現役時代に自らがゲイであることを公表

11月2日にいよいよ決勝を迎えるラグビーワールドカップ。

今回の日本での開催を特別な思いで見つめるラグビー界のレジェンド、ギャレス・トーマスさん(45)に話を聞いた。

ギャレス・トーマスさん
ギャレス・トーマスさん
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三田友梨佳キャスター:
アジア初のラグビーワールドカップが日本で開催されましたが…

ギャレス・トーマスさん:
ここまでのところ、歴代No.1の大会だと思う。世界中から日本にやってきた人々や、あらゆる宗教の人々、日本人は全ての人を受け入れてくれたと思う

日本で開催中のラグビーワールドカップについて話してくれたギャレス・トーマスさんは、ラグビーの強豪・ウェールズの元代表。長年キャプテンを務め、ワールドカップ4回を含む、国際マッチ100試合に出場するなど、世界を舞台に活躍したラグビー界が誇るレジェンドだ。

実は、ギャレスさんは、現役時代の2009年に、自らがLGBTの当事者、ゲイであることを公表した。

ウェールズの元代表・ギャレス・トーマスさん
ウェールズの元代表・ギャレス・トーマスさん

「公表する前 頭を占めていたのは恐怖」

三田友梨佳キャスター:
当時はどういう思いでした?

ギャレスさん:
公表する前は、頭の大部分を占めていたのは恐怖だった。周りは僕の能力ではなく、セクシュアリティーで僕を判断するのではないか、みんな突然、僕を嫌いになるんじゃないか。友人もチームメイトも背中を向けるんじゃないかとね…

三田友梨佳キャスター:
数カ月前にHIV陽性も公表されましたが、どんな意味がありましたか?

ギャレスさん:
僕の人生は常に進化している。僕はHIVに関して、ウソをついて生きてきた。すごく個人的なことだし、人に話す必要はないと思っていた。でも公表して、あらためて実感したのは、人々が誠実さをたたえてくれたということです

セクシュアリティーに関してもっとオープンに話すべき

ゲイであることを公表してから10年…

ギャレスさん:
今も進化の過程だと思う。まだまだ道のりは長い。世界には今も障壁があって、人々はLGBT問題に触れることを恐れていると思う。世界のスポーツでは、LGBTはマイノリティー。そのことが大きな障害になっていると思う。自分が公表したあと、どうなるのか、想像することはとても難しいと思う

三田友梨佳キャスター:
公表することでクラブの支援やスポンサーを失う恐怖がありましたか?

ギャレスさん:
常に恐怖はある。公表してもスポンサーを失わないと確信できる環境をつくる必要がある

スポーツ界が、よりLGBTへの理解を深めるには、どうしたらよいのだろうか?

ギャレスさん:
ラグビーワールドカップは素晴らしかった。特にオリンピックが行われる国だし。多くの国から人々が日本に来れば、多様性文化や多様的特徴に、より寛容になっていくと思う。わたしは、人々はセクシュアリティーに関して話すのにもっとオープンになるべきだと思う。バーの端の方や、LGBTの人だけの場でするようなものではなく、開かれた議論、カフェや道で議論を重ねることとで、理解を持つ人も増えていくと思う

G7の中で同性婚や国レベルのパートナーシップ制度がないのは日本だけ

Live News αのスタジオではコメンテーターの早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授に話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
ギャレスさんは引退されてからではなくて、現役で活躍されているときにLGBTの当事者であることを公表されました。この公表で救われた方もたくさんいらしたのではないでしょうか?

長内 厚教授:
そうですね。世界中の当事者の方が勇気と希望をもらったのではないかと思います。LGBTの問題は自分の身の回りにはいないからと思う方もいると思いますが、そうではないんです。ギャレスさんが言っていたように、失う恐怖があるから人に言えない。だから、そこに居るのではないかではなくて、居るんだという前提で皆さんが思いをはせることが何よりも重要ですね

三田友梨佳キャスター:
ギャレスさんも勇気を持って公表されたということですからね

長内 厚教授:
道やカフェで普通に話せるような生活を送れるようにしなくてはいけないということで…G7=世界の先進7カ国の中で同性婚や国レベルのパートナーシップ制度を持っていないのって、もう日本だけなんですよ。そこを変えていく必要があります。男性であろうと、女性であろうと、LGBTであろうと、普通に暮らせる、違っていてそれでいい、同じように仕事ができる、同じように生活ができるためには日本はまだやらなくてはいけないことがたくさんあるんじゃないかなと思います

三田友梨佳キャスター:
ギャレスさんはLGBT当事者が公表しやすい環境作りの大切さを訴えていました。日本がLGBTの方々に対しても温かく開かれている場所だと感じてもらいたいと思います

(「Live News α」10月31日放送分)