ブティジェッジ氏猛追“本命”候補「カムバック・キッド」なるか

アメリカ大統領選挙に向けた民主党候補者指名争いの2戦目、ニューハンプシャー州予備選が11日、行われる。初戦のアイオワ州とともに、ここで勝利すれば今後に向けて大きな弾みがつくことから、各候補がしのぎを削っている。1992年の選挙戦では、ビル・クリントン氏が初戦で3位と出遅れながらもニューハンプシャー州で巻き返し、その後の指名獲得につなげたエピソードは「カムバック・キッド」と呼ばれ、広く知られている。初戦で出遅れた候補者は、ここでの再起を狙う。

ニューハンプシャー州での最新の世論調査によると、1位はサンダース上院議員で、初戦で勝利した「新星」ブティジェッジ前サウスベンド市長が猛追する展開だ。また、全国支持率でトップの「大本命」バイデン前副大統領は4位と出遅れている。

ニューハンプシャー州の最新支持率(リアルクリアポリティクス ※敬称略)
1位 サンダース 28.7
2位 ブティジェッジ 21.3
3位 クロブシャー 11.7
4位 ウォーレン、バイデン 11.0

各陣営が支持拡大に躍起 豪華キャストも続々!

一躍、時の人となったブティジェッジ氏は、主要メディアに相次いで出演し、空中戦を展開。集会には、「支持を決めていないが、注目が集まっているので話を聞いてみたい」という多くの人々が訪れた。9日の集会では、約1800人が長蛇の列を作り、会場内に入れない支持者が抗議する一幕もあった。さらに、集会には映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でおなじみの俳優、マイケル・J・フォックス氏が登場。同氏はパーキンソン病を患っているが、持病をものともせず、ブティジェッジ氏への支援を呼びかけた。

ブティジェッジ氏支持を呼び掛けるマイケル・J・フォックス氏
ブティジェッジ氏支持を呼び掛けるマイケル・J・フォックス氏
この記事の画像(7枚)

資金の多くを序盤戦に投入したとされるブティジェッジ氏にとっては、ニューハンプシャーで勝利し、その後につなげたい狙いがある。理由は、黒人からの支持を得られておらず、バイデン氏の支持基盤ある黒人が多いことから同氏の“ファイアウォール(防火壁)”とも称されるサウスカロライナ州では苦戦が予想されているからだ。また、全国での支持率でみると5位に留まる。ブティジェッジ氏と同様、初戦で勝利し指名獲得に繋げたオバマ前大統領と比べると同氏の選挙戦は「盛り上がりに欠ける」という指摘もある。

一方、バーモント州選出のサンダース氏にとって、隣接するニューハンプシャー州はいわば“裏庭”とも言える地域。初戦アイオワで優勢と伝えられながらも勝利を逃したサンダース氏は、どぶ板の選挙戦で巻き返しを狙う。9日の集会は、若者を中心とする熱狂的な支持者らが詰めかけ、会場を急きょ、2か所に分ける盛況ぶり。演説では早々にブティジェッジ氏を名指しして「企業家や富裕層から多くの寄付を集めている」と批判し、格差是正を訴えた。躍進するブティジェッジ氏を“ライバル”とみなし、対決姿勢を鮮明にした形だ。

サンダース氏の集会には熱狂的な若者が多く集まる
サンダース氏の集会には熱狂的な若者が多く集まる

また、映画「ショーシャンクの空に」の主演俳優、ティム・ロビンス氏がサプライズで登場。「サンダース氏こそがダイバーシティを実現している」とアピールし、会場を湧かせた。

サプライズ登場した俳優ティム・ロビンス氏
サプライズ登場した俳優ティム・ロビンス氏

4位のウォーレン上院議員に同行するのは、ゴールデンリトリバーの愛犬「ベイリー」。ウォーレン氏の“懐刀”として、支持者らとの写真撮影に応じる。集会で支持者から「トランプ大統領にはペンス副大統領がいる。あなたにとっての副大統領は?」と質問が飛び出すと、ウォーレン氏「私はすでに犬を飼っている」とトランプ大統領を揶揄する一幕もあった。

”看板犬””ベイリーとの写真撮影にも多くの人が集まる
”看板犬””ベイリーとの写真撮影にも多くの人が集まる

本命不在で大混戦“ダークホース”は…大富豪も急浮上

7日に行われたテレビ討論会で、世代交代を訴えるブティジェッジ氏に対し、「言うは易く行うは難し」と冷静にいなした中道派のクロブシャー上院議員は、最新の世論調査で3位に急浮上。中道派の代表格、バイデン前大統領がのび悩んでいることから、支持者の票の一部がクロブシャー氏に流れているものとみられる。苗字と「モーメンタム(勢い)」という単語を繋げた「クロメンタム」という造語が話題になるなど、“ダークホース”として存在感を急速に高めている。10日の支持者集会には大手メディアが殺到する中、FNNの直撃取材に応じ、日本を含む同盟関係について「独裁者とではなく、アメリカの同盟国と連携していく」と述べ、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に応じるトランプ大統領を批判した。前回の選挙でトランプ大統領を勝利に導いた中西部を地盤とする中道派の女性候補であることから、主要候補の副大統領としても適任との指摘も上がっている。

FNNの単独直撃に応じるクロブシャー上院議員
FNNの単独直撃に応じるクロブシャー上院議員

また、初戦の4州を捨て、3月の「スーパーチューズデー」に集中するという異例の戦略で選挙戦に臨む世界9位の大富豪・ブルームバーグ前ニューヨーク市長にも大きな注目が集まる。バイデン氏の情勢次第では、ブルームバーグ氏に中道票が流れ込む可能性があるからだ。全国の世論調査で4位に浮上していることも見過ごせない。

選挙戦は各候補の支持が拮抗する大混戦状態で、いつ誰が“時の人”となってもおかしくない情勢だ。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】

「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
瀬島 隆太郎
瀬島 隆太郎

フジテレビ報道局政治部 元FNNワシントン支局