寒い冬に食べたくなる、あったか料理の「納豆汁」。
山形県内では、七草粥の代わりに食べる風習もあり、スーパーには特設コーナーができるほど。

すり潰した納豆に、豆腐やこんにゃく、芋がらを入れた味噌仕立ての料理。
この山形の県民食を、鮮やかな青さで引き立ててくれる在来野菜がある。

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納豆汁に欠かせない食材といえば、旬を迎えている「堀込せり」。
堀込せりは、扇状地に広がる山形市の前明石地区で作られている。

万葉時代からある、日本古来の野菜・せり。
この地域では約70年前、蔵王山系の豊富な地下水を利用して栽培が始まったという。

せり農家・山口和夫さん:
味も良いけど、シャキシャキ感がある。こっちのせりは太くて長い

加えて、冬は氷点下が続く山形の気候。
寒さに耐えられるよう、せりは甘みをぐっと蓄える。

山形の風物詩...なぜ「箱入り」で作業をする?

収穫期の今、風物詩にもなっている「少し変わった風景」がある。

せりを洗う地元の女性たちをよく見てみると、なんと木の箱にすっぽり入って作業している。

この箱のおかげで、前かがみの姿勢を楽に保つことができるという。
1日におよそ8時間、足元よりも低い位置で行う作業で腰を痛めないようにと、この格好が代々受け継がれてきた。

こうして丁寧に仕分けしたせりは、市の内外に年間約40トン出荷されていく。

せり農家・山口和夫さん:
やっぱり、こういう青物(野菜)は冬場はなくなるからね。せりは真っ青だから良い

納豆汁に、雑煮に。
冬のあったか料理に欠かせないせり。
「引き立て役」のイメージが強いのも確かだが、魅力はそれだけではない。

せり農家・山口和夫さん:
これ、本当は天ぷらがおいしい

生産者の山口さんからすすめられたのが、「天ぷら」。
せりを適当な長さに切り、油で揚げるだけというシンプルな調理法。
みずみずしさを損なわないよう、さっと揚げることを心がけるという。

さくらんぼテレビ・重松沙恵アナウンサー:
かなり食べ応えがありますね。せりで天ぷらってあんまり想像していなかったんですが、しんなりしなくて、ちゃんとせりの存在感があって、とてもおいしい

そしてもう一品、香りの良さと独特のえぐみを楽しめるのが「胡麻和え」。
さっと茹でたせりに、人参としらたきをあえていく。

さくらんぼテレビ・重松沙恵アナウンサー:
天ぷらよりも、せりの風味がかなり残っている感じがする。シャキシャキ感と同時に、かんだ時にふわっと鼻に抜ける香りがまたいい

山形市食生活改善推進協議会・星野みち子さん:
(せりは)彩りも良いし、ビタミンもあって味も香りも良くて。ただのお浸しで食べるのもおいしいんですけど、胡麻和えは栄養も(豊富で)、ちょっとした一つの副菜になる。わたしたちもよく作っています

新しい時代にも残したい...栽培方法伝える取り組みを

しかし、「堀込せり」を作る農家は、高齢化のために年々減り続け、10件ほどとなってしまった。
山口さんは、「堀込せり」を何とか残していこうと、県の内外を問わず見学を受け入れ、栽培方法を伝える取り組みをしている。

せり農家・山口和夫さん:
寒い時期に水に浸かってやるというのは大変だけど、やっぱりここの在来野菜だからね。守っていかなきゃ、作っていかなきゃというのが誇り

山形の豊富な地下水と厳しい寒さが生む、おいしい「堀込せり」。
土地に伝わる野菜を令和にも残していきたいという、地域の思いがある。

(さくらんぼテレビ)

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