アコヤガイの大量死…来年以降にも影響

2019年の夏、三重県の英虞湾などで起きた「アコヤガイの大量死」。2020年に向けて動き始めた養殖業者だが、思うようには進んでいないのが現状だ。

11月12日、車から降りてきたのは渡辺慎介さん(41)。三重県の英虞湾などで獲れた真珠を加工する兵庫県神戸市の業者。

志摩市の真珠養殖業者を訪ねてきた。

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渡辺さん:
そこまで(加工真珠の)量は減ってないから、ある程度確保はできてるっていうことで、値段がつり上がってしまって実際(真珠が)買えないってことが起こってしまったときに、初めて『あれっ?』っとなる可能性があるかもしれないですね

養殖業者:
やっぱり温度差がものすごいある、現場(と加工業者)との温度差が

養殖業者と加工業者との「温度差」…

養殖業者:
(貝引きあげて…)結構死んどるよ、死んどる死んどる。(真珠層が)薄い薄い、薄いなあ。全然ダメよ。こんな身では話にならんでよ

渡辺さん:
確かに言われている通り結構死んでたんで、本当なんだなという感じでした。来年再来年どうなるのかなっていう不安でしかないですね

この夏、英虞湾周辺で発生したアコヤガイの大量死。8月末に行った三重県の調査で、全体の約半分、209万個が死んでいるのを確認。

母貝への被害は2割余りで済んだものの、稚貝は実に7割…事態は深刻だ。

アコヤガイを使った真珠養殖では通常、稚貝を1年から2年育てる。稚貝が育つと母貝となり、これに核入れをした後、さらに半年から1年半ほどしてようやく真珠はできる。

稚貝がほとんど死んでしまうということは、来年以降、母貝になる貝が大幅に減ってしまうことを意味する。

渡辺さん:
養殖場の方たちも大変なんでしょうけど、実際そのあと時間差で遅れて2次3次で、神戸の加工屋さんとか業者さんにも影響が出ると思うんで、ちょっと真剣に考えなきゃいけない、なんとかしなきゃいけないんじゃないかなとは思います

来年に向け、養殖業者は動き出していた。まだ暗い中、志摩市の神明漁港に一台のトラックが到着。

荷台に入れられていたのは大量のアコヤガイ。愛媛県愛南町から母貝約11万個が到着した。しかし…。

トラック運転手:
貝の量は少ないですね、やっぱり。大量へい死があってから…

実はアコヤガイの大量死は全国一の真珠の産地・愛媛県でも発生。三重の養殖業者はほとんどの稚貝や母貝を愛媛県から仕入れているため…

谷口博俊神明真珠漁協組合長:
いつものようにはいきませんね。自分たちが欲しいサイズというのは(今年は)こちらから指定できるわけでもないですし

大量死の原因は特定できず

さらに、発生から3か月経って三重県が出した結論は「大量死は高水温などの環境変化によるとみられるが、原因は特定できない」というもの。これでは対策すら立てられない。

濱口和司片田真珠漁協監事:
冬の高水温にしても、皆それなりの対策はしていると思うんですよ。エサ不足にしても貝はもともと海の底にいるもんですから、エサ不足にはある程度は耐えられるはずなんですよね。なぜエサ不足が起こっているのか分からない、その報告がなかったので、ちょっとモヤモヤ感はあります

思うようには進まない現実の一方で、進み続ける高齢化…。英虞湾はまもなく真珠の浜揚げの最盛期を迎える。

谷口組合長:
(今年は真珠の)それほど水揚げが期待できないと思うので、量も少ないというので…。一年間まわしていくお金がなかなか難しいのと、高齢化で後継者がいないというところは、ちょっとこの先みたときに考えちゃいますよね

立神真珠組合原条さん:
これしかできないですからね、真珠屋さんは(笑)。非常に悲しいことだと思うんですけど、続けることしかないという決断が、すごく悔しいですね。安心して仕事ができないもん

(東海テレビ)

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