「半永久的に静電気が貯められる液体」を開発

スマホやノートパソコンなどの電子機器や腕時計、リモコン…。

今や日常生活において電池が必要な製品であふれ、1日1回は充電や電池の交換をしている人が多いのではないだろうか?

そのような中、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループが「半永久的に静電気が貯められる液体」という、何だかよくわからないけれど、すごそうな物質を開発したことが分かった。

この物質は、「ポルフィリン」という有機化合物を、「分岐アルキル鎖」という鎖状の炭水化合物で囲んだもの。

ポルフィリンは静電気を帯びることができ、これを炭水化合物の鎖が囲むと安定した構造になり、静電気を半永久的に貯められる液体になったのだという。

さらに、心拍や脈拍という非常に小さな振動を電気信号に変換でき、しかも伸縮、折り曲げなど様々に変えられる形で実現した。

でも「半永久的に静電気が貯められる液体」は、一体、どういった点で優れているのだろうか? また、具体的にはどのようなことに活用できるのか?

研究グループのリーダー、中西尚志さんに話を聞いた。

開発者「電池が必要なくなります」

――「静電気を半永久的に貯められる液体」はどういった点で優れている?

“静電気を物質表面に貯めることのできる物質”はこれまでも存在していました。
ただし、それは、固体やフィルム状で、成形や加工をすることが難しいものでした。

そこで、私たちの研究グループは、液体の表面と内部に静電気を貯め、かつ、安定に保持できる物質を開発しました。

液体ですと、流動性がありますので、どのような形状に対しても適応できます。

「曲げる」、「引っ張る」、「巻きつける」、「丸める」といった動きに対しても、構造のない液体なので、その機能は変わることはありません。

(左)開発した液体(右)伸縮・折り曲げ可能な素子(電子部品)
(左)開発した液体(右)伸縮・折り曲げ可能な素子(電子部品)
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――静電気を半永久的に貯めることができると、どのようなメリットがある?

電池が必要なくなります。

「歩くと発電する靴」が作れる可能性も

――「静電気を半永久的に貯められる液体」は、どのようなことに活用できる?

伸縮、折り曲げや様々な形状の変形に適応できるため、電池を使わずに駆動する「脈拍センサ」などの医療・ヘルスケア分野での活躍が期待できます

また、常に稼働する(動く・刺激を与える)部位に貼り付けておくだけで、電気を供給できる仕組みを作ることもできます。

たとえば、「靴の中敷きに入れておいて、歩くと発電する」、「キーボードをタイピングすると発電し、パソコンの省エネ化ができる」など、です。


――実用化に向けた課題は?

大きく、以下の3つです。

・液体内に蓄積できる静電気の量を増やすこと。
・素子(電子部品)の耐久性を向上させて、静電気を安定に保持すること。
・この液体の機能を最大限に発揮できる、「脈拍センサ」など、素子(電子部品)の素材や構造を確立すること。


まだまだ課題の解決は難しそうだが、すごそうな「静電気を半永久的に貯められる液体」。

実用化されれば電池が必要なくなり、「歩くと発電する靴」や「タイピングするだけで発電するパソコンのキーボード」の開発につながる可能性があるのだという。

2019年ノーベル化学賞受賞の吉野彰さんが開発した「リチウムイオン電池」は、現代においてなくてはならない存在となった。今回の開発がどのように世の中を便利にしていくか、今後に期待したい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。