「ナスカの地上絵」新たに143点発見…なぜ今こんなに大量に? 2つの理由があった

カテゴリ:テクノロジー

  • 山形大学の研究グループが新たに143点の「ナスカの地上絵」を発見
  • 大量に発見できた理由は2つある
  • 坂井教授「今後も新たな地上絵が発見される可能性はあります」

新たに143点の「ナスカの地上絵」を発見

南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」について、山形大学の坂井正人教授らの研究グループが11月15日、新たに143点の地上絵を発見した、と発表した。

このうち、142点は坂井教授らの研究グループの調査で、1点は山形大学と日本IBMと共同のAIを活用した実証実験によって、それぞれ発見。
山形大学によると、AIを活用して地上絵を発見したのは世界で初めてだという。

坂井正人教授らの研究グループは、2004年から2018年までの約14年間にわたる調査で、主にナスカ台地の西部から人や鳥、ラクダなどの動物を描いたとみられる地上絵142点を発見した。
いずれも紀元前100年~紀元300年頃に描かれたとみられ、大きい地上絵は100メートル以上もある。

上空からのレーダー測量などを基にナスカ台地全域の画像を分析し、台地の西部にある複数の小道に沿った場所に地上絵が集中していると仮説を立て、現地調査を実施した結果なのだという。

また、山形大学は、2018年秋から2019年春にかけて、日本IBMとの共同の実証実験で、“5メートルほどの人型とみられる地上絵”も発見した。二本足で立ち、棒のようなものを持つ人型の絵だ。

日本IBMのAI技術を活用し、山形大学が持つ高解像度の画像データなどを分析したところ、地上絵の候補がいくつか示され、これに基づき、研究グループが現地調査をしたところ、地上絵であることを確認したのだという。

すでにナスカ台地で発見されている地上絵は約80点。
そこからさらに143点の新たな地上絵を発見したという発表には、正直、驚いたが、なぜ今、こんなにも大量の地上絵が発見できたのか?

その理由を山形大学の坂井正人教授に聞いた。

大量に発見できた理由の一つは「地上絵の規模」

――新たな地上絵を発見するために費やした期間は?

ナスカ台地における2004年から2018年までの地上絵調査の成果というのが、適切な答えだと思っています。
142点の地上絵の存在は2016〜2018年に確定しましたが、それ以前に候補となる地上絵が見つかっている場合もあります。


――今回、大量の地上絵を新たに発見。これはどうして?

主な理由は以下の2つです。

1つ目は「地上絵が描かれたナスカ台地が広大なため」。

ナスカの地上絵は広大な範囲(20㎞×10㎞)に分布しているため、調査に膨大な時間がかかります。山形大学では2010年より毎年現地調査を実施していますが、調査ができた範囲はナスカ台地全体の1割以下です。

2つ目は「地上絵の規模」です。

有名な地上絵(ハチドリ、サル、クモなど)は巨大な「線タイプ」のものです。
今回、発見した地上絵の中にも全長100mの「線タイプ」の地上絵(鳥の地上絵)が含まれますが、大部分は全長50m以下の「面タイプ」の地上絵です。これらは上空から確認することが困難なので、地上での現地調査が必要です。

――日本IBMとの実証実験で発見した人型の地上絵は、どのようなことを表している?

これは回答が難しいです。

――今後、まだ未発見の地上絵が見つかる可能性は?

あります。これまで調査された地区が限定的なためです。

――今後の課題は?

地上絵の破壊が進んでいるので、分布地図を早く作ることが必要です。

「AIの文化的な研究などへの貢献を実証できた」

そして、山形大学と日本IBMによるAIを活用した実証実験で発見された1点の新たな地上絵について、日本IBMの広報担当者に話を聞いた。

――新たに地上絵1点を発見したプロセスをなるべく詳しく教えて?

今回、山形大学様からナスカ地域の高解像度空撮写真のデータ、および、すでに発見されている地上絵の情報をご提示いただきました。

それらを学習データとしてディープラーニング(深層学習)による“画像認識モデル”を作成し、地上絵の検出に活用できることを実証する実験を行いました。

この画像認識モデルは、すでに発見されている地上絵のパターンを学習することで、学習データにない新たな地上絵を検出するものです。

今回の画像認識モデル作成にあたっての課題としては、そのように検出対象が未知であること、また学習に利用できるすでに発見されている地上絵の数が限られ、かつ、それぞれ異なる大きさや形を持っていること、などがありました。

日本IBMの実証実験チームがこれまでの経験と知見を活かして、それらの課題に対応できる画像認識モデルを作成し、それを利用して、空撮写真を分析した結果、未確認の地上絵と考えうる候補を複数、検出しました。

その検出結果を山形大学の坂井教授に精査していただき、現地調査を経て、実際にその中の1つが新たな地上絵として確認される、という結果につながりました。

――実証実験で新たな地上絵が見つかったこと、どのように受け止めている?

AIのディープラーニング(深層学習)が、労働力の肩代わりや、それによるコスト効果というビジネス面での貢献だけでなく、人文社会など文化的な面での研究や知識探求での貢献につなげられることを実証でき、非常にうれしく感じています。

今後も新たな地上絵が発見される可能性があるということだが、こうした分野にもAIが活用されることで、謎の多い「ナスカの地上絵」の解明につながることを期待したい。

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