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ダイヤモンド・プリンセス号の隔離対応について世界からも批判の声があがる中、乗客に死者が出るなるなど、事態は深刻化している。今後の焦点が「国内感染」の拡大阻止に移る中、これまでに得られた教訓をどう活かし対策するのか。ナショナルセキュリティの観点から、これまでの日本の対応とこれからの解決が急がれる課題を考える。スタジオに識者を迎え、徹底議論を行った。

「危機意識が日本全体に薄い」

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長野美郷キャスター:
感染拡大の現状についてどう見ていらっしゃいますか?

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
新しいタイプの感染症に対する法体系や組織、それらをどう運用するか。初めてのことであり対応が追いついていない。新型感染症は、国家レベルのナショナルセキュリティという観点で対応していかなければ後手後手になってしまう。

反町理キャスター:
これまでのダイヤモンド・プリンセス号の検疫・管理の評価は?

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
後手後手になっている。そもそも、感染症というものに対する危機意識が日本全体に薄い。自民党で配られた組織図には2月5日時点で防衛省が入っていなかった。ナショナルセキュリティの問題だという意識に達していなかったということ。その後防衛省が入った。
もしもクルーズ船対応を自衛隊が全部行うとなれば、乗客・乗員のうち乗員をまず入れ替える。1,200人の乗員がいるが、米軍施設もあり対応できる。乗客は個室にいればよいが、乗員はサービスのために船内を動く。生活環境も相部屋であり、感染して感染を広げる可能性が高いのが乗員。下船させて隔離して入れ替え、その部分を自衛隊が対応する。

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授 加來浩器氏:
この船が100人規模の日本の船ならば乗員を下ろす対応は十分できたと思うが、3,000人を超える規模の外国の船であり、対応は難しかったのでは。現実的な方法を考えて苦肉の策だったのでは。

笹川平和財団上席研究員 小原凡司氏:
私も乗員は入れ替えるべきだったと思う。

船の運営会社は米・船籍は英…不明確な指揮系統で混乱か

反町理キャスター:
初動対応で乗員を下船させるという選択肢が考えられたときに、日本政府がその要求や交渉を行ったという経緯はあるんですか? したのであれば、なぜ下船させられなかった?

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
交渉はあったと思う受け入れ施設の問題と、運営会社の反対があったという可能性がある。法的には、運営会社が下船させないと言えば下船させることはできない。

反町理キャスター:
もともと運営会社がアメリカ、船籍がイギリス。しかしアメリカやイギリスのメディアは「日本の対応がけしからん」という論調。おかしいですよね?

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
おかしい。私も非常に不満に思う。今回は船の運営会社がアメリカ、船籍がイギリス、検疫を行うのが日本、ここの分担をどうするか国際協議で決めていかなければならない。日本があまりにも全部に対応している状況。

反町理キャスター:
現在のダイヤモンド・プリンセス号においては、司令官にきちんと情報が集約されて、船内の自衛隊医務チームやDMAT、厚労省のスタッフはこう動いている、乗客はここにいて乗員はこう動き……と管理された組織になっているんですか? 船の中の指揮命令系統が見えない。

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
スペースもないあの船でそれをできるはずがない。本来は大きな部屋にコンピューターを持ってくるなどして、全てを可視化しなければいけない。通常、現地対策本部は外に作る。内部にいては岡目八目ができないから。外から冷静に専門家がみて改善していかなければならないが、そんなスペースは船の中にない。

笹川平和財団上席研究員 小原凡司氏:
佐藤さんのおっしゃる通り、オペレーションについては自衛隊が指揮をとるべきだった。副大臣などの下で動くのは当然だが、現場でのオペレーション自体を理解しているのが自衛隊。自衛隊の動いている部分ではゾーニングもできている。他の動きにおいてできていない可能性があり、それでは片手落ちとなってしまう。

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授 加來浩器氏:
自衛隊にその対応ができるかという点では、医官がきちんと対応できるかどうかという問題がある。残念ながら十分な人員がいない。もちろんトレーニングはしており、若い医官を育てています。しかし、急遽人員を充当できるような余裕があるような組織ではない。これが大きな問題。

中国全土からの入国制限など、今後とるべき対応とは

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
感染者数のピークの高さを抑えるためにも、日本人を除く外国人の中国からの入国を止めるくらいの対応にしなければ。五輪も控えているし、後手後手の対応になると、日本から来る人の入国禁止までになってしまう。

笹川平和財団上席研究員 小原凡司氏:
個人的にはそのほうがいいと私も思います。一昨日までオーストラリアに出張していましたが、やはり日本の対応は甘いと言われている。日本は感染を食い止められていないと思われないように、エビデンスがあるならばそれを発信すべき。

反町理キャスター:
対中国の経済的な面に配慮したとも見える今回の初期対応はやはり誤っていた、危機管理に失敗したのでは?

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
甘かったと思う。感染症に対する危機意識が、政治家も役人も国民の皆さんもみんな低い。危機管理の施策を大きく行ってから状況を見て下げていくのか、小さく行ってから上げるのか。一長一短だが、今回とった後者の方法は初動の失敗にみえる

笹川平和財団上席研究員 小原凡司氏:
日本で一般的に見られる考え方だが、ただ対処していく、対症療法だけを行う。軍事や安全保障をタブー視してきた日本の問題点。これはどういう問題で何をしたいのか、ということを考えなければ。これがパンデミックならば各国と協力して抑え込まなければいけない。その認識が各国とずれていて、「日本は感染側だ」とみなされた場合のダメージは計り知れない

前外務副大臣 元陸自化学科隊員 佐藤正久参院議員:
現場は一生懸命だが、危機意識がずれていると空回りしやすい。せっかく行っている対策も外にうまく伝わらない。

(BSフジLIVE「プライムニュース」2月21日放送分)

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