東京・新宿区のイベントスペースに観客がぎっしり詰まっていた。クラリネットの鮮やかでふくよかな音色がホールを満たしていく。
行われたのは、世界トップクラスのクラリネット奏者でつくるアンサンブルによるコンサートだ。
参加者は元ウィーンフィル首席奏者のペーター・シュミードル氏のほか、ウィーン放送交響楽団首席奏者のヨハネス・グライヒヴァイト氏ら世界最高峰の楽団で活躍するトップのクラリネット奏者ら6人。
このメンバーが一同に集まって演奏することは、世界のどこにおいてもめったにない。
まさに“ドリームチーム”だ。

左から、マティアス・ショルン氏(ウィーンフィル首席)、ヨハネス・グライヒヴァイト氏(ウィーン放送交響楽団首席)、マンフレート・プライス氏(ベルリンフィル)、フェルディナント・シュタイナー氏(ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団首席)、ノルベルト・トイブル氏(ウィーンフィル)
左から、マティアス・ショルン氏(ウィーンフィル首席)、ヨハネス・グライヒヴァイト氏(ウィーン放送交響楽団首席)、マンフレート・プライス氏(ベルリンフィル)、フェルディナント・シュタイナー氏(ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団首席)、ノルベルト・トイブル氏(ウィーンフィル)
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なぜ、音楽ファンにとって奇跡ともいうべき今回のコンサートが実現できたのか?
当初、日本とオーストリア国交樹立150周年を記念して、3人の奏者によるコンサートが行われる予定だった。
しかし、台風19号で在日オーストリア大使館も影響を受けてしまったため、中止となってしまう
一方、ちょうどウィーンフィルとベルリンフィルも来日していた。
音楽家たちは、復興の願いをこめて声を掛け合い、その輪にその他メンバーも加わった。
その結果、急遽11月12日の夜にこの“ドリームチーム”が結成され、チャリティーコンサートが行われることになったのだ。

元ウィーンフィル首席奏者 ペーター・シュミードル氏(78)
元ウィーンフィル首席奏者 ペーター・シュミードル氏(78)

バッハの「G線上のアリア」やモーツァルトの「クラリネット協奏曲」など、定番曲からトップ奏者ならではのアレンジ曲まで2時間以上演奏が行われた。
曲目もその日の午後に練習しながら決めたということだが、世界一流の奏者の奏でるアンサンブルは素晴らしく、満場の観客たちを魅了した。

コンサート関連の仕事をしている女性は、「すごく貴重な機会でなかなか聴けないもの。時が経つのを忘れるぐらい楽しんだ」と語った。
また、吹奏学部に所属する男子中学生3人は目を輝かせながら、「これだけ近くで見られて感動した。音がきれいで指回しもすごかった。自分たちも練習がんばろう」と意気込んだ。

最年長でみんなの“師匠格”にあたるシュミードル氏は「日本に何度も来たことがあり、これまでも地震や津波の被災地で何回も励ましのコンサートを行ってきた。今回も喜んで演奏します」と語った。
コンサートは無料だが、終了後に募金活動が行われた。集まった募金は、「フジネットワークサザエさん募金」として日本赤十字社を通じて被災地に寄付される。

※「サザエさん募金」は、11月30日まで、募金を受け付けております。
詳しくは、こちらをご参照ください。

崔 雋
崔 雋

フジテレビ 報道局国際取材部所属 中国杭州市出身。一橋大学卒業後、フジテレビで新卒採用された最初の外国人留学生に。報道局経済部記者(民間企業・農水・財務・経産…)を経て、国際局やCSR推進室など報道局外の部署も経験。東日本大震災発生時、経産省と原子力安全保安院担当であれだけ福島の原稿を書いた自分が最初に現地に行ったのは被災地支援のCSR活動だった。