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2015年以降、中国でスパイ行為などの疑いで15人もの日本人が拘束されている。ことし9月には北大教授が拘束され、2カ月後に解放されている。一方で来年春には習近平国家主席の国賓としての訪日が予定されており、日本国内ではこの是非が問われる事態となっている。

今回の放送では、こうした状況の背景にある習近平体制と中国の法制度の問題点を検証し、習近平主席の国賓訪日を見据えて識者による議論を行った。

急増する中国での日本人拘束

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竹内友佳キャスター:
2015年以降、スパイ罪などによる日本人の拘束が相次いでいます。15人が拘束され、解放されたのは5人のみ。この現状をどう感じていらっしゃいますか?

江戸川大学 学長 小口彦太氏:
数として非常に多く、また急に多くなっている。それ以前にスパイ罪で捕まった例の記憶がない。殺人事件や覚せい剤所持などはあったが、スパイ罪の例が急に出てきました。

自民党参院議員 松川るい氏:
中国でスパイ防止法ができたのが2014年ですが、それから非常に増えています。中でも、直近の北大の教授が拘束された例は理由もわからず悪質です。問題は、何がスパイ罪にあたるのか非常に不透明であるという点で、懸念しています。

北大教授の拘束と釈放の背景には何が?

竹内友佳キャスター:
岩谷將(いわたにのぶ)・北海道大学法学研究科教授は中国の近現代史が専門で、防衛省防衛研究所や外務省での勤務経験があります。今年9月、中国政府のシンクタンク「中国社会科学院」の招待に応じて北京を訪れ、中国当局に拘束されました。しかし、その経緯など詳しいことは一切明らかにされていません。そして先月の15日、2カ月ぶりに解放され無事帰国しました。
岩谷教授の拘束について、中国外務省は「今回と過去に、大量の中国の国家機密に関する資料を収集したという違法な行為を白状した。中国の刑法と反スパイ法に違反した疑いがある。自ら犯した罪を認め、悔いあらため、罰を受けることを表明した。男性教授に対して、保釈措置をとった」とコメントしています。

自民党参院議員 松川るい氏:
中国としては特別扱いをしたと感じます。日本人の感覚では決して早い釈放ではありませんが、 15件ある中で比較すると速やかでした。「悔い改め云々」という説明の背景には、この特別扱いの理由づけをする必要があったのではないかと思う。

自民党 松川るい 参院議員
自民党 松川るい 参院議員

自民党参院議員 松川るい氏:
今回は、日本にいる中国の研究者も連名で解放を中国側に求める運動をしました。学術交流としても、中国の社会科学院が招請して数日後に拘束とは、拘束するために呼んだかのようであり、学術交流に深刻な影響があるとアカデミアでも中国のやり方が批判されています。
一方で安倍総理、茂木大臣からの働きかけがありました。国会で私の同僚議員からも、このような状況では習近平主席を国賓としてお迎えできないという話がありました。中国による特別扱いの背景には、これらの複合的な要因があった。

反町理キャスター:
たとえば、1人ではなく9人全員釈放されなければおかしい、そうした政治的な動きが日本で強まれば、国賓で迎えるまでにさらに保釈が進むのでは?

江戸川大学 小口彦太学長
江戸川大学 小口彦太学長

江戸川大学 学長 小口彦太氏
それはわからない。中国の法に基づいて行われているが、そもそもこの種の判決文がなかなか手に入りません。スパイ罪についての判決文の中で見られるものは4件しかなく、しかもいずれも軽微で日本人がらみでもない。認否も何もわからず、有罪とするための根拠が明らかにされていないのが問題。

中国の「反スパイ法」はどのようなものか?

竹内友佳キャスター:
反スパイ法とはどういうものか見ていきます。第2条には、「反スパイの業務を遂行するにあたっては、中央の統一的指導を堅持し、公然たる業務と非公然の業務を結合し、専門的業務と大衆路線を結合し、積極的に防御し、法に基づき懲罰を加える原則を堅持する」と書かれています。

自民党参議院議員 松川るい氏:
習近平体制になってから、党の統制を強めるのだということがいろいろな文書に出ています。2017年の10月、共産党大会における中央委員会報告がありました。「2049年に中国は世界覇権を握る」といった内容が話題になりましたが、その中に情報統制を強化すると書かれています。共産党・習近平氏による統治においては特に情報管理が大切という感覚が見られます。

反町理キャスター:
「公然たる業務」はわかりますが、「非公然の業務」という、こりゃ何ですか?

江戸川大学 学長 小口彦太氏:
非公然の業務としては、盗聴などが挙げられます。

一般市民にも通報を義務づける中国の「反スパイ法」

反町理キャスター:
「専門的業務と大衆路線を結合して」とあるように、一般市民にも通報を奨励していますね。2017年4月には、北京市の国家安全局がスパイ行為の通報を奨励する規則を施行し、最大 50万元(日本円でおよそ800万円)の報奨金を出すと。大衆を使った監視体制はどういう状況なのか?

ジャーナリスト 高口康太氏
ジャーナリスト 高口康太氏

ジャーナリスト 高口康太氏:
実は、反スパイ法に文字数をもっとも費やして書かれているのは「スパイを通報するのは国民や中国の企業の義務である」という内容です。今は党が作った通報サイトやアプリもあり、人民が監視している状況です。不審人物をワンクリックで通報できますし、電話でも通報できます。

習近平主席の国賓来日にあたり、日本は何を突きつけるべきか

反町理キャスター:
視聴者からのメール。「これだけ日本人が拘束されて習近平主席を国賓で招くのはおかしい。日本はなめられているのでは?」松川さんいかがですか。

自民党参院議員 松川るい氏:
今回、北大教授の件で日本政府が非常に毅然とした態度で臨んだ。他の拘束されている方についても同様に、不当な拘束は認めないと返還を求めていくが、そうした中で習近平主席を国賓として迎えることに議論は当然あるでしょう。
ただ、日中関係は非常に不正常な状況が長く続いた中、大局的な見地からもう一段正常な状況にしようとしている。この大きな文脈は忘れてはいけないと思います。

反町理キャスター:
尖閣については? 中国の公船が毎日どんどん入って来ています。

自民党参院議員 松川るい氏:
「国賓として来て天皇陛下に迎えられたいのだったら、尖閣諸島に対して毎日やってくるこの行為をやめろ」というプレッシャーをかけるべきだと思います。

反町理キャスター:
通用するでしょうか?

自民党参院議員 松川るい氏:
少しは通用するかもしれないですよ。

(BSフジLIVE「プライムニュース」12月4日放送分より)