長き合流協議の結末は“打ち切り”だったが…

野党の立憲民主党と国民民主党は、1ヶ月以上にもわたって続けてきた合流への協議を通常国会の開会にあたって事実上打ち切り、この国会に臨んでいる。今回の“破談”という結果については、そもそも何のための合流協議だったのか、共同会派として築いてきた信頼関係にヒビを入れることにならないか、そんな懸念も指摘される。しかし、国民民主党内は意外にも至ってポジティブなのだ。果たしてこれはどういうことか。

国民幹事長は、打ち切りを否定するも協議再開は未定

1月21日、国民民主党の平野幹事長は、立憲民主党の福山幹事長との会談を終え、合流協議は“事実上の打ち切り”となったにも関わらず、頑なに「打ち切りではない」と強調し、今までの一連の合流協議とは「違ったコミュニケーションを幹事長同士でとる」述べた。

しかしその具体的な内容については明言していない。また幹事長同士で決定したことは、白紙に戻さないとしながらも、協議の再開時期を尋ねられると「時期が来たら」と述べるにとどめている。「選挙が近くなったらまた協議が始まる」という声もあるが、現段階では、今後の合流の行方は不透明だ。

国民民主党の平野幹事長と立憲民主党の福山幹事長の会談
国民民主党の平野幹事長と立憲民主党の福山幹事長の会談
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意外と“ポジティブ”な国民民主党

それにも関わらず、国民民主党内に“ポジティブ”な意見がそれなりに多い。

早期の合流に積極的だった議員は、今でも「合流しないとまずい」と述べる一方、「合流という選択肢を、党内で一度共有出来たことは意義があった」と指摘している。合流を望む声は党内に少ならからずあり、その声が今回の協議を通じて公のものになったことが、再び合流に向けて動き出す際に、大きな推進力になりうるということだ。

また、ある幹部は「頭の体操として、一度同じ党の人間になるかも知れないと考えたことで、距離感は近くなった」として、今回の合流協議プロセスによって、結論を抜きにしても、共同会派を組んでいるメンバー同士の連帯感は高まったという考えを示した。さらに「信頼関係にヒビが入ることはない」と断言している。

玉木代表も22日の代表質問を終えたあとの記者会見で、同じ日に質問した立憲民主党の枝野代表と「思いが同じ方向を向いていた」と述べ、今後の野党間の連携についても、「自信を深めた」「まったく心配していない」と胸を張った。合流協議中の疲れた表情とは打って変わって、この日は、とても晴れやかな顔だった。

玉木代表の代表質問・22日
玉木代表の代表質問・22日

解散風が止み、落ち着く党内

政党同士の合流をめぐっては、「合流したい人」と「合流したくない人」が必ず存在し、利害関係の不一致から、党の分裂がつきものである。しかし今回は合流協議に臨んだことでも、その後“破談”になったことでも、離党する議員はおらず国民民主党が分裂することはなかった。

理由の1つとしては、合流積極派の中心は衆議院議員であったが、年末年始の間に、通常国会冒頭の解散があるのではという、いわゆる“解散風”が止み、次期衆院選を意識する必要が薄れたことが挙げられる。そうした中で政党合流より、共同会派として国会論戦にどう臨むかに目が向けられていることもあるだろう。

立憲民主党・枝野代表と国民民主党・玉木代表
立憲民主党・枝野代表と国民民主党・玉木代表

また、参議院を中心とした合流慎重派にとっても、望んでいた「丁寧な合流協議」という条件が満たされない中での、今回の“打ち切り”については、むしろ歓迎という立場だ。合流話が始まったころに比べると、“打ち切り”となった今、党内は落ち着いている。よって、誰もすぐに離党はしないであろうし、ましてや党が分裂することも当面はないだろう。

その意味では、国民民主党は国民民主党のままであり、現状を維持し最悪の事態を回避できたという安堵の中でのポジティブさなのかもしれない。ただ、現状維持をポジティブに捉えているのだとしたら、国民民主党の抱えるネガティブな課題や不安の先送りでしかないという面もある。そして、その課題は本当に衆院選が近づいた時に、一気に吹き出す可能性を秘めている。

これから国会論戦が本格化していく。「桜を見る会」「カジノ」「中東への自衛隊派遣」「前閣僚らの疑惑」など、野党側からすれば、安倍政権を追及する材料は豊富にある。その中で、立憲民主党と国民民主党は、共同会派として今まで以上に連携していけるのか、そして、その先に再び合流協議は始められるのか、それぞれの課題から目を背けない対応が求められる。安倍長期政権の中で、野党はどこへ向かっていくのか、“ポジティブ”でも“ネガティブ”でもなく、冷静な目線で見ていく必要がある。

(フジテレビ政治部 野党担当 高橋洵)