新宿を起点に首都圏を走る小田急電鉄。
その小田急電鉄がすすめる温かい取り組みが、ネットを中心に話題となっている。利用客が落とし物を届けたり急病人の看護などを手伝うと、駅係員から「Thank youカード」を手渡されるというのだ。
カードの大きさは名刺サイズでデザインは現在2種類。一つは「Thank you」の文字と、ハートマークに小田急のロゴが表記されたもの。さらに11月から新たなデザインが加わった。
新デザインは駅名標をモチーフにしたもので、前駅にあたる箇所に「小田急」、次駅にあたる箇所に「お客さま」とあり、それを結ぶ中央には「ありがとう」の文字が見える。
また裏面は、感謝の意と、駅名のチェック欄、担当者印が押せる欄がある。駅名の記載は全70駅を6管区に分けており、例えば下の画像のカードは、新宿駅から代々木上原駅までの駅係員が携帯しているものになる。
文字が中心のシンプルなものから、鉄道会社らしい新たなデザインも加わり、渡された人の心も温まるような「優しい世界」を感じさせてくれるのではないだろうか。
でもそもそもなぜこのようなカードを作ったのか? そして新しいデザインができた理由は?
小田急電鉄の担当者に話を聞いた。
始まりはお忘れ物を届けた人への感謝の気持ちを伝えるため
――「Thank youカード」はいつから渡している?
お忘れ物・落とし物のお届けや急病人の看護などにご協力をいただいたお客さまに、2016年3月からお渡ししています。最初は、通勤中などでお忙しい中、忘れ物をお届けいただいたことへの感謝の気持ちと、「当社社員が責任を持ってお預かりします」という思いを込めて始めました。
――カードを渡すのは、忘れ物の届出だけではない?
はい、現在は忘れ物のお届けだけに限定せずに、急病人の看護などさまざまな場面でご協力いただきましたお客様に配布しています。
よりお客さまへの感謝の気持ちが伝わるように、この11月にカードの文言やデザインを一新し、従来の「ご協力ありがとうございます」から「このカードは、お忘れ物をお届けいただきましたこと ご協力いただきましたことへの 感謝の気持ちをお伝えするものです」と裏面の文言を変更したものを追加いたしました。
新デザインは社内公募で決定、駅名標がモチーフ
――新カードのデザインはどうやって決めた?
駅係員が所属する部署内で公募して、決定いたしました。
――新デザインにある「O E R」と「39」の意味は?
社名の「Odakyu Electric Railway」の頭文字と、「感謝の気持ち(サンキュー=39)」からデザインいたしました。
――カードは車掌や駅係員ら全員が持っている?
車掌や運転士の乗務員は携帯していませんが、駅係員は全員携帯しています。感謝の気持ちを込めて配布していますが、安全確認など優先すべき業務がある場合などにも、できるだけカードを渡すように努めています。ただ、なかなか全員にはお渡しできていない状況もあります。
「好意的に受け止めていただき大変うれしく思います」
――旧デザインのカードはどうなる?
従来のカードからの切り替えとなるため、なくなり次第で終了となります。
――ネットなどで話題になっていることをどう思う?
当社の取り組みを、このように好意的に受け止めていただき大変うれしく思います。より一層、感謝の気持ちを持って意欲的に業務に励まなければならないと気を引き締めると同時に、皆さまに安心していただけるサービスに努めて参ります。
もちろん善意で忘れ物の届け出や急病人の看護をする人は多いと思うが、こうした形で感謝の気持ちを伝えてもらえると、やはりうれしいもの。
同様の取り組みは東京メトロでも2018年からおこなっているようだが、この優しい世界がさらに広がっていくことを期待したい。