暮らしの中で欠かせない「QRコード」

ウェブサイトへのアクセスや、最近ではキャッシュレス決済でも使われている「QRコード」。

このQRコードを開発したのは、愛知県に本社を置くデンソーの技術者。生みの親を取材すると、驚きの開発秘話が明らかになった。

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今や、見かけない日はないほど普及したQRコード。キャッシュレス決済に、HPへのアクセス、最近ではお墓にQRコードを付けて故人の情報を記録するサービスもあるなど、その利用法は多岐にわたる。

そのQRコードの生みの親は、実はモノづくり愛知の雄「デンソー」。しかも、開発されたのは25年も前のこと。

現在は一事業部から分社化し、愛知県阿久比町に「デンソーウェーブ」として会社を構えている。

生みの親が明かした開発のきっかけは「囲碁」

開発者の原昌宏さんにQRコードを開発したきっかけを聞いた。

デンソーウェーブ 原昌宏主席技師:
QRコードがない時に、我々製造現場は(部品を)バーコードで管理していたんですね。バーコードを8~10個くらい並べて読ませていたんです。そうすると非常に作業効率が悪いのと、やっぱり作業員が「疲れる」と非常に不平不満があったものですから、そこで(多くの情報を)一発で読めるコードを開発しようということでQRコードをつくりました

元々は、自動車工場の部品管理のために作られたQRコード。

情報量はバーコードの実に200倍。この縦横に白と黒の四角が並んだデザインが特徴だが、その配列パターンで情報を表現している。

QRコードをカメラで読み取るだけでウェブサイトにアクセスできるのは、サイトのURLなどがこうした四角の並びに「変身」しているためだ。

また、素早く読み取れるのもQRコードの特徴で、対応する文字数は英数字でなんと最大4000文字以上。

四角の大きさを細かくしたり、QRコード自体を大きくしたりすることで、文字数の範囲なら無限にパターンを作ることが出来る。

このデザイン、ヒントになったのは原さんの昼休憩の「遊び」だった。

原さん:
私が昼休みに会社で囲碁やっていたんですね。囲碁のマトリクス状に白黒を配置することが情報入れやすいので、これだと思いましたね

なんとヒントは「囲碁」だった。

そんな遊び心がきっかけで、なくてはならないものにまで普及したQRコード。拡大の背景には、開発当初の英断があったという。

原さん:
QRコードはいっぱいあっても、インフラは整備しなければいけないので、インフラはデンソー1社では早くできないということで、多くの企業に参入してもらうために特許をオープンにしたということですね

「まずはQRコードが普及するように」と、あえて特許をオープンにしたことで次々に他の企業などが採用するようになった。

さらにはカメラ付き携帯電話の普及もあり、爆発的に拡大。

買い物の支払いやコインロッカーのカギ代わりなど、セキュリティに関するシーンにも広がっている。

広がり続ける「活躍の場」…銀行、電車、無人コンビニにも

最近でも様々なところに活躍の場が広がっている。

鹿児島銀行が試験導入したATMは、キャッシュカードの代わりに契約者の「顔」情報などが入ったQRコードをスキャン。ATMを操作している人が本人かどうか、ATMの内蔵カメラで認証。

本人とわかればお金が引き出せるが、本人以外では引き出せない。

さらに、東京の都営地下鉄ではホームに入ってくる電車のドアにQRコードが貼られている。

このQRコードを駅のホームのカメラで読み取ると、転落防止のホームドアが電車のドアが開くのに合わせて動く形だ。

ホームドアの連動にはこれまで数千万円規模の改修が必要だったが、このQRコード式では数万円で導入できるなど、コスト削減にも貢献している。

愛知生まれのこの発明は海外でも活用されていて、アメリカのシアトル州にある店員のいないコンビニ「Amazon Go」では、入店時に個人認証をする際、QRコードが使われているという。導入が低コストで済むため、途上国で社員証などのIDカードでも普及が進んでいる。

まだまだ広がる活躍の場…開発者も期待する「想像しない使い方」

昔ながらの囲碁をヒントに生まれ、いま、最先端のサービスにどんどん広がっているQRコード。開発者の原さんが期待する新たな分野とは…?

原さん:
(災害時などは)個人に医療情報が入ったQRコードを持たせることによって、避難所などで読ませて適切な診察を受けられるとかそういう使い方に今後期待しています。これからもいろんな皆さんのアイデアでいろんな使い方ができると思いますし、我々も想像していない使い方もありますしね、それがあると嬉しいですね

(東海テレビ)

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