日本企業への影響が拡大

新型コロナウイルスの感染拡大が、日本企業の経済活動に影響を及ぼしている。
2月4日までに、適時開示情報などで影響や対応を発表した上場企業は10社。民間信用調査会社「東京商工リサーチ」の調査によると、自主的な情報開示はないが、何らかの対応が判明した上場企業は31社。
合わせて41社の上場企業が、新型コロナウイルスの影響を受け、対応に追われていることがわかった。
以下のグラフは、その対応の内訳をまとめたものになるが、41社のうち「工場の操業停止・休業延期」が21社と、「渡航禁止・帰国指示」に並びトップだった(1社で複数回答あり)。
感染拡大により春節に合わせた連休を延長し、生産ラインをストップした企業が目立った結果となった。

提供:東京商工リサーチ
提供:東京商工リサーチ
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東京商工リサーチによると、そもそも日本から今回の発生源となった中国・武漢市には39社が進出していて、拠点は45カ所に展開している。
45カ所の拠点うち、産業別のトップは製造業(22拠点)。自動車や自動車部品、大手電機などの有力メーカーが武漢に製造拠点を構えている。

提供:東京商工リサーチ
提供:東京商工リサーチ

製造業は、安価で豊富な労働力を求めて、生産拠点を中国に求めたケースが多い。
その分、工場の操業停止によって、サプライチェーン(部品供給網)に影響が出ることが懸念されている。

日本商工会議所の三村会頭(日本製鉄名誉会長);(1月30日 定例会見)
長期間にわたった場合、日本に与える影響はサプライチェーンの問題が大きい。
サプライチェーンの一環を占めている中国からの色々な輸出を考えると、大きな影響を与える。
「いつ終焉するのか」という期間の問題が非常に大きい

日本商工会議所 三村会頭(1月30日)
日本商工会議所 三村会頭(1月30日)

現地工場の労働者 勤務再開遅れると待遇問題も

勤務再開が先送りされていることで、労働者の待遇についても混乱が起きているようだ。
中国専門の日系コンサルタント企業には、その期間をどう処理するべきか、中国に拠点を構える日本企業から多くの質問・相談が寄せられているという。
大多数の省や市では具体的な指示が出ていないものの、広東省や福建省厦門(アモイ)市では以下の対応方法が示されていることなどを企業に説明している。

広東省
「2 月3日から9日までの間、企業は労働契約で約定した基準で給与を支給しなければならない」

福建省厦門市
「企業の生産停止が一給与支給周期(通常は一か月)以内であれば、雇用者は労働者が正常労働を提供する場合の給与を支給しなければならない。
一給与支給周期を超え、雇用者が仕事を手配できる場合は、双方で新たに約定した給与を支給する。
仕事を手配できない場合は、当地当年度の最低賃金を下回らない基準で生産停止の手当を支給しなければならない」

正式な指示の出ていない都市でも、このような対応が一つの基準となりそうだ。

現状では、新型コロナウイルスの感染は収束の気配が見えてこない。
操業停止期間が長期化すれば、企業の生産活動への影響だけでなく、労働者の待遇面の問題も大きくなりそうだ。
いずれにしても一刻も早い収束が期待される。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者