“天皇陛下に謝罪要求”の文喜相議長が新提案
今年2月に、慰安婦問題をめぐって天皇陛下(現・上皇さま)の謝罪が必要だとの認識を示した韓国の文喜相国会議長が来日し、5日夜、早稲田大学で講演した。
この記事の画像(6枚)この講演の中で、文議長は、日韓の企業と国民の寄付に基づいて新たな基金をつくり、元徴用工らに支給する法律案を示した。元徴用工問題だけでなく、慰安婦問題も一括して解決するという。
これに対し、菅官房長官は、6日の記者会見で、「他国の立法府の議論について、政府としてコメントすることは差し控えたい」としながらも、「政府の立場は一貫をしている」と述べ、否定的な姿勢を示した。
また、政府関係者も「現実的でない」と語った。
文議長の提案を、日本側は受け入れられないのか。
日韓問題に取り組んできた保守系議員、自民党の新藤義孝政調会長代理は、受け入れられない3つの理由をあげた。
自民保守派は「検討材料にならない」
「統一された意志のもと、きちんと検討された、国としての提案とは受け取れない。韓国政府からのきちんとした提案でない限り、外交上の検討材料にはならない。」
まず新藤氏が指摘したのは、あくまで韓国の国会議長の案であり、正式な韓国政府の提案ではない点だ。これでは論評にすら当たらないと指摘した。
日本企業の寄付は「論外」
新藤氏は、2点目として、韓国だけでなく、日本の企業と国民にも「寄付」を募ることについて、こう語った。
「請求権協定をご存知の方であれば絶対提案できない内容で論外だ。」
日韓両政府は、国交正常化にあたり、1965年に「日韓請求権協定」を結んだ。日本が韓国に5億ドルの経済支援を行うことで、両国間の請求権問題は「完全かつ最終的に解決した」という内容だ。
徴用工訴訟をめぐり、日本政府は一貫して、戦後賠償の問題は「解決済み」としている。そして、韓国の大法院が日本企業に賠償を命じたことは国際法違反で、韓国側が是正すべきだと主張している。新藤氏は、あくまで元徴用工への補償は韓国側が対応すべきで、「寄付」とはいえ、日本側が負担する案は受け入れられないというのだ。
新藤氏は「1965年に交わした国と国との根本的な約束を果たすのは、韓国の国家としての責任だ」と強調した。
慰安婦基金の流用「話にならない」
また、文議長は、2015年の日韓合意によって元慰安婦支援のため設立された「和解・癒やし財団」の残金も基金に充てるとしている。この財団は、日本政府が10億円を拠出して設立されたが、韓国側が一方的に解散した。
「話にならない。癒し財団のお金が宙に浮いたので、それを別のものに使うという。そもそも拠出した資金を別のものに使っていいなどと言っていない。
韓国には、法の規範意識・ルールを守るという意思がないと思われてしまうのではないかと心配している。」
新藤氏は、日本政府が拠出した財団の資金が、事実上の“元徴用工の賠償”に使われることは受け入れられないという。そもそも慰安婦問題も、既に日韓の間で“解決済み”としていたのを、韓国側が反故にしたのだ。
新藤氏は最後に、「対応策を考えるのは韓国の問題で、私たちは常に対話の窓は開いている」と語った。
今回の文喜相議長の案を日本側が受け入れるのは現時点では困難と思われる。日韓関係の改善に向けた道筋は依然見えてこない。