ヨコメシが苦手な理由

大学入試の英語民間試験が延期になった。天下の愚策だ。

なぜ延期してはダメなのか。
ここからは先週の英語コンプレックスの続き。
僕の場合「読む」は何とかできるが、「聞く」「話す」「書く」が苦手な典型的な日本人の英語である。だから「ヨコメシ」の時は緊張する。ヨコメシとは外国人と横並びでテーブルに座って、英語をしゃべりながら、洋食を食べる事。つい最近も日本の外交官に誘われ在京の欧州某国の大使公邸でのヨコメシランチに夫婦で行った。選挙前だったので僕は得意の議席予測の話をして大ウケしたので良かったが、あれがなければヤバかった。絶対、間が持たなかった。

英語の民間検定の延期を決断した、と述べる萩生田文部科学相(1日)
英語の民間検定の延期を決断した、と述べる萩生田文部科学相(1日)
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僕の英語コンプレックスの原因は単純に「読む」ばかり勉強して残りの「聞く」「話す」「書く」をやらなかったからだ。でもしょうがない。日本の英語教育がそうだったのだ。だから自分の娘には早いうちに英語に慣れて、コンプレックスを持つことなく英語を使ってほしい。

なぜ英語民間試験を延期するのか

だから大学入試の英語民間試験には大賛成で、いろいろもめた末に6割以上の大学が参加を表明したのでホッとしたところだった。

それが萩生田文科相の「身の丈」発言で、あっさり延期となってしまった。野党やメディアは萩生田発言に引っ掛けて英語民間試験に対し「地方でお金持ちでない家の子供は教育を受ける権利がないのか」と批判したのだが、すごい論理の飛躍だ。何をもってそんな話になるのだろうか。

しかし菅原、河井両大臣の更迭で守勢の安倍政権はあっさり英語民間試験を延期してしまった。

大事なのは柔軟性、思考力、創造性、協調性

昨日、元文科相の下村博文・自民党選対委員長と延期の可能性について話した時、彼は「大学の入試改革をそんなに悠長に構えていいのか」と怒っていた。確かに日本の大学入試はいまだに暗記重視ではっきり言って世界標準ではない。

社会に出るとわかるが、東大京大や早慶など偏差値の高い大学出身者が必ずしも仕事ができるわけではない。仕事に暗記力は、ないよりはあった方がいいが、むしろ柔軟性や、自分で考える思考力、新しいことを考える創造性、そして他人と触れ合う協調性の方が大事だというのはまともに仕事をしている人はみんな知っている。

だからフジテレビもそうだが、企業の採用はすでに学歴偏重ではなくなっている。当然大学も変わらねばならない。そのしょっぱなが英語民間試験だったので、これをダメだと野党やメディアの人たちが言っているのを聞いて本当にビックリしたのだ。

教育改革を急げ

下村氏が言うように教育改革はのんびりやってる余裕はない。むしろかなり切羽詰まっている。民間試験は確かに平等ではない。でも地方在住者や低所得層への優遇措置をもう少し増やせばみんな納得するのではないか。世界に周回遅れなのだから、とりあえずスタートして、やりながら変えなければだめだ。それをこれから1年もかけて検討して始めるのは5年後って、この国、はっきり言って終わってる。

日本はこの30年停滞した。経済だけでなく、教育、ITなどいろいろな面で世界について行けてない。なぜなのか。おそらく規制緩和して新しいことをやろうとしても既得権益を持っている人たちが死に物狂いで反対する。もう一つは野党が常に政権批判の材料を探して結果的に「変化」を許さない。もちろんほとんどのメディアも同罪。

松下村塾
松下村塾

なぜ片田舎の長州藩が明治維新を起こせたか。それは教育である。長州藩は寺子屋が盛んで武士の子も農民の子も一緒に学び、それが松下村塾につながって日本で初めての「革命」を起こした。初代首相伊藤博文は貧しい下級武士の生まれである。

アジアの小国日本の経済発展は教育水準の高さが産み出した。その教育がどうも怪しくなっているのだとしたら、我々は他に先駆けて改革しなければいけない。「身の丈」がどうのこうのと言っている場合ではないのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。