安住氏が国会内に張り出した新聞記事への「くず」「論外」論評

1枚のドアに張られた、衆議院予算委員会での質疑を取り上げた新聞6社の記事のコピー。これは2月4日午前、国会内にある立憲民主党など野党の控え室のドア外側に張り出されたものだ。

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野党の国会での追及を扱った記事には、花丸が書き込まれている一方で、「自民党に存在感」と伝えた紙面は「論外」と断じたほか、「くず」「0点」「出入り禁止」という言葉も。ドアは開けられていたが、廊下を通る政治家、秘書、記者、官僚など誰もがこの書き込み付きの記事を見られる状態だった。

これらの文字を書き込み、紙を張り出すのを主導した人物こそが、この部屋の主にして野党の国会対策の責任者、立憲民主党の安住淳国対委員長だった。張り出しは30~40分程度で撤去したというが、批判を受けた安住氏は4日夕方にカメラの前で釈明した。

安住氏が釈明「冗談」と強調したが…

「ちょっと調子に乗りまして…」「ほんの冗談のつもりでしたけれども…」

いつもは厳しい表情と強い口調で安倍政権を批判しているが、この日は記者団から批判される側にまわり、落ち着きがなく、目も泳いでいるように見えた。そして次のように述べた。

「どうも申し訳ありませんでした。以後気をつけます。自民党の政調会長の記事だけをほとんど書いて、我々の、頑張って取材したものはほとんど無視されてたんで、なんだっていう話になってまして、それで、私がちょっと思わずペンを走らせてしまった。感情の起伏が出てしまったことを反省しております」

元NHK記者の安住委員長だが、新聞の国会審議に関する記事、特に野党の取り上げ方に思うことがあり、それが誤った形で噴出してしまったという説明だ。そして、すべて”冗談“のつもりだったと。

しかし、野党に好意的でない新聞だけをとりあげて「くず」「論外」などと論評し、記者などから見えるところに貼り出すことは批判の封殺、メディアへの圧力と受け取れる行為だ。果たして“冗談”で済まされるものだろうか。

一夜明けた安住氏の物言いは…

そして一夜明けた5日午前、安住氏は野党の国対委員長会談を受けて、記者団の取材に応じた。そして前日に安倍首相が野党議員を嘘つきだと批判したことについて問われ、次のように述べた。

「私もミスショットはしてるんで、偉いことは言えませんけれども、これあの委員会の中で、テレビの中でやってる話なので、テレビの中でいずれ総理にはきちっと謝罪をしてほしい」

一夜明けた5日午前
一夜明けた5日午前

安住氏はまた、前日の自らの行為に関して「壁は壁としてちゃんと使うので、他のことで使わないようにということで、大変申し訳ありませんでした」と述べたほか、午後の国会対策関係の議員が集まった会合では次のように挨拶した。

「私も十分ですね、いろいろ気を配って口にも気をつけてですね、日々過ごしていきたいと思いますので、よろしくお願いします」

このように今回のことを自虐的に語って笑いを誘いつつ、“冗談”として批判をやり過ごしたいという気持ちがにじんだような言葉を繰り返した。

野党内からも批判が続出、背景に安住氏の“上から目線”も

しかし野党はこれまで、安倍首相や自民党がメディアに圧力をかけているなどと批判してきた経緯がある。それだけに安住氏の今回の行為には野党内からも厳しい声が相次いでいる。安住氏の上司にあたる立憲民主党の枝野代表はラジオ番組で「ちょっと調子にのったかなと思いましたので、私から注意させていただきました」と述べた。

また国民民主党の玉木代表も会見で、「調子に乗りすぎていると、野党全体が国民から出入り禁止を受ける」と、安住氏の行為の影響が野党全体にまで広がることへの危機感を示した。

国民民主党の玉木代表の会見
国民民主党の玉木代表の会見

さらに立憲民主党の山尾志桜里衆院議員はツイッターで「自分が立憲民主党所属であることが恥ずかしいレベル。議員が幹部に物言わない党内文化が引き起こした結果でもあるから、自分自身も恥じてます」と綴った。

立憲民主党の山尾志桜里衆院議員のツイッター
立憲民主党の山尾志桜里衆院議員のツイッター

安住氏は、昨年の臨時国会から野党の国会対策の責任者となり、「桜を見る会」や「閣僚らの政治とカネをめぐる疑惑」で安倍政権を徹底追及する陣頭指揮をとってきた。その結果、一定の結果を出すなど、安住氏のリーダーシップを評価する声も多く聞こえる。

一方で、“上から目線”とも指摘される安住氏の態度に不満を抱く議員も少なくなく、山尾議員が言うところの、安住氏に「物言えぬ空気」が醸成されていたことも否めない。

通常国会はまだ始まったばかりで、新型コロナウイルス対策をめぐる議論や、予算案に関連する様々な政策論争、そして政権の疑惑追及も今後佳境を迎えることになる。

そうした中で起きた今回の問題。安住氏は、「私に人徳がなかった」と反省するが、安倍政権に厳しく対峙する上でも、自らの足もとを見つめ直すことは重要なのかもしれない。それなしに今回のようなことが続くとすれば、玉木氏の懸念の通り、本当に、野党全体が国民から出入り禁止を受けかねない。

(フジテレビ政治部 野党担当 高橋洵)