二十四節気の「立冬」を過ぎて、これから徐々に冬本番となっていく。
関東では、11月8日、白砂山で今シーズン初の初冠雪となり、いよいよ雪のシーズンが近づいてきた。

そうした中、今、SNSで話題になっているのが、気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さんの“雪結晶をスマホで撮る方法”だ!
こちらが荒木さんが撮影した雪結晶だ。

撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
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撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎

スマホで撮ったとは思えない美しい写真ばかりだ!そして、雪結晶にはさまざまな形があることもわかる。
これらの写真を撮影した荒木さんに、編集部では、昨年1月に荒木さんが関わる「#関東雪結晶プロジェクト」について取材していて、「スマホでの雪結晶を撮る方法」についても聞いていた。
(参考記事:「#関東雪結晶」ってなに? 気象研究所が投稿を呼びかけるワケ

「#関東雪結晶プロジェクト」とは、雪が降る仕組みの実態の解明を目的に関東甲信地方に住んでいる人から、雪が降ったときに、雪の結晶の画像をTwitterやメールで送ってもらうプロジェクトだ。

前回の取材からおよそ2年経つわけだが、「関東雪結晶プロジェクトはどこまで進んだのか?」
そして、雪のシーズンを前に、改めて「スマホでの雪結晶を撮る方法」を荒木さんに聞いてみた。

雪の結晶から2種類の低気圧があることが判明

――前回の取材以降どれくらい雪結晶の投稿はあった?

2018年1月22日の大雪時には1日で約2万枚の画像提供がありました。
2017~2018年は雪が多かったのでひと冬で約6万枚、2018~2019年は雪が少なかったので約1.5万枚でした。

――雪の降る仕組みの解明はどこまで進んだ?

日本気象学会2019年度秋季大会で研究成果の一部を発表しました.
首都圏で観測された雪結晶の種類を分類し、それをもたらす雲や低気圧の特性を調査したところ、樹枝状や針状、角板状、角柱状、交差角板状、砲弾状など様々な結晶が混ざって降る低気圧と、ほとんどが樹枝状と雲粒付結晶で、交差角板状・砲弾状が全く見られない低気圧の2種類があることがわかりました。

撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
樹枝六花(じゅしろっか)  撮影:荒木健太郎
樹枝六花(じゅしろっか)  撮影:荒木健太郎
雲粒付着した六花  撮影:荒木健太郎
雲粒付着した六花  撮影:荒木健太郎

――低気圧が2種類あることがわかったことで、我々の生活にどう関係してくる?

これらの低気圧はかなり明瞭に区別でき、前者が前線を伴う温帯低気圧、後者のほとんどが前線を伴わない低気圧で、雲の背の高さや低気圧に伴う暖湿気流入の強さなどによって雪結晶の種類が変化することがわかってきました。
特に交差角板状・砲弾状の結晶は低温型結晶と呼ばれる-20℃以下の環境で成長する結晶で、サラサラしていて流れやすいために表層雪崩の要因になることが指摘されています。
そのため、同じような降雪量の予想があったとしても、低気圧の種類によって雪崩発生のリスクが異なるといえそうです。

――今シーズンも雪結晶の写真投稿は必要?

もちろん必要です。
大雪時を含め1事例あたりの画像数はそれなりに多いのですが、降雪事例数としては2016年以降、現在まででまだ10事例程度です。
統計的な解析を行って実態解明を行ったり、レーダーによる降水粒子判別技術の検証や数値予報モデルの検証にはより多くのデータが必要になります。

ポイントは最大ズームで連写 「スマホ用マクロレンズ」もオススメ

――改めて、雪結晶をスマホで撮る方法を教えて!

こちらがポイントとなります。

暗い色の生地を背景にします。
あらかじめ外で冷やしておくと雪結晶が融けにくくなります.
雪結晶が着地してすぐがシャッターチャンスです.
スマートフォンのカメラで最大ズームして接写して連写します.
スマートフォン用マクロレンズなしだと約10cm、 ありだと数cmまで近づくとピントが合います。
★少しの手ブレでもぼやけてしまうので連写しましょう
手首を地面につけるなどして固定すると手ブレしにくいです。

撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎

――撮影に最適な時間は?

時間は明るい日中が撮りやすいですが、夜間でも100均で売っているペンライトなどで照らして撮影はできます。

――1ランク上の写真を撮るコツは?

夜間にライトを当てるとそのぶん融けるのが早まるので撮影の難易度はちょっとだけ上がりますが、雪結晶で偏光して虹色にキラキラ輝く様子も見られるのでオススメです。

雪というとイメージしやすい樹枝状などは見られやすいですが、鼓状などの面白い形の結晶を探してみるのも面白いと思います。

あとは、事前に霜結晶を撮影してトレーニングしておくのも良いです。

鼓状の雪結晶 撮影:荒木健太郎
鼓状の雪結晶 撮影:荒木健太郎

撮影しやすい「霜結晶」とは

――霜結晶を撮影するには?

霜結晶は、空気中の水蒸気が凍ってできる氷の結晶です。

霜の結晶はもともと低温環境で成長するものなので,雪結晶よりは融けにくく撮影しやすいです。朝陽がさしてくると急速に温度が上がって融けていきますが、朝陽がさすと融けながら虹色の美しい輝きを放ちます。
このような時間を私はシンデレラタイムと呼んでおり、美しく輝く霜結晶を観察できます。

撮影:荒木健太郎
撮影:荒木健太郎

――撮影する上での注意することは?

しっかりと防寒して周囲の安全を十分に確認の上で撮影するのがポイントです。
また、スマホを濡らすと故障の原因になるので気をつけるということと、SNSに掲載する際には個人情報(住所など)がわからないように注意する必要があります。

――関東ではいつ雪が降りそう?

最新の天気予報を活用して雪予報をチェックして下さい。



自分の撮影した美しい雪結晶の写真をSNSで自慢しつつ、それが気象庁の研究資料にもなり、災害リスクを減らすことにつながるかもしれない。
雪が降った日には、しっかり防寒対策して周囲の安全を確認した上でスマホでの雪結晶の撮影を試してみてはどうだろうか?

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。