子どもが小児がんに...自宅から離れた病院への入院余儀なく

長岡市に暮らす本村里奈さんと、長女の奏ちゃん。
お兄ちゃんや妹と一緒に毎日きちんと宿題に取り組む奏ちゃんは、現在6歳の小学1年生。
明るく元気一杯の奏ちゃんだが...。

母・本村里奈さん:
この子が1歳5カ月の時に風邪っぽくって、夏に吐くなどしていたので、救急外来に連れて行った。そこで肺の音を聞いたら、(医師に)『あれ』って首をかしげられて。

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1歳5カ月のころ、体調不良で病院を受診すると、思いがけず告げられた病名は「神経芽腫」という小児がんだった。

母・本村里奈さん:
本当にびっくりした。聞いたことない病気だった。その治療をするのが、新潟市に行かないとできない。

奏ちゃんは、自宅の長岡市から離れた新潟市の新潟大学医歯学総合病院への入院を余儀なくされた。

精神的・体力的・経済的負担に苦しむ家族

奏ちゃんのように、診断や治療が難しい症例の子どもが、ほかの病院から転院し集まってくるなど、県内の小児医療の中心的役割を担う新潟大学医歯学総合病院。
近隣の県を含め、広い範囲から小児患者が訪れる。
年間2,000人近い子どもが入院しているが、病院のある新潟医療圏の外からの患者の割合がほぼ半数に及ぶ。
奏ちゃんは、2度の入院で、あわせて2年近くに及ぶ治療のかいあり、すっかり元気になった。
一方で、入院中の生活を振り返ると

(Q.基本的に誰か居てあげないと?)
母・本村里奈さん:
完全に付き添いだった。1週間に1回、主人に交代してもらい、月曜日が休みだったので、(病院に)日曜日の夜に主人が来て、月曜日の夜にまた交代するという生活。

まだ小さい奏ちゃんのため、母の里奈さんが中心となって、毎日病室に寝泊りする生活。
離れた自宅に残してきた兄弟のことも心配しながら、自らも満足のいく食事ができないなど、大変な日々が続いた。

母・本村里奈さん:
一緒に寝て、一緒に起きる。食事は子どもの分は出るが、親の分は出ないので、コンビニに行ったり、レトルト食品や冷凍食品を用意しておいたり。

このように、子どもの入院中、精神的・体力的、そして経済的負担に苦しむ患者家族は多いという。

新潟大学医歯学総合病院 小児科 斉藤昭彦教授:
病院の近くには、ビジネスホテルなどいくつか施設があるが、当然お金がかかる。(病院は)ほかの患者もいて、音が聞こえるなど、睡眠を取ろうと思っても取れない。
保護者の方々は、そういった中で長期間、子どもの看病にあたる現状がある。

そうした患者家族の負担を何とか減らそうと考え、病院などが建設を目指すことにしたのが...

新潟大学・高橋姿学長:
1日も早く、「ドナルド・マクドナルド・ハウスにいがた」を造りたい。

先日、キックオフイベントが開かれ、建設に向け動き出したのは、日本海側で初めてとなる「ドナルド・マクドナルド・ハウス」。
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」とは、入院する子どもの家族が病院の近くで安価で利用できる、アメリカ発祥の宿泊施設。
現在は、世界約40カ国、日本では11カ所で運営されている。
建設費の半分は、ハウスを運営する公益財団が負担し、もう半分は寄付によって賄われるため、募金活動に力を入れることも確認された。

子どもの兄弟が遊べるスペースや家族同士の交流も

では、ハウスはどのように活用されているのか。
東京・世田谷区の国立成育医療研究センターの敷地内に、2001年に日本で最初に開設されたハウスを訪ねた。

季節ごとの飾りつけがされ、温かな雰囲気のエントランスが迎えてくれるハウス。

ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン 山本実香子事務局長:
こちらが共有スペース。キッチンとダイニングになっている。

共有スペースには、宿泊する患者家族が自炊できるキッチンが設けられている。
子どもの付き添いの間、家族自身の体調に気遣ってもらいたいとの思いが込められている。
また、患者である子どもの兄弟が遊べるスペースなどもあり、家族同士の交流も生まれているという。
そして、利用者が寝泊りをする個室は。

(Q.病院の病室だと、なかなかこのようなベットでは寝られない?)
ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン 山本実香子事務局長:
寝られないです。このパッチワークもボランティアさんが作ってくれた。手縫いのものがあると、施設ではない、家のような雰囲気になる。

寄付やボランティアなど地域によって支えられ、運営されるハウス。
子どもが入院する家族は、1人1泊1,000円の費用で利用することができるとあり、23室ある部屋は現在満室で、利用希望者に待ってもらう状態だという。
子どもの入院の付き添いのため、愛知県から上京し、ハウスを利用しているという家族は...。

愛知県から上京し利用する家族:
近くの距離で、すぐ子どものもとに飛んでいける安心感がある。
入院中は、気が張り詰めてしまうことや、子どもの状態が思わしくない時もあるので、1人でホテルを借りて生活するよりも、同じ仲間がいて情報交換ができるし、すごくいい。

ハウスの完成は子どもの治療にも重要な意味

2022年のハウスの利用開始を目指す新潟大学医歯学総合病院。
病院の目の前にある、今は職員の研修などのため利用されている建物を取り壊し、新たに建設することを予定している。
このハウスが完成すれば、子どもの治療においても重要な意味を持つと医師は話す。

新潟大学医歯学総合病院 小児科・斉藤昭彦教授:
子どもは、親の顔を見ながら毎日生活しているので、お父さん・お母さんがくたびれて笑顔がないと、本人もつらくなる。
親の笑顔が取り戻されると、子どもが笑顔になり、治療効果に大きくつながる

病気と闘うこどもたち、そして、その家族の笑顔のためのハウス。
実現に向けて、地域の理解と協力が求められている。

(NST新潟総合テレビ)

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