安倍政権…対応に次ぐ対応の7年間

内閣の要として安倍首相を支え続けている菅義偉官房長官
内閣の要として安倍首相を支え続けている菅義偉官房長官
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11月20日、安倍首相の第1次内閣を含めた総理大臣通算在職日数が、桂太郎元首相を抜き歴代最長となる。「安倍一強」と呼ばれる長期政権が続いている原動力は何なのか、そこに問題は潜んでいないか。FNNは2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、内閣の要として安倍首相を支え続けている菅義偉官房長官にインタビューした。聞き手は「Live News it!」の土日のキャスター・奥寺健アナウンサーが務めた。

奥寺:「歴代最長の政権になります。率直な今の気持ちは」
菅長官:「総理もご一緒だと思いますけども、とにかく何をなすべきかということを掲げて政治主導で改革を実行してきていると、いつの間にか来月でもう7年になるわけですからそんな感じかなという気持ちだと思いますよ」

奥寺:「いつの間にかなんですか」
菅長官:「はい、そう思います。実は次から次へと休む暇なく色んな課題がどんどんと、一つの課題を解決するとまた次必ず来ますから権力というのはある意味でそういうものかなと思っています。それに対応してきているうちにもう7年かなと、そういう感じですね」

菅官房長官が口にしたのは「権力」の2文字、そして、直面する課題への「対応」の連続についてだった。

長期政権“ピンチ”の連続

首相官邸は、様々な政策を決定する「権力」の行使を担う一方、様々な事象への「対応力」が問われる。直近で言うと今年9月の第4次安倍改造内閣発足後、わずか1か月余りで地元有権者に秘書が香典を渡したなどと報じられた菅原経済産業相が辞任、そのおよそ1週間後には妻の選挙違反疑惑が報じられた河井法相が辞任する、いわゆる“辞任ドミノ”が起きた。

菅原経産相と河井法相の“ドミノ辞任”
菅原経産相と河井法相の“ドミノ辞任”

さらに大学入試に関する英語の民間試験導入や総理主催の「桜を見る会」をめぐっても追及が続き、長期政権による権力の増大が、おごりや歪みを招いているとも指摘されている。

総理主催の「桜を見る会」
総理主催の「桜を見る会」

安倍首相や菅長官は、閣僚の問題については、発覚後比較的早めに事実上の更迭に動き、英語民間試験も批判を受けて来年度からの実施取りやめに、桜を見る会も来年度の実施を中止するなど、懸命に“火消し”の対応にあたった。

今回のインタビューは、「桜を見る会」をめぐる問題が大きくなる前に行われたので、この問題についての菅長官の見解を質すことはできなかったが、こうした様々な問題への対応も含め危機管理と向き合い続けてきた7年間について聞いてみた。

奥寺:「7年になる訳ですがピンチというのはなかったんですか」
菅長官:「ある意味ではピンチの時って、ずっとありますよ。やはり。政権に安定して、ゆっくりする、ゆったりするというときはなかなかないですよ」

奥寺:「今まで一番危なかったのはいつですか」
菅長官:「今まで一番どうということは、なかなか言いにくいですけどもやはり常に緊張感をもってこの政策運営・政権運営に取り組んできましたから、常にそういう気持ちで取り組んできているということが、結果として、こんにちまで続いてきたのかなという風に思っています」

 
 

奥寺:「例えば現時点で言えば相次いで閣僚が辞任するのは、これはピンチではないですか」
菅長官:「閣僚がですね、組閣から1か月半の間に2人の方が辞任をされました。このことについては国民の皆さんにですね、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。と同時にやはり政権運営に国政に遅滞を生じさせることはできませんからそうしたことを最小限にして、そして行政を前に進めていくと、そうしたことが大事だと思っていますのでそういう中でいま、全力で取り組んでいるということですよね」

奥寺:「ただ国政を遅滞させない責任というのと任命の責任というのは別の問題ではありませんか」
菅長官:「ただですね、やはり大臣を任命します。その2大臣が今回辞任されたということは本当に国民の皆さんに申し訳ないと思います。しかしそこは国民の皆さんもやはり国政を遅滞停滞させないでしっかりやってほしいというのはそうじゃないでしょうか。それは緊張感をもって閣僚一人一人が自覚をして進めていくというそのことが一番大事なことだと思います」

長期政権の実績の一つとして、数字に見える経済を強調

こうした閣僚の辞任も含め、数々の政権のピンチがありながら、安倍政権がそれを乗り越え“最長不倒”に至る、その原動力は何か、菅長官に聞いた。

奥寺:「これだけ安定的な政権が続いたその一番の理由は」
菅長官:「安倍政権というのは総理を先頭に何をなすべきかということを明確に掲げてその方向に向かって、政治主導で改革を遂行してこの国を前に進めてきている政権、その中で経済再生最優先、そして外交安全保障の再構築、さらに全世代型社会保障制度の実現、こうしたことを掲げてその目標に向かって進んできている、そしてそのことの成果が見えてきているからじゃないでしょうか」

さらに菅長官は、具体的数字を挙げて、政権の経済政策の実績を強調した。

「例えば経済は、安倍政権ができる前というのは、為替は80円前後、株価も8000円台ですよ。企業が日本で経済活動を行おうとしても行うことが出来ない状況だったんですね。アベノミクスと言われる3本の矢を矢継ぎ早に放った結果としてですよ、有効求人倍率(全国平均)は当時0.83倍でしたけど今は1.57倍です。バブルの時ご存知ですか?1.46倍だったんです。ですから非常に働く場所をまず確保することができた。経済全体としてやはり1割以上、拡大をしていますから。ですから雇用が、いわゆる働く人口=生産年齢人口が500万人減っているにもかかわらず384万人と差し引き増えていますから。そうしたことが国民の皆さんにも少しずつ分かっていただいてきているのかなという風に思っています」

 
 

奥寺:「やはり数字というのは非常に強いですよね。ですからそういう比較ができますけども、人の感じ方という意味では豊かさをどれだけその人たちが感じられるか、そこも大きな問題ではないかなと」
菅長官:「そうですよね。良くなっていると言われる方非常に少ないですよね。ただ全体とすればそういう方向になってきていますよね。そして政権というのは常にこの東京を中心とするこの経済圏、しかし日本全体を良くするには地方が良くならなければ日本全体って良くならないんですよね。東京を中心とする首都圏3県、神奈川、千葉、埼玉これを入れたところで消費額は全体の3割ですよ。7割は首都圏以外ですからそうしたところで地方創生という大きな目標を掲げて、そしてインバウンド、これ地方創生の切り札と位置付けています。農業もそうです柱です。こうしたことを掲げて、例えばインバウンドも836万だったんです、政権交代前、昨年は3119万人ですから、消費も1兆円少しだったものが4兆5000億円ですから。そして政権として、首都圏だとか京都だとかゴールデンルートと言われていますよね、そこだけではなくて地方を訪れてもらえるような政策誘導も政府としてやっているんですね。ですから地方にも外国人の方が訪れることが不思議ではなくなってきた当たり前のことになってきていると思うんですよね」

島根県の松江城で入場料のキャッシュレス払いなどを視察・11月4日
島根県の松江城で入場料のキャッシュレス払いなどを視察・11月4日

景気回復の実感が乏しいとの声については、地方の経済が良くなることが重要だとして、自ら力を入れている訪日外国人の増加などが地方経済を底上げすると指摘した菅長官。ここで、蜜月とされる一方、溝を指摘する声も一部にある安倍首相との距離感について聞いた。

鳥取県境港市で日本酒の輸出に取り組む酒造会社を視察・11月4日
鳥取県境港市で日本酒の輸出に取り組む酒造会社を視察・11月4日

円満の秘訣は毎日の意思疎通

奥寺:「安倍総理が考えていることと長官考えはぴったり今も合っているものなのか」
菅長官:「それは一致しています。それは総理と官房長官が一体でないと政権というのは中々難しいと思いますよ。ですから私は物事を決めるときに必ず総理にお伺いを立てて、総理のご了解を頂いてから進めていますよ、もちろん。意思疎通を図るように1日に何回かお会いをしております」
奥寺:「これだけお忙しい中で」
菅長官:「はい、ただあの前もって時間をとってもらうということではなくて、すぐ、空いているときに行くということですよね」

 
 

“令和おじさん“の見つめる先は――

そして今後の政局の焦点であり、菅長官の名前もあがる「ポスト安倍」についても直撃した。

奥寺:「どうしても伺いたいのですが、ポスト安倍これからの次の総理大臣ということで長官ご自身はどうですか可能性としては」
菅長官:「私はいろんな方からお話で聞かれたことはありますけど、全く考えていません」

奥寺:「ということは、やらないというわけではない」
菅長官:「いやいや、そんなこと考えていないということです。今私どもは安倍政権というのはまだ2年あるわけですから、そこの中で何をやるべきかということ。そこがやはり一番大事なことだと思いますよ」

奥寺:「周りの方が長官をめぐっていろいろ考えたりはなさると思います」
菅長官:「色んなマスコミありますけど、そこは全く考えていないということです」

鳥取県の大山隠岐国立公園で観光客に囲まれる菅長官・11月4日
鳥取県の大山隠岐国立公園で観光客に囲まれる菅長官・11月4日

奥寺:「官房長官としてかなり前の段階で歴代最長になったわけですけど、令和という新しい時代がきて、令和おじさんという言い方も出て、途端に周りが長官に総理をやっていただきたいと思う人も出てきたような印象がある」

菅長官:「令和を発表させていただいてから知名度が上がったことは間違いないですよ。どこへ行っても高校生とかそういう人たちが多いですよ圧倒的に」

史上最長の政権を支え続ける「令和おじさん」は満面の笑みを浮かべ、インタビューは終わった。

 
 

(フジテレビ政治部)

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日本の将来を占う政治の動向。内政問題、外交問題などを幅広く、かつ分かりやすく伝えることをモットーとしております。
総理大臣、官房長官の動向をフォローする官邸クラブ。平河クラブは自民党、公明党を、野党クラブは、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など野党勢を取材。内閣府担当は、少子化問題から、宇宙、化学問題まで、多岐に渡る分野を、細かくフォローする。外務省クラブは、日々刻々と変化する、外交問題を取材、人事院も取材対象となっている。政界から財界、官界まで、政治部の取材分野は広いと言えます。