働き方改革の一環で「副業」を考えている人は少なからずいるだろうが、今そんな人にはありがたい、ある企業の制度が注目されている。

ライオンが今年4月から、従業員に向けて「副業」情報の案内を始めるというのだ。これに先立ち、従来「副業」するには上司の許可が必要だった制度を、この1月から申告制に改めるという。

その内容は、提携企業による副業紹介サイトを従業員に向けて案内するというものだ。これまで自分で副業を探すことが難しかった人でも、このようなサイトを利用すれば、自分にあった副業を見つけることができそうだ。

つまり、会社側が副業自体を従業員に紹介するわけではなく、従業員とのマッチングなども行わない。社内のイントラを使って副業紹介サイトの案内を行う案も出ており、実現すれば希望者はサイトから副業を選択して申告するだけの手間で副業を始められるという。

ただし副業をするに当たって、次のようなルールがある。

・ライバル企業や公序良俗に反する仕事は禁止
・本業の残業時間と副業の労働時間の合計は、月80時間以内
・翌日の勤務まで10時間のインターバルを設ける
・週に1日は休む

ライオンでは、出向中の社員など一部除いた対象社員の2%ととなる約50人が副業制度を使うとみている。

このような副業に関する取り組みは、昨年11月26日に打ち出した「ライオン流 働きがい改革」の一環で、他には、好きな時間に働けるフルフレックス制度の導入や、既に実行しているドレスコードの撤廃(服装の自由化)なども含まれている。

出典:厚生労働省
出典:厚生労働省
この記事の画像(5枚)

厚生労働省が執り行う「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」で使われた資料によると、副業したい人と副業している人は年々増加。2017年は385万人が副業を希望しながら、実際に副業しているのは128万8千人にとどまっており、副業人口はまだ増える可能性がありそうだ。

しかし一般的な考えでは、「本業をしっかりやっていればいいのでは?」という疑問も浮かぶ。そのような中、なぜライオンは副業を勧めるか? そして副業なら「ユーチューバ―」など何でもいいのだろうか? 担当者に聞いてみた。

副業による新しいアイディアに期待

――副業しやすくする狙いは?

ライオンの「働きがい改革」の一環として、自律した社員が活躍する強い組織づくりを目的に、「学びと経験」の場を広げる一手段としてこの制度を始めました。

――副業をすることで、どんなメリットがある?

直接的な生産性・業務効率というよりは、従業員が副業を経験することで、新しいアイデアや刺激が生み出されることを期待しています。

――「副業したい」とか「副業先が分からない」という声が社内にあった?

そのような声があったわけではありません。

画像はイメージ
画像はイメージ

――他の会社を参考にしたの?

企業の動向などの情報収集は行っておりますが、特定の企業の取り組みを参考にしたものではありません。

――副業希望者が殺到すると、本業が人手不足になるのでは?

副業は就業時間外に行うルールとしておりますので、本業の人手不足への影響はないと考えております。

――働き方改革で規制された残業のお金を還元する狙いがあるのでは?

残業代とは無関係です。

副業でユーチューバーはOK?

――「この副業がしたい!」と申告すればすぐ始められる?

当社では、原則として「副業開始1か月前までの申告」を必要としています。

――自分で見つけた副業でもいいの?

本人の持ち込みによる副業は可能になっています。

――「ユーチューバー」「アクセサリー作家」「せどり」とかでもいい?

公序良俗に反する仕事は禁止するなどの、副業に関する当社のルールに照らし合わせて対応していきます。

副業でユーチューバーになれるかも?(画像はイメージ)
副業でユーチューバーになれるかも?(画像はイメージ)

――副業した方が、合計の給料が高くなることもある?

副業先の給与に関してこちらから申し上げられることはありません。

――副業した方が社内の評価やボーナスは良くなる?

副業の有無は、社内の評価やボーナスとは関係がありません。

――働き方改革で労働時間はどう変わった?

昨年11月に「ライオン流働きがい改革」を宣言していますが、従来より有給休暇の取得率向上などに取り組んできました。その結果2018年の取得率は60%に達しています。


政府をあげての働き方改革が進む中、副業をする従業員は今後も増えていくことだろう。このライオンのような取り組みは今後、他社にも広まっていくかもしれない。

「変わらなきゃ!働き方改革」特集をすべて見る!
「変わらなきゃ!働き方改革」特集をすべて見る!
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。