全国からの火をひとつに集め…

東京パラリンピックの開幕まで、2月7日で200日。
大会組織委員会は、8月に全国で実施するパラリンピック聖火リレーの採火の会場や方法などを発表した。

オリンピックの聖火は、古代オリンピック発祥の地:ギリシャ・オリンピア市にある神殿跡で、巫女が凹面鏡で太陽光を集めて採火する。
それに対しパラリンピックは、イギリスと、日本の700を超える市区町村で採火を行い、開催地・東京に集める。
そうして火が1つになり、聖火が誕生する。

日本各地での採火方法も様々だ。
広島市では、平和記念公園の「平和の灯」、岐阜市では鵜飼の篝火から火を採るなど、自治体ごとに、歴史や伝統を踏まえた独自の手法となっている。

縄文時代の道具で火おこし

約700の自治体で特に多かったのが、古代の火起こし道具を使った採火だ。
縄文時代からの手法で、木をこすり合わせ、摩擦による熱から火を起こす。

提供「平塚市博物館」
提供「平塚市博物館」
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青森県では、世界遺産登録を目指している県内複数の縄文時代の遺跡が、採火や集火の会場となり、小・中学生らが縄文服を着て、火を起こす計画だ。
市の担当者からは「簡単にはいかず、リハーサルが必要かも…」との声も。
神奈川・平塚市の博物館には、「いつまで経っても火がつかない」との相談があるという。

平塚市博物館・古代生活実験室の学芸員;
回転スピードなどコツをつかめば、早ければ30秒程で火が起こせる。
一番大事なのは、火がつくと信じることです

提供「平塚市博物館」
提供「平塚市博物館」

他には太陽光や、石を打ち合わせて採火を行う自治体もあったが、古代の手法ばかりではない。

窯や海女小屋…地域の特色を生かした手法も

パラリンピックの採火は、8月13日から実施されるため、お盆の法要行事で使用したロウソクの火(宮城県亘理町)や、大文字焼き(秋田県大館市・栃木県佐野市)、花火から採火するなど、お盆や夏の時期ならではの採火方法もあった。
お盆に成人式を行う自治体もあり、新成人による採火も各地で行われる予定だ。

また、各自治体の特色を生かした手法も多い。
陶器の産地・栃木県益子町では、登り窯の火
多くの海女が活躍する三重県志摩市では、漁を終えた海女が暖をとる「海女小屋」の火場から採火を行うという。

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「地域の魅力を生かした方法で、情報発信できるいい機会」と期待をこめる自治体も多い。
他にも、金属リサイクル製錬所の製造過程で生じる火(秋田県小坂町)、宇宙センターの燃焼実験で発生した火(宮城県角田市)を使った採火など、ユニークで、様々な手法が計画されている。

共生社会実現への願いを込めて…

また、パラリンピックでは、多様性が重視されている。

神奈川県では2016年、障害者施設で45人が殺傷された事件があった。
当該施設がある相模原市をはじめ、県内の全市町村で「ともに生きる社会かながわ」憲章の下、共生社会実現への思いを込め、採火が行われる。

新潟県柏崎市では、ロボットを使った遠隔操作による採火で、病室から出られない子供たちが参加できるよう、検討が進められている。

障害者と健常者が一緒に、採火を行う自治体も多い。
大会組織委員会は、全国の人たちに色んな形で参加してもらい、大会の盛り上げに繋げたい考えだ。
今後さらに、参加する自治体が増える可能性もあるという。

 
 

パラリンピックの聖火リレーは、競技を開催する静岡・千葉・埼玉・東京の4道県の実施に限られているが、全国の参加者それぞれの思いが込められた聖火は、8月25日、国立競技場に届けられ、聖火台に灯される。

(フジテレビ報道局経済部 酒井志帆記者)

酒井 志帆
酒井 志帆