急浮上した副大統領候補

あのヒラリー・クリントン元国務長官が、米民主党の副大統領候補として急浮上してきた。

米政界の裏話をスクープすることで知られるニュースサイト「ドラッジ・レポート」が15日に伝えたもので、大統領選に立候補している元ニューヨーク市長で億万長者のマイケル・ブルームバーグ氏陣営がクリントン元長官を副大統領候補として検討しているという。

ブルームバーグ氏(左)とクリントン氏(右)
ブルームバーグ氏(左)とクリントン氏(右)
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この情報は直ちにケーブルニュースやタブロイド紙に拡散したが、ブルームバーグ選対の報道部長のジェイソン・シェクター氏は「我々は今予備選や候補者討論会に集中していて副大統領については検討する時期ではない」と質問をかわしたが否定はしなかった。

一方のクリントン元国務長官もかねて今回の選挙に関わることには意欲満々で、6日NBCで放送されたインタビュー番組で、副大統領候補に誘いを受けた場合について訊かれるとこう答えていた。

「私は、何事でも絶対にないとは絶対に言わないの。国のために尽くすことが第一だから。でもそれはないわよ」

潤沢な資金と集票力に期待?!

また、ドラッジ・レポートはブルームバーグ氏が住居地を別荘のあるコロラド州かフロリダ州に移すことを考えているとも伝えている。というのも、合衆国憲法は「大統領及び副大統領は同じ州の住民であってはならない」(修正第12条)と定めており、ブルームバーグ氏もクリントン元国務長官もニューヨーク州の住民なのでこの条項に抵触するからだ。

ブルームバーグ陣営は世論調査の結果、クリントン元国務長官との組み合わせが最も支持があったこととされるが、民主党の大統領候補選びで民主党員ではなく無所属で左派のバーニー・サンダース氏が初戦の2州を制して勢いをつける中で、中道派は選挙資金が潤沢なブルームバーグ氏と、前回の大統領選でトランプ大統領より280万票多く得票したクリントン元国務長官の組み合わせに期待をかけているのかもしれない。

さらに、クリントン元国務長官がファーストレディ時代に特別補佐官をして元長官の信望が厚いとされるカプリシア・マーシャルさんがブルムバーグ陣営に加わったことが伝えられ、副大統領候補指名に向けての地ならしが始まったのかとも受けとられている。

クリントン元長官の「ロシア疑惑」はマイナス

その一方で、クリントン元国務長官については、前回トランプ陣営の「ロシア疑惑」を捏造したという疑いが今も司法省によって捜査されていることもあり、トランプ陣営からの厳しい追及は避けられないという見方もある。

「これほどトランプと支持者達にとってハッピーな話はない。ヒラリー・クリントンやりなさい。そして我々を幸せにしてもらいたい」
保守の論客キャンディス・オーウェンズさんはこうツイートした。

オーウェンズさんのツィートより
オーウェンズさんのツィートより

二人の組み合わせが実現するかどうかは定かではないが、ここへきてクリントン元国務長官の存在感だけは高まってきた。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。