滋賀・大津市がいじめの“深刻化”を予測する全国初のシステム…教育委が語るその活用法

カテゴリ:暮らし

  • 滋賀・大津市の教育委員会がいじめ深刻化をAIで予測するシステムを導入
  • 深刻化共通点「加害者指導しない」「被害者ケアしない」「当日・翌日に欠席」
  • 担当者「教職員のいじめの対処に役立てる」

滋賀県大津市の教育委員会は、全国で初めていじめが深刻化するリスクを予測するAIのシステムを作り、10月28日にその分析結果を発表した。

大津市では、2011年にいじめを苦に中学生が自殺した事件を受けて、いじめ再発防止の取り組みを行っている。その一環として、いじめ事案報告書の内容からAIが分析し、いじめの深刻化するリスクを予測するシステムを構築しようと大津市教育委員会は株式会社日立システムズ、有識者と連携し取り組んでいた。
今回、AIで深刻化のリスクについて分析したのは、2017年度~2018年度に市内の公立中学校で起きたいじめ事案およそ5000件。分析の結果、いじめを把握した際、学校が迅速に対応することで深刻化を防げることがわかったという。

資料提供:大津市教育委員会

では、人間ではなくAIの分析だからわかることにはどんなものがあったのか?
そして、今後どのようにAIを活用していくのか?大津市教育委員会の担当者に話を聞いてみた。

9年間でいじめ報告件数(※疑い含む)は130倍に!

――そもそも大津市では、いじめは増えている?

グラフにあるように、平成22年度の年間のいじめ報告件数(いじめ疑い含む)が53件だったのに対し、平成30年度は3893件。約70倍になっています。
平成22年度と令和元年度の月平均を比較すると、約130倍増えています

――昔と今でいじめの質の違いは?

質というか場所・ツールという意味では、SNSでのいじめがそうであるように、大人や教師が見えにくい環境で起こる場合が増えています。コミュニケーションの形態の多様化に伴い、いじめの場所がSNS上にも広がった、ということかと存じます。

――SNSいじめにはどんな対応をすべき?

子どものコミュニケーション力や他者理解の向上。また、携帯マナーの学習などかと思われます。

AI導入で傾向等を予測し、教職員のいじめの対処に役立てる

――なぜAIを導入した?

いじめ事案の報告件数は、いじめの早期発見が進んだことで、年々増加しています。
そうした中、的確な対処につながる新たないじめ対策が必要だと考えました。

AIを用いて、いじめ事案のデータを分析し、新たないじめ事案が起こった場合の傾向等を予測し、注意すべき点を示すことで、教職員が日々のいじめの対処に役立てるためです。

――いじめの深刻化をAIが予測するというが、“いじめの深刻化”はどのように定義している?

以下のように定義してます。
1)【被害者の状況】が以下のいずれかに該当
・「事案以後の欠席日数」について、欠席日数が3日以上
・「精神疾患発症」「身体障害」「金品等被害」「自殺企図」選択
・「その他」の詳細記載欄に何らかの記載あり
2)【指導内容】 「関係機関への連絡・相談」に何らかの記載あり
3)事態収束までの期間が4カ月以上 かつ いじめ対策委員会が5回以上開催
4)事態収束までの報告書が4枚以上提出

――AIのいじめ予測システムはどのように使う?

本市では、2013年以降、市内の小中学校がいじめの疑いを把握した場合、発覚の経緯、いじめの態様、被害者の状況などの報告書を24時間以内に作成しています。
この報告書をデータ化し、AIが分析し、深刻度を判定。深刻度を学校に通知し指導の助言をします。

――深刻度が%で表示されているが、何%だと深刻度が高い?

深刻度合いとしてスコア(%)を提示しますので、たとえ10%でも、深刻化率10%と示すものと考えています。暫定運用のシステム構築はこれからです。表示の細目は、検討の上で定めます。

――深刻化しないよう初期対応が大事だが、どんな初期対応をすべき?

被害を受けた子どもの状況に配慮しつつ、聞き取り等による正確な事実の把握と、学校内での教職員間の情報共有・方針検討、加害子どもへの指導、保護者連絡等です。本市では、いじめを疑う事案があれば、速やかにこれらに取り組んでいます。

特に危険度が高いパターンとは?

――AIの分析でいじめの深刻化のパターンも見えてきた?

AIの結果を、兵庫教育大学大学院教授の秋光恵子さんに見ていただいたところ、秋光さんは「加害者指導をしていない」「被害者をケアしない」「当日・翌日に欠席している」が組み合わさった事案で特に危険度が高いと考察されています。

――他に、人間の分析だけではわからなかったことはどんなこと?

物理的には、予測分析という機械学習で得られた成果そのものが、人による手作業や目視の範囲を超えていますので、その答えになるかと存じます。内容としては、経験則から予測した傾向がデータとして実証されたといえます。教職員が想定できたことでも、それは経験や勘から導かれたもので、データとして実際に可視化が図れたことに意味があると思います。

――今後、AIをどう活用していく?

深刻化の予測モデルの構築に至りましたが、まだ第一段階です。
この段階での現場への還元(深刻度のチェック、初期対応の不備の防止、初期対応チェックリストの作成、いじめの傾向や特徴を記したリーフレットの配布、教職員のいじめ対処のスキル確保のための研修)には取り組みますが、引き続き、大津だからこそできることとして、更なる分析(新たな予測モデルの構築、データ母数増による予測精度の向上)を行いつつ、他の市町とも連携して産官学で取組を広げ、市域を超えたより多くの子どものいじめ防止等に役立てたいと考えています。


SNSの普及などで教師や大人が見えにくい場所でのいじめが増えているというが、いじめ把握から24時間以内の加害者指導で、深刻化は半減するという。
AIの導入はまだまだ始まったばかりだが、担当者が話すように今後、市域を超えて行うことで、予測精度を高め、うまく活用していじめ撲滅につなげてほしい。