高齢の人もスイスイ移動!日本でも広がるか?街中電動キックボード

カテゴリ:ビジネス

  • 世界で広がる電動キックボードのシェアリングサービス
  • 続々とスタートアップ企業が狙う日本市場
  • 安全確保×ビジネスチャンス…実用化へ議論続く

日本市場の開拓に向けて業界一丸

2019年5月、フランス・パリを訪れたとき、数年前に来た時とは何か変化を感じた。
街の風景が違う…?
電動キックボードがいたるところに置いてあり、乗りこなす人々の姿があった。
『なにこれ、楽しそう』『危なくないの?』
『乗り捨ててあって盗まれないのかな』

パリでは2018年、「LIME(ライム)」などの企業が次々と電動キックボードのシェアサービスを開始。
アプリで利用でき、金額も最初に1ユーロ(約120円)、そこから毎分20サンチーム(約25円)と手軽で、若者や観光客を中心にウケているそうだ。
通勤途中のサラリーマンが、車の渋滞の間をスイスイと通り抜ける姿も見かけた。

<2025年には世界の電動キックボード市場はヨーロッパ、アメリカ、中国を中心に4兆~5兆円規模という試算も(2019年ボストンコンサルティンググループ)>

キックボード事業の企業たちが、今度は日本を新たな市場として狙っている。
11月14日にひらかれた協議会。
この協議会は、あたらしいマイクロモビリティ(=超小型の乗り物)の、日本での普及、促進を目指す業界団体だ。
会員は、「Luup」「mobby ride」「マイメリット」、そしてこの日から世界最大手の「LIME」が加わり4社。
いずれも電動キックボードのシェアサービスの会社だ。車や電車などで移動したあとの、1km前後のちょっとした距離の移動での活用を提案する。

アメリカから来日したLIMEの担当者;
次は日本がマイクロモビリティ革命に参加する国である

と、意気込んだ。
日本は欧米に比べて都心部の人口密度が高く、通りが狭い。
ここに電動キックボードサービスの商機があると見ている。
「LIME」は2019年9月、KDDIとデジタルガレージから出資を受け、福岡市で試乗会をするなど日本市場展開に向けて準備を進めている。

電動キックボード事業者の面々

協議会では、安全確保のためのガイドラインを作成。共通の、電動キックボード機体の規格や速度を定め、クリアしたものには「安全認定シール」を発行することにした。
また、利用者や第三者が、事故で受けた被害をカバーする任意の保険に加入することを規定し、信頼性を高める。

【機体の規格】
時速:最高速度は毎時6kmを下限、毎時20kmを上限
重さ:55kg以下
寸法:幅(ハンドル幅)70cm以下、高さ1.4m以下、長さ2m以下

少子高齢化社会に簡単操作の新たな乗り物を

日本では、電動キックボードは原動機付自転車(「原付」)に分類されている。
だが、2018年に設立した日本の「Luup(ループ)」は、原付としてではなく、少子高齢化社会が抱える課題を解決する新たな乗り物として、この電動キックボードのシェアリングサービスを提案する。
漕がずに、またがないで乗れるので高齢の人も含めた幅広い年齢層が利用できる。
最高速度を遠隔で制御することができるので、事故を防ぐことができる。
環境にも優しく、駐輪に必要なスペースも小さい。
浜松市や四日市市などの自治体と積極的に連携協定を結び、実証実験を重ねている。

Luupが提案する電動キックボードは、二輪タイプだけではない。
11月25日。東京・渋谷で行われたイベントでは、内部障がいがある人向けの試乗会が行われた。
内部障がいとは、外見からはわからない身体内部に障がいがあることをいう。周りから分からないからこそ、その移動手段にも理解が必要だ。
参加した、ミウラタケヒロさん(14)は、心臓に病気を抱え、長時間歩くことが難しい。
しかしこの日は、四輪タイプの電動キックボードをスイスイと、簡単に操作し乗りこなしていた。

ミウラ タケヒロさん;
こっちの四輪タイプのほうが(二輪タイプのものより)安定しているのでいい。
かっこいいので、こういうものにも乗りたい

と、14歳らしい笑顔で話していた。

若者、観光客、高齢の人だけではなく、障がいがある人にも使ってもらえる。
ここまで電動キックボードの議論が活発になり、各地で実証実験が行われているが、現在の日本の法律では、安全性の面でまだ公道で電動キックボードが走ることが認められていない。
どのような条件であれば日本において「安全」と認められるかまだ明らかになっていないのだ。

安全か?ビジネスか?…立ちはだかる日本特有の壁

電動キックボードは原付に分類されているため、道路運送車両の保安基準への適合、そして運転免許、ヘルメットの着用が義務づけられている。
世界へ目を向けてみると、アメリカの一部の州を除けば、運転免許は不要、ヘルメットの着用も不要な国が多い。

一方で、事故や無秩序な駐輪による問題が出てきていることも事実だ。
パリでは、2019年10月に2人乗りを禁止し、2020年7月からブレーキやライトの装備を義務化する政令を施行した。
シンガポールでは、2019年9月に死亡事故があったことも受け、11月に規制を強化し、ごく限られた専用レーンでの使用のみになってしまった。
また、日本の道路は各国のものと比べると狭く、公道を走ると安全面でのハードルはぐっと高くなる。
電動キックボード事業者は、規制緩和に向け、警察庁や国土交通省と話し合いを進めながら、実証実験を重ねていく方針だ。

政府も、次世代移動サービス「MaaS(マース)」の担い手として電動キックボードに注目している。
「成長戦略2019」では、少子高齢化の中で地方における移動手段の確保、とくに高齢の人の移動手段の確保は喫緊の課題として、政府と有識者らの間で話し合いが重ねられている。
2019年11月にとりまとめた案では、小型電動モビリティ(電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV))、電動アシスト自転車、電動車いすとともに、電動キックボードも新たな移動手段のひとつとして挙げられている。
経済産業省は、2019年6月に「J-Startup(スタートアップ企業の支援)」の対象にLuupを選出。経産省担当者は「早期の電動キックボードサービスのビジネス化を目指したい」と話す。
現状、警察庁と対峙し話し合いを進めている状況で、数年かかると見られている。

2020年は、議論がどう展開されるか期待が高まる。

(フジテレビ報道局経済部 井出光記者)