東京地検特捜部の『完全復活』なるか

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オオシバくん:
東京地検特捜部が、中国企業・IR絡みの事件を捜査しているね。

平松デスク:
特捜部が、ついに特捜部らしい事件に切り込んだという感じだね。

確かにここ数年、特捜部が大活躍をしているのは間違いない。例えば、去年は日産ゴーン事件に着手し日本だけではなく世界中を震撼させたよね。あとは、一連の文科省汚職では文科省の局長クラスを相次いで逮捕・起訴した。世界的なビジネスマンに高級官僚、特捜部が手がける事件としては申し分ない。さすが特捜部という印象を強く持つよね。ただ、『完全復活』という訳ではないんだ。

『検察不信』を加速させた過去の失態

オオシバくん:
それはどういうこと?

平松デスク:
実は、特捜部は10年ほど前に立て続けに不祥事を起こし失態を演じている。

まずは、大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽事件。2009年に、郵便不正をめぐって、のちの厚生労働次官の村木厚子さんを逮捕・起訴したけど、結局村木さんは無罪となった。この捜査の過程で特捜検事による証拠改ざんをしていたことが発覚し、さらにはその証拠改ざんを隠したとして、当時の特捜部長と副部長が逮捕・起訴され、有罪が確定したんだ。かなりの衝撃が走ったよね。

さらに失態と言えば、特捜部VS小沢一郎だね。東京地検特捜部は陸山会事件をめぐって、秘書だけではなく小沢一郎さんの立件に向けて懸命の捜査をしたのだが、結局起訴できず。その後、強制起訴された小沢さんは無罪となった。ところが、この強制起訴に至る過程で虚偽の捜査報告書が検察審査会に出されていたことが発覚。小沢さんとの戦いに敗れた上に、検察不信を加速させてしまった。

“特捜部不要論”は払拭できるか

平松デスク:
これらの検察不祥事などがキッカケとなり、取り調べの録音・録画も導入されることになったんだが、それよりも検察当局にとっての痛手は、
『特捜部は死んだ』
『向こう30年は立ち直れないだろう』
などと批判され、“特捜部不要論”をぶち上げる人まで出たことさ。検察不信ここに極まれり、ということ。

でもね、『巨悪を眠らせない』じゃないけど、法律と組織を駆使し、権力と対峙できるのは、日本最強の捜査機関・東京地検特捜部だけさ。そんな特捜部は、ゴーン事件や文科省汚職じゃなく、政界の不正・汚職に切り込んで欲しい。今回の中国企業・IRをめぐる事件がどういう展開を見せるか分からないが、真の『検察不信』の払拭は、今回の捜査の成否にかかっていると言っても過言ではない。

【執筆:フジテレビ 社会部デスク 平松秀敏】

平松秀敏
平松秀敏

『拙速は巧遅に勝る』。テレビ報道は、こう在るべき。
『聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥』。これが記者としての信条。
1970年熊本県出身。県立済々黌高校、明治大学卒。
95年フジテレビ入社。報道カメラマン、司法・警視庁キャップ、社会部デスクを経て、現在、解説委員。
サザンオールスターズと福岡ソフトバンクホークスをこよなく愛する。娘2人の父