水族館のポスターには思えない…
通勤通学の電車内でぼうっとしつつ、つり革につかまっている最中、ふと目に入ってくる派手な見出しの中吊り広告に、ついつい目を奪われてしまうこともあるだろう。
こうした中、ある水族館が、いわゆる週刊誌と見まがうようなデザインの中吊り広告を掲載し話題になっている。
まずは、こちらの画像を見て欲しい。
「トドの岩登り全真相解明」
という右端の大きな見出しのほか、画像付きで「『自由すぎる? ペンギンショー』その実態」「おたる水族館に巨大タコ壷出現!! タコの驚くべき能力に愕然!!」という、引きの強い言葉が並ぶ。「担当者インタビュー」と記載された箇所では、「本当はタコなんて嫌いだ。でも凄い!」という中吊りにありそうな衝撃的な告白も飛び出す。
これは、北海道小樽市にある「おたる水族館」が作成している車内広告ポスター。かつては、他の水族館にもみられるオーソドックスなポスターを手がけていたとのことだが、2019年3月から掲出される分のポスターから、こうした方向転換を図ったという。
先ほどの第1弾ポスターは6月までのもので、11月24日まで掲載されていた第2弾ポスターも「言うことを聞いてくれないペンギンたちのショー。なぜかホッとして癒される。」「イルカとともにトレーナーが空中に飛び出していく。なぜ限定した期間しか見ることができないのか。」といううたい文句が続き、同様の路線を踏襲している。
今年に入り、大きな変化を遂げた「おたる水族館」の車内ポスターだが、なぜ「週刊おたる水族館」風の中吊り広告にしたのか?そして、来場客数にもいい影響がでているのか?
「おたる水族館」の担当者に話を聞いてみた。
「おたる水族館、どうした?!」
ーーこのポスターを作り始めたきっかけは?
詳しくはお話しできませんが、他社さまとの話し合いの中で、結果的に意匠の使い方を本年から変更したことが理由に挙げられます。
ーーなぜポスターのデザインをこのスタイルにしたの?
それまでのイメージ先行のものから、じっくり読んでいただき、ちょっとクスッと笑えるようなものにしたかったからです。中吊り広告ならじっくり読んでいただくことができると考えました。
ーーでは、2019年3月からの第1弾ポスター、その反響は?
デザインの変化から、「おたる水族館、どうした?!」という声もあったようです。
スタッフが文言などを考案
ーーポスターの文言や画像は、スタッフがすべて用意している?
スタッフが考えています。最初は思い付きのような感じから始まり、そこから内容を精査して1週間ほどかけています。
ーーポスターには「言うことを聞かないペンギンたちのショー」とあったが、どうして言うことを聞いてくれないの?
もともと野生動物なので、普通に飼育しているだけでは、人の言うことは基本的に聞きません。訓練すればいわゆる「ショー」の形にはできますが、敢えてそれをせずに「自由気ままなペンギンたちに翻弄される飼育員」といったショーにしています。
ーーまた、「タコは11月24日まで休まない」ともあるが、これはなぜ?
冬季営業前の閉館(11月24日)まで、特別展「蛸(たこ)」を行っているため、そのように表現しています。
ーー文言や写真で心がけていることは何?
思わず見入ってしまうようなタイトルや文言を使いながらも、決して嘘がないように心がけています。
ーーこのポスターはどこで見ることができる?
札幌近郊のJR車両内および、札幌市内、小樽市内を走行している北海道中央バスの車内で拝見できますが、今回の物は11月24日で一度外し、別のものに変更する予定です。
来場者は10月末時点で、前年比約2万2000人増
ーーポスター制作後、入場者数は変わった?
今年は昨年よりはたくさんの方にご来館いただいており、10月末時点で前年比で約22000人増です。ただし、昨年9月に起きた地震の影響もありますので、一概にポスターだけの効果とは言い切れません。
ーーポスターを見た人の反応を聞かせて?
来館されたお客様に直接お伺いすることはありませんが、ウェブ上などではたくさんの反応があるようです。
一作目を掲載した際に、ある週刊誌の方がウェブ上で「おたる水族館の広告と似ていると言われている週刊〇〇です」と呟いておられたとは聞きました。
ーー第3弾のポスターはいつごろの発表になりそう?
2019年12月上旬から、新しい車内吊り広告としてご覧いただけると思います。
ーー最後に、ポスターを見た人に何か一言を。
ポスターはあくまで入口です。ご来館いただければもっと楽しい発見や体験が待っています! だまされたと思って一度おたる水族館へ足を運んでみてください!
ポスターがどれほど影響しているか分からないとはいうものの、おたる水族館は「前年比来場者増」というしっかりとした結果を出していた。
第3弾の車内ポスターはまもなくで12月上旬からということだが、“おたる水族館 砲”の文言に興味を惹かれた人は、12月14日から冬季営業が始まるので足を運んでみてはいかがだろうか。
(画像提供:おたる水族館)