長崎・雲仙市で暮らす被爆者の宮田 隆さん(80)が、東京オリンピックの聖火リレーのランナーに選ばれた。
80歳の被爆者の思いとは…

聖火ランナー決定の知らせを受けたのは、クリスマスの直前、病院の中だった。

被爆者 宮田 隆さん;
青天の霹靂ですよ、僕らが被爆者として今まで生きてきたのは、平和という夢があったから。絶対に平和になるんだと、もうあの惨禍を繰り返さないと

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網膜はく離が見つかり、手術のためおよそ1週間入院した。
そんな最中に巡ってきた大役。

被爆者 宮田 隆さん;
ここ(ハチマキ)に核兵器反対って書けるかどうか。オリンピックというのは、それだけインパクトがある、世界最大のイベント。
今度はいいチャンスだと思う。そこにローマ教皇とオリンピックを重ねて1人1人が考える。そうすると日本人は誇りがもてる。世界から注目されます。オリンピックはまさに平和の祭典として歴史に残ります

宮田さんは5歳のとき、爆心地から2.4km、長崎市の自宅で被爆した。
皮膚が焼けただれた女性が水を求め、息絶えた姿が目に焼きついて離れない。

被爆者 宮田 隆さん
帰りたい、(母親の)おなかに戻せって言って泣いたというんだな。恐怖のどん底にいるおふくろに、なんで産んだんだとか無益な声を発してたんだなと

宮田さんは、定年後に移り住んだ雲仙市を中心に被爆講話を続けていて、自宅近くの小学校には講話に欠かせないものが保管されている。

被爆者 宮田 隆さん;
実物大です。3.3m、横が1.57m

戦争を知らない世代にも伝わるように…長崎に投下された原爆の模型だ。

被爆者 宮田 隆さん;
難しいですよ、伝えるというのは。感情で伝えている。ところが相手の感情になかなか届かない。戦争はみんな知らないもんね。アニメや漫画ではあるけど、お父さんもお母さんも(本当の戦争は)知らない

被爆から75年、軍拡の潮流が再び広がりつつある。
アメリカは、ロシアとの中距離核戦力全廃条約を破棄。
ミサイル開発競争は激化し、中国や北朝鮮も軍事力強化に突き進み、アメリカとイランの緊張関係も高まっている。
核兵器禁止条約のメドは立たず、事実上「核なき世界」は遠のいているように思われる。

2019年11月。ローマ教皇フランシスコは、2つの被爆地から世界に向けて、核兵器のない世界の実現を訴えた。

教皇フランシスコ;
ここは、核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です。核兵器のない世界が可能であり、必要であるという確信をもっている。政治をつかさどる指導者の皆さんにお願いします。核兵器は、今日の国際的また国家の安全保障への脅威から、私たちを守ってくれるものではない。そう心に刻んでください

宮田 隆さん;
平和スピーチをどう我々が具体化するか、今、それが大きな課題ですね。
原点は怒りなんですよ。もっと日本らしい平和(のメッセージ)を、世界に発信する平和の祭典であってほしい。そこに魂が入ってほしい。
世界が「日本が真剣に平和を考えている」と(感じる)、ベクトルがそうなるといい。被爆者がしないといけない、ひとつの仕事だと思う

原爆投下から75年。
宮田さんは被爆者、そして被爆地が果たすべき役割を胸に抱きながら、平和の祭典・東京オリンピックに臨む。

宮田さんからのメッセージ
命を大事にしてほしい、絶対に命を無駄にしてほしくない、人のために、人が楽しくなるような命を大事にしてほしい

(テレビ長崎)

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