勝者なきニューハンプシャー予備選

そして誰も勝てなかった・・
11日に行われたニューハンプシャー(NH)州の民主党予備選では、明確な勝者はいなかった。

得票率ではトップのバーニー・サンダース氏(25.7%)だが、最大のライバルであるピート・ブティジエッジ氏(24.4%)とはわずか1.3ポイント差でしかなかった。出身州がお隣という地の利を生かして大差で勝ち、ブティジエッジ氏を突き放したかったはずなので、勝った気分にはなれないだろう。獲得代議員数も9人で同数なのでなおさらだ。

(関連記事:アメリカ大統領選挙 民主党の代議員獲得数が一目でわかる最新情報)

ブティジェッジ氏(左)とサンダース氏(右)
ブティジェッジ氏(左)とサンダース氏(右)
この記事の画像(6枚)

しかも、前回2016年のNH州予備選では、事実上のヒラリー・クリントン氏との一騎打ちだったという構図の違いはあるが、サンダース氏の得票率は60.4%で、38.0%のヒラリー氏に22ポイントもの大差で圧勝を果たしている。それと比べると今回の得票率25.7%は冷や汗ものとしか言い様がない。

一方のブティジエッジ氏も、首位に僅差の2位とはいえ、喜んではいられない。3位で同じ中道派と目されているクロブシャー氏が19.8%の得票を得て、4.6ポイント差に迫られたからだ。ブティジエッジ氏はNH州で党内中道派の候補者として抜きん出たかったはずだが、そうはならなかった。中道派の中にはブティジエッジ氏には乗れない人たちが相当数いて、彼らはクロブシャー氏を支持したと考えられる。

クロブシャー氏(左)とウォーレン氏(右)
クロブシャー氏(左)とウォーレン氏(右)

また、投票前の支持率調査では、11%前後で並んでいたクロブシャー、ウォーレン、バイデンの3氏の結果分析も興味深い。勢いを失いつつあるウォーレン氏(9.2%)から離れた票はリベラルのサンダース氏ではなく同じ女性候補のクロブシャー氏に向かったと考えられる。さらに明らかなルーザーとなってしまったバイデン氏(8.4%)を見限った票もブティジエッジ氏には行かずクロブシャー氏へと流れたと考えられる。

バイデン氏は撤退か・・・

バイデン氏
バイデン氏

こうしてみるとニューハンプシャー州の民主党予備選では誰も勝ったとは言い難い。一気に勢いを増した候補者もいない。しかし、ウォーレン氏の低迷は明らかだし、なによりもバイデン氏は支持者と一緒に開票結果を見守ることもせず、29日に予備戦があるサウスカロライナ州へ向かった。巻き返しを期するためではあるが、要するにNH州の結果から逃げ出したのだ。有権者はこういう行為は見逃さない。バイデン氏は典型的な撤退パターンに追い込まれている。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】
【表紙デザイン+図解イラスト:さいとうひさし】

「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
風間晋
風間晋

通訳をし握手の感触も覚えていたチャウシェスクが銃殺された時、東西冷戦が終焉した時、現実は『過去』を軽々と超えるものだと肝に銘じました。
「共通の価値観」が薄れ、米も中露印も「自国第一」に走る今だからこそ、情報を鵜呑みにせず、通説に迎合せず、内外の動きを読み解こうと思います。
フジテレビ報道局解説委員。現在、FNN Live news α、めざまし8にレギュラー出演中。FNNニュースJAPAN編集長、ワシントン支局長、ニューヨーク支局記者など歴任。