地問題に揺れる沖縄で、名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を実施しようと、若者や弁護士などの有志が「『辺野古』県民投票の会」を結成した。
静岡の大学を卒業し、沖縄に戻ってきた普久原さんは、「『辺野古』県民投票の会」の元代表・元山仁士郎さんの誘いを受け、一緒に活動を始めた。
写真家・普久原朝日さん:
(県外にいた時に)沖縄に対して無理解な言葉とか、すごい冷たい言葉とかを(SNSで)見たときに、何もすることができなかったという悔しい思いがあって。実際、沖縄にいて、目の前で起きていることに対して、自分はずっと昔から写真を撮っていたので、写真で何かできるんじゃないかって思って
県民投票に必要な署名を呼びかける街頭活動や、機運を高めるために開いた数々のイベント。
投票日まで2カ月を切っても5つの市町村が不参加を表明する中、全県での実施を求め、ハンガーストライキを行う元山代表の姿などを記録するため、普久原さんは夢中でシャッターを切った。
写真家・普久原朝日さん:
本当だったら、こういう活動をしなくて済むような世の中だったらいいんですけど、だけどもせざるをえない状況。今振り返ってみると、あのときこういうのがあったんだなっていう記憶がよみがえるので、撮っていて良かったなって思います
こうした行動は実を結び、2019年2月24日、県民投票が実施された。投票総数の7割を占めたのは、辺野古の埋め立てに反対する声。
しかし、投票の結果を受けても、政府は民意を一顧だにせず、辺野古沿岸部へ土砂の投入を続けている。
「会話するきっかけに」…展示会を開催する思いとは
写真家・普久原朝日さん:
この状況を本土の人たちはどう思っているのかなって、もう本当に率直に聞きたいですね。これでいいんですか皆さんって。どこか、ひとごとだったりするんですよ
普久原さんが感じているのは、沖縄と本土の「温度差」。沖縄テレビが、移設問題をはじめとする沖縄の基地問題についてどれくらい知っているか本土の若者に尋ねた。
県外の若者:
学校の教科書に(基地問題が)小さいトピックみたいな感じで載っていて、そうなんだと思って。行ったことはないですけど
県外の若者:
(基地問題は)難しいというのと、東京にずっといると、あんまり自分のことのように思えなくなっちゃう。批判はあると思うんですけど
そんな中、写真展の開催に向け普久原さんを突き動かしたのは、「県民投票をなかったことにしたくない」という思いだった。
写真家・普久原朝日さん:
有名人でもないような、どこにでもいる普通の人たちが、こんだけ県民投票に関する場にいたし、県民投票って特別なものではなくて、みんなにとっての県民投票なんだよっていうような。その時を振り返って思い出して、会話をするきっかけになってほしいなと思います
普久原さんは、この写真展を沖縄だけでなく、2020年4月に東京でも開く予定で、移設問題について本土の人たちにも考えてもらうきっかけにしていきたいとしている。
(沖縄テレビ)