ソーラーパネルからスマホまで“メードイン北朝鮮” 電力不足でも「泣き寝入りしない」 

北朝鮮取材記

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  • ゴミが落ちていない平壌の街
  • 進む「メードインNK」化
  • “制裁慣れ”の背景は…

ゴミが落ちていない平壌の街

10月末、2年ぶりに平壌を訪れた。前回来た時よりも国際的な制裁はさらに強まっているはずだが、街中では普通に自動車が通り、スマートフォンを手にする人も多く見られた。少なくとも平壌市内では目に見えて生活が苦しくなっているような様子はなかった。経済的な行き詰まりによる社会の乱れや、治安の悪化といった様子はまるでない。

北朝鮮の人は礼儀正しく、マナーも良い。平壌市内では掃除をしている人をよく見かけ、道路にはゴミ一つ落ちていないと言っても過言ではない。聞くと、職場や地区ごと、必ず掃除当番が決まっており、自分たちで身の回りをきれいにするのは「当たり前」なのだという。制裁下にあって社会全体の“安定”が崩れている様子は見られなかったが、都市との格差が大きいとされる地方や農村に行く機会はなかった。

街の中では掃除をしている人をよく見かける

慢性的な電力不足…あちこちにソーラーパネル

しかし、夜の街は一部を除いて薄暗く、特に最近は干ばつの影響で水力発電が十分に稼働しておらず、停電も頻繁にあるという。我々の滞在中も夜、レストランで停電があったが、他の客は慣れた様子で全く動じるそぶりもなかった。北朝鮮では、電力生産の割合が水力と火力で概ね半々で、水力依存の高さが慢性的な電力供給の不安定さにも繋がっている。

こうした事情もあって、北朝鮮では自家発電用のソーラーパネルの普及が進んでいた。実際、移動中の車内から我々もマンションの部屋に取り付けられたソーラーパネルを多く見かけた。以前は中国からの輸入が中心だったが、「自力更生」の掛け声の下、自前生産シフトが進んでおり、購入後のアフターサービスも受けられることから、北朝鮮製の普及が進んでいるという。

自宅マンションにソーラーパネルを設置している世帯が多く見られた

進む「メードインNK」化

最近、街中で目立つものと言えば、電動自転車だ。かなりの台数が走っており、市民の足として定着している。日本のような「電動アシスト付き自転車」というレベルではなくスクーター並みにスピードが出る上、歩道を走るので、ぼんやり歩いていると危ない。これも数年前までは中国からの輸入が多かったが、今は北朝鮮製が増えているという。制裁下のエネルギー事情もあって「マイカー保有は奨励していない」ということも普及の背景にあるのかもしれない。ちなみに地元の人によると値段は日本円で2-4万円程度だという。

このようなバッテリー付きの自転車が多く走っている 後ろにナンバーも付いている

今回我々はかつて金正恩委員長も視察に訪れたという食品工場に案内されたが、以前は輸入頼りだったスポーツドリンクなども生産していた。いわゆるエナジードリンクのような飲み物で、代表チームの選手にも飲まれているという。お馴染みのエナジードリンク「レッドブル」から発想を得たのだろうか「赤い牛」が描かれているが、れっきとした北朝鮮製のドリンクだ。

エナジードリンクの解説をするメーカー担当者 元レスリング北朝鮮代表選手だ
エナジードリンクには「赤い牛」が描かれていた

かなり普及が進んだように見えるスマホも、以前は中国から輸入されていたが、今は部品を輸入した上でほぼ全てメードインNKになっているという。今北朝鮮は経済的に他国に隷属しない「自立経済強国」を掲げている。街中では金委員長自らが掲げる「自力更生」のスローガンが至る所で見られ、自分たちで作れるものは作る、という機運が以前よりも更に増したように感じた。

街中にはあちこちに「自力更生」を呼び掛けるスローガン

「泣き寝入りはしない」…原発、“世界最大級”潮水力発電も

政府に政策を助言する社会科学院経済研究所の教授は、我々に対し「エネルギーはまだ“緊張”している」と制裁の影響があることを率直に認めた。朝鮮語の「緊張」には需給バランスに余裕がない、などのニュアンスがある。その上で、原子力発電、潮水力発電の計画を進めていることを明らかにした。これらの計画は金正恩委員長が「2019年新年の辞」で言及しているものだが、潮水力発電に関しては、黄海側に世界最大級の発電所を作る具体的な計画があることを明らかにした。観光業などの経済建設にも力を入れているといい、教授は「これまでも制裁、経済封鎖を乗り切った力がある」として、「決して泣き寝入りはしない」と強調した。

“制裁慣れ”の背景は…

北朝鮮では、一般的に職場での勤務は「週4」で、「週1」で勤労奉仕、毎週土曜日には、職場や地区ごとに「学習会」が開かれ、週休は1日しかない。勤労奉仕は季節に応じて農作業を手伝ったりするもので、「学習会」とは、金委員長の政治思想などを学習するものだ。北朝鮮の社会全体がいわば“制裁慣れ”し、容易に屈しない背景には、こうした思想面での統制が隅々まで行き渡っている現状が支えているといえそうだ。

金日成主席が描かれた壁画に敬意を払い献花する人々

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

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